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背景を考えることなく、素直に考えれば立派な党首討論だったと思います。16日解散を宣言した野田総理の発言に、すっかり安倍さんが狼狽してしまったのは、想定していた獲得目標の違いでしょう。安倍さんは年内解散と年内選挙に追い込むことを目指していたのとくらべ、野田総理は捨て身で自民党に議員定数削減を約束させることを狙っていた、その安倍さんの狙いがあっさり達成され、むしろボールを投げ返されたことにとまどってしまったということでしょう。
なぜ自民党が年内解散にあれだけ固執したのかは自民党の懐事情ではないでしょうか。巨額の借金を背負った自民党の財政を考えるとなんとしてでも年内解散、年内選挙でなければならなかったはずです。記憶では確か100億円程度の借金を背負っていたのではないでしょうか。
 
民主党が大きく議席を減らし、自民党の議員数が増える公算が高まってくると、否が応でも、ちらついてくるのは政党助成金です。1月時点の在籍数ですから、なんとしても年内選挙に持ち込みたかった、しかも追い風のように国民は解散総選挙を望んでいるので、大義も立つと考えていたのでしょう。
また、きっと民主党はその逆で来年の選挙にすれば現在の議席数で政党助成金を確保できるので、年内解散はよほど追い込まないとやらないと読んでいたのだろうと思います。

ただそんな事情を抱え、安倍さんは決められないリーダー、自らリスクを取るのではなく、神輿に乗り、みんなで渡れば怖くない式のリーダーだという印象を残してしまった影響がどうでてくるのでしょうか。

原稿を読まず、一対一で激しくぶつかりあう真剣勝負。なにかアメリカの大統領選を見るようでした。いつもつまらない野次を飛ばすタックスイーターの突撃隊員たちも黙ってしまう迫力がありました。それは良かったとしても、それも小さな舞台での一コマでしかありません。

冷静に見てみれば、おそらく解散のタイミングはともかく、第三極の体制が整わない、できるだけ早期に選挙に持ち込みたいという思いは、自公民に共通していて、裏ではコンセンサスがとれており、ただ政党助成金をめぐる条件闘争だったのではないかという感じもしなくないわけではありません。

それで、選挙が行われると、今の小選挙区制度では、自民党に有利な状況で、またゾンビのように族議員が続々と復活してくるのでしょうから、これも困ったことですが、時の流れに身を任せるしかありません。さらに安倍総裁は、政権を取れば、いまだに日銀に圧力をかけ、強力な金融緩和を進める賭けにでるでしょうが、為替相場は、日銀の金融緩和で動くというよりも、情報で動くので、うまく情報戦をしかけないと、輸出企業が期待する円安誘導にさえつながりません。はたして、大芝居を打つ情報発信ができる器量があるかどうかにかかっています。

これで対立軸ははっきりしてきたわけで、自公民という看板の政官財連合と中央官僚支配からの改革を標榜する第三極、そしてそこからはみ出た泡沫政党の争いとなります。野田総理にしても、また民主党のなかには、思想的にも自民党とほとんど変わらないにもかかわらず、親の七光りを持たず、自民党に空席がないために民主党に入ったという人も多いのではないでしょうか。そうだとすると、自民党の人材不足と人材劣化を補うためには連携、また合併が健全だと感じます。

さて、第三極のほうですが、体制が整わないままに野田総理の電撃パンチを食らったということでしょう。この選挙への期間の短さでは、十分な数の候補者を立てることも難しそうです。

しかし、この間の流れを見ていると、なにか地に足がついていないように見え、腰を据えてじっくりタメをつくるためには良かったかもしれません。急いてコトを仕損じると、せっかく国民からの期待を集め始めてきた第三極も沈没しかねません。やはり政策の焦点の鋭さを持っていなければただのブームに終わり、国民が期待する健全な政界再編を遅らせることにもなります。

それに維新の会が政党としての力をつけるためには、やはり閣僚級の政治家が合流することが必要でしょうが、民主党の小沢元環境相が閣僚経験者としてはじめて維新の会に合流することになりました。選挙区で維新の会の人気が今ひとつということですが、期待したいところです。真面目な民主党の細野さんも、民主党に見切りをつけ、維新の会に合流すれば政治の流れも変わって面白そうですが、よくわかりません。橋下、細野のコンビなら結構強力な磁力を持つと思うのですが。

後は、二審でも無罪判決となった国民の生活が第一の小沢代表がどう動くかですが、選挙となれば、今の議員数を維持する見通しが立たないので、なんらかの思い切った手にでてくれば、小沢代表の政治を動かすパワーが残っていることになり、ズルズルと単独で議席を減らしてしまえば、もう誰も小沢代表には期待しないことになってしまいます。

どんな動きがそれぞれにでてくるのでしょうか。それぞれの勢力が真剣勝負で競い合って、日本の政治がまともになっていくことを望みたいものです。