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尖閣問題で日中の緊張が続き、また自民総裁選キャンペーンがあり、華々しく掲げたはずの「原発ゼロ政策」の閣議決定が見送りされるなどで世の中が騒がしい中、本日、静かに日航が再上場しました。日経でも企業総合面に小さく扱われているだけでした。株価の方も、初値が売り出し価格を20円上回る3,810円ということで、こちらも静かな滑り出しです。

日航の2年7ヶ月ぶりの再上場は、国内では総額で6,500億円を上回る最大の上場案件ですが、それを上回る案件は、海外でも初値で約9兆円となったフェイスブックぐらいだそうです。無事に再上場できたことを心からお祝い申し上げます。
経営破綻し、会社更生法を申請したのが2010年1月でした。杜撰で、赤字を積み重ね、損失を隠す決算を繰り返していた経営から一転して、経営再建にあたった京セラの稲盛会長の指揮のもとに、リストラの重荷にも耐え、これだけ短期で奇跡ともいえる経営再建ができたことはほんとうに素晴らしいことです。

日航の再編劇は、経営の質、とくに社員の本気を引き出す経営者のリーダーシップと、それを可能にする経営のしくみの大切さをまざまざと見せつけたように思います。日本の産業再生の重要な鍵は、強い経営、強いリーダーシップをどうやって育てていくかにもあると思うだけに、日航再建から学ぶべきことは多いはずです。

これで政府は、結果としてずいぶん利回りのいい投資を行ったことになります。出資した公的資金(税金)が3,500億円で、それを回収してなおかつ2,000億円近い上場益を稼ぎ出しました。国民にとって、JALかANAかの選択肢が残り、さらに利益すらでたことは、ほんとうに良かったと感じます。

ただ、上場が順調に進んできたわけではありません。

上場を前に、公的資金が不足しているとして2011年のJALの増資の引き受け手となった京セラなどの企業に対して、V字回復が確実ななかでの増資は、インサイダー取引ではないか、「濡れ手で粟の大儲け」だとかの批判がありました。

どうなんでしょうね。それって後出しじゃんけんの逆バージョンじゃないかという気がします。日航上場廃止で損失を被った投資家からすれば面白くないことですが、それもしかたないことですし、それに増資に関しての責任は管財人にあるので、増資に応じた企業をリクルート事件と重ねて非難することはフェアではありません。

それに、ライバルのANAにとっては、日航の上場は面白くありません。それはそうです。目障りなライバル日航の吸収もさせてもらえず、しかも日航奇跡の復活で、利益で抜かれた悔しさだけでは済みません。今後7〜9年にわたって日航は法人税を免除されます。それは、燃費のよい新型機への今後の投資力の差となってくるので、ANAは一人勝ちで生き残るどころか、競争のハンディを背負わされたことになります。

だから、日航の上場の失敗を狙ったかのような増資を行ったり、自民党へのロビー活動も盛んだったようで、それが政界に飛び火して、自民党から日航上場に対して異議を唱える発言が相次ぎました。日航再建が「民主党案件」だから、その成功の象徴としての上場を止めさせようとしたとしか思えません。ほんとうに政治は権力ゲームで動く魑魅魍魎の世界です。

問うべきは、本来は倒産して市場から淘汰されるべきだったJALを救済したことがどうだったのかであって、いまさら結果を言ってもと感じます。
しかもほんとうに、韓国方式のようにJALを破綻させANAに吸収させたほうがよかったのか、ANA一社に独占させず競争関係を残したほうが良かったのかは、神のみぞ知る世界ではないでしょうか。どちらのほうが、競争の激しい航空業界で日本の航空会社が生き残っていくための得策だったのでしょう。

直感的には、JALを残す選択をしたことは間違いでなかったと思っています。なぜなら、LCC(格安航空会社)も加わった競争となり、「規模や資本力の競争」というよりは、航空業界もどのようなサービスを提供できるのか、誰とどのように組むのかという「戦略の競争」になっていくと思うからです。ANA一社に賭けるというのでは、リスクが高いと思うからです。

日航復活の奇跡を見て、シャープも、公的資金の投入という日航方式で救ったらどうかという声もあるようですが、問題があまりにも違います。日航は利益を上げる努力がまったくなく、また政治家が介入し、赤字がでれば粉飾決算でごまかし続けるとてもまともな経営と言えない経営で破綻したのです。

シャープはおそらく日航と比べればはるかに筋肉質な体質を持っていたと思います。シャープが経営危機にまで陥ったのは、先を読み違え、間違った「戦略」を選んでしまった結果です。またシャープは採算を現場でもしっかり考える「アメーバー経営」を導入しても、とうてい立ち直るとは思えません。共通するのは必要なのは知恵と肝っ玉と腕力を持った経営リーダーだということぐらいでしょうか。

さて、ANAと比べれば法人税で有利になったJALですが、航空業界はほんとうに先が見えてきません。JALは、自民党が政権復帰することで、また政治の関与という大きなリスクを抱えるかもしれません。

どこが生き残っていくのでしょう。LCC(格安航空会社)でしょうか。ANAもJALも飛び続けていくことができるのでしょうか。しっかりいい競争を続けて互いに希望のある未来を開いていただければと願うばかりです。

大西 宏のマーケティング・エッセンスJAL関連過去記事抜粋

 
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