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リングの上で、片方の鶏がこれは俺の固有の縄張りだともう一方を牽制し、もう一方も同じ主張を譲らず一歩もひかない。互いにけたたましく鳴いているうちに、観客のほうがヒートアップしはじめ、本心ではもう争いたくないと思っている鶏たちも引くに引けなくなった。攻撃すれば攻撃したほうが傷つく、しかし譲れば相手ではなく観客に負けるチキンレースが、領土問題であり、それが尖閣をめぐる日中の状況でしょう。

冷静に考えれば、尖閣は日本が実効支配しているので、なにもおこらないことが国益にかないますが、尖閣の国有化は、日本からすれば当然だとしても、中国を刺激しすぎました。中国からすれば、日本が仕掛けた挑発に見え、それに怒った観客は騒がしくなり、すでに観客席でこぜりあいも起こってきます。この週末に中国での騒動が広がらなければと祈るばかりです。ちょっと危なっかしい状況です。

日本の観客は紳士的ですが、あちらの観客席は暴走します。そして今は中国も政権交代をひかえて政府も暴走を止めようとはしません。ちょっとなにかをやるタイミングとしては良くない時機に政府が国有化したことは得策ではなかったと感じます。

国民がいったん不健全なナショナリズムにはまると、本来の国益も見失いかねません。ナショナリズムそのものは悪いとは思いませんが、それが行き過ぎると、互いを憎しみの渦に巻き込み、最後は戦争でしか決着しない典型が領土問題です。

それを押さえることができるのは、長期的な国益を考えた互いの冷静な外交と、国際世論に訴えるしかありません。世界にアピールし世論を形成してくことです。
個人と個人、法人と法人の係争でも、こじれると当事者と当事者では解決がつきません。アップルとサムスンの間の特許をめぐる係争もそうです。当事者は一歩も引かないために法廷があります。そして、裁判官が、話し合いで解決できるものは双方の話し合いで解決を求め、それでも解決がつかなければ裁定で結審させます。

当事者どうしでない、しかし解決に向かった圧力となりえる第三国をできるだけ多く味方にしていくしかないのです。

間違ってはいけないのは、日本の主張が正しいかどうか、中国の主張が理不尽かどうかではありません。どちらの主張が国際世論で支持や共感を得るかです。その知恵が求められています。
国際司法裁判所への提訴を中国政府に呼びかけることも一手かもしれません。中国が韓国と同じように断れば、やましいということでしょうから。

正しいか正しくないかでは、言い出せばきりがないのです。多分読まれるとお怒りになる人も多いと思うのですが、1972年10月に出版された歴史学者井上清氏の著書『「尖閣」列島−−釣魚諸島の史的解明』があります。こちら(釣魚諸島の史的解明 )で抜粋されて載っていますが、尖閣はもともとは中国のものだったという主張です。それもどうかと思うのですが、中国はおそらく同じ論法でやってくるのでしょう。
さて国際世論をつくるという点では、野田政権は竹島問題でも大きな間違いをしました。韓国メディアに連日の広告をうったのですが、逆効果でしょう。それを我が領土と信じきっている国民相手に竹島は日本の領土だと広告をすればするほど反発が高まります。

広告する相手が違います。第三国に対して、とくに環太平洋を中心とした国々の国民に対して行なうべきでした。狙うならブーメラン効果です。第三国で支持や共感を得ることで、韓国内の世論も変えることです。

中国では、今年度版の中学校向け地理教科書を改訂し、尖閣諸島(釣魚島)を中国の領土と明記したものも登場してきます。さらに国民の洗脳をはかっていくのでしょう。尖閣問題は、中国政府にとっては、国内不満や政府批判をそらすいい切り口ですから。

しかし中国政府も大変です。このまま民衆を暴走させれば日中間の経済のみならず、中国への警戒感が高まるをだけでなく、日本を防衛力強化と日米軍事同盟の強化に走らせ、中国にとっての脅威を高めかねません。

政府に知恵を出してもらう、中国政府とのパイプを深めてもらうしかないのですが、いっそ、日中共同利用の船だまりとか、あるいは海洋研究所設立でも提案して、相手の一方的な権益を封じるという手なんかはどうでしょうね。

今起こってきている領土問題は、日本が大人の国として世界から認められるようになるのか、そうでないかを分ける試練なのかもしれません。

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