人気ブログランキングへ

ソフトバンクが、米国第三位の通信会社スプリント・ネクステルの買収を発表しました。事前に情報が流れていたとはいえ、やはり大きなサプライズです。ストリーミングで見ましたが、孫社長の久しぶりに見る生き生きとした表情や、プレゼンテーションの力強さ、描かれた戦略の大きさや明快さにはなにか心地よさすら感じました。
しかも、孫社長が「リスクを嫌うご時世の中で、我々はあえてリスクを取りに行く」とおっしゃったのですが、偶然とはいえ、昨日にAGORAに投稿した記事で、ダニエル・ケラーの「経営はARTだ!」、つまり、アクティブ(A)にリスク(R)をテイク(T)しなければ、つまり積極的なリスクへの挑戦がなければ現代のビジネスでは大きな成功はないといわれていることをご紹介したばかりでした。
さて、ソフトバンクがどのようなリスクを負うのかは日経に詳しく解説されているし、LTEをめぐる技術問題については専門家のかたにおまかせするとして、今回の買収に関しては、壮大な孫社長の陰謀というか、構想を感じます。

それは、スマートフォンも、市場は伸びていったとしても、やがてハードの技術としては成熟してきます。それは、当然市場の支配力にも変化が起こってきます。それを見越して手を打ったという見方です。

今日の市場の競争は、OSとOS、同じスマートフォンのメーカーとメーカー、通信会社と通信会社の力関係をめぐる競争だけでなく、同時にOS、メーカーと通信会社のどこがもっとも市場に対する影響力を持つかという競争も起こっています。それは付加価値をどこがもっとも得るのかのせめぎあいです。市場サープラスともいわれています。前者が「ヨコのシェア」だとすると、後者は「タテのシェア」と考えられます。

今は、スマートフォン市場で、いくらサムスンが販売台数でアップルを抜いたとしても、市場の支配力ではアップル社が圧倒しています。スマートフォン市場から得ている利益でアップルがほぼ独占状態だということがそれを物語っています。
今回ソフトバンクが買収したスプリント・ネクステルは、iPhoneを取り扱ったことも業績回復につながったわけですが、iPhoneを取り扱うための条件の厳しさは、ド肝を抜くようなもので、それをブログで取り上げました。

孫社長が、今回の買収で通信会社としての規模を確保できることから、最新技術のスマートフォン、最新技術の通信機器、またコンテンツを得る立場になれると発言されていた点です。日経では、日米での規格の違いで、そういった量のメリットはないのではないかという懸念が指摘されていましたが、日米でいくら異なったハードとなっても、それはカスタマイズの範囲の問題で、現実のビジネスでの支配力は取引額で決まってきます。

もっといえば、多くの産業で流通の寡占化が起こり、市場の支配力が製造から流通に移ってきていますが、スマートフォン市場も、そうなっていく可能性は極めて高く、その鍵は国境を超え、それぞれの国の市場規模の限界を超えたグローバルな規模を持ったキャリアが登場してくるかどうかだと思います。

通信キャリアがスマートフォンの普及で、通信設備への投資をどんどん求められるにもかかわらず、儲けはスマートフォンメーカーや、コンテンツを提供するソフト産業にもっていかれ、「土管ビジネス」化するという懸念がよくいわれますが、市場での支配力を通信キャリアが持てば、それは一変します。

つまりソフトバンクは、モバイル・インターネットの世界の将来の市場構造を変えようとしている、だからこの買収は3兆円の価値があるという発言にもなってくるのでしょう。

合併後に、売上高(2012年1〜6月)では2.5兆円となり、世界第2位のベライゾンの2.8兆円に肉薄し、射程距離に入ります。第1位のチャイナモバイルは、3.3兆円と水を開けられていますが、米国、日本の通信先進国を抑える意味は大きいと思います。

米国政府が黙っているのか、今後とも日本、米国両方で発生する巨額の投資にも健全な財務体質を保てるのかなどリスクは当然有るとしても、そんなハラハラドキドキがソフトバンクの活力となってくることを期待したいところです。「自信があります」そんな孫社長の言葉をまずは信じてみてもいいのではないかと感じます。

応援クリックよろしくお願いします
人気ブログランキングへ