仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
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「ノマド」という言葉を流行させたのは佐々木俊尚さんだと思います。「ノマド」という言葉を聞いて懐かしかったのですが、そのかなり以前、調べてみると1989年に発行された建築家黒川紀章さんの「 新遊牧騎馬民族 ノマドの時代―情報化社会のライフスタイル 」という単行本でした。念のために「ノマド」はフランス語で、地平のかなたまで広がる草原を移動して暮らす遊牧民のことです。
黒川さんの本は面白かったのですが絶版になっています。しかし、今になって注目されてきたのか、アマゾンでは、中古本で2冊が出品されていて、8,500円と19,799円というプレミアム価格がついていました。黒川さんは先見性があったというか書くのが早すぎたのかもしれません。
自宅や会社のオフィスではなく、喫茶店やファーストフード店などで仕事をするノマド的なワーキング・スタイルは、携帯やスマートフォンでどこでも電話もメールもつながり、とくに紙にコピーしなくともメールで資料添付して送ってしまえば、あるいはネットで共有してしまえばいいわけで現代ではごく自然なことです。
調べたいことがあっても、書類はクラウドに保存していたり、またネット検索でいくらでも情報収集が可能です。
つまり、情報通信革命によって、通信手段や情報処理手段が、会社やオフィスが中心という時代から個人が中心の時代に移ったという結果、当然生まれてくるワーキング・スタイルだと思います。しかし、ノマド的ワーキング。スタイルは、もうすこし発想を広げて考えてみたほうが価値があるといつも感じるのです。
ひとつは、かつてのモノ価値が中心の時代は、モノの品質や機能が決定的で、それを高めるためには集団で考えることが効率的で、成果を生みました。TQCに代表される改善活動が典型的です。だからみんなでワイワイガヤガヤと仕事をする、いわばみんなでスクラムを組んで、いいモノを追求することで、日本はモノづくり大国となりました。
仕事が専門化され、互いの領域には踏み込まないアメリカの分業スタイル、言ってみればリレー方式は効率がよさそうに見えますが、日本のラグビー式にことごとく敗北していったのです。
もちろん今でも、そういったチームワークがモノづくりでは大切であることには変わりないと思います。
しかし時代は大きな変化が起こってきたのです。品質や機能から、デザインへ、ブランドへ、またその製品やサービスがユーザーにどんな新しい意味や楽しみ方をもたらしてくれるかといった情報価値のほうが主役で、モノはそれを実現するためのメディアに過ぎないという分野がどんどん増えてきたことです。
情報価値を生み出すのは、結局は最後は個人の感性、また体験によって蓄積されてきた個人の知識や知恵です。そして一瞬の閃きやアイデアです。ブレーンストーミングは役に立ちますが、ほんとうに重要なアイデアや発想は最後は個人から生まれてきます。しかもその閃きやアイデアはいつも一緒にいる人たちとの会話やブレーンストーミングよりは、異なる分野の人、違う背景や体験、知識を持った人に触れたときです。
つまり、モノ生産が中心の時代は、企業の中にムラがあり、そのムラに住んでいることが重要でしたが、情報価値生産にとっては、それはもっとも非生産的な組織になってきます。同じパラダイムから抜け出せなくなるからです。オフィスに縛られているよりは、ノマド的なワーキング・スタイルのほうがより自由で思い切った発想が生まれてくる可能性が高くなってきています。
会社に閉じこもっていないで、どんどん外で働こう、もっと違う人たちと一緒に働こうということです。でなければ「モノづくり神話」の限界から抜け出すのは難しそうです。佐々木俊尚さんは、「仕事をするのにオフィスはいらない」とされましたが、知的ワーカーは「オフィスに閉じこもっていてはいい仕事はできない」のです。
実際にはよりよいモノを生み出せる組織や働き方と、新鮮なアイデアや発想を生み出す組織や働き方は決して同じではありません。そのどちらも必要だとすれば、どう組み合わせ、バランスをとっていくかの知恵が求められてきているということでしょう。
もうひとつ、現代のノマドにとっての草原は世界の果てまで広がっています。日本にこだわらず、海外に拠点を置いたり、海外で活躍する人がもっと増えてくると思います。
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