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討論型世論調査は、予想した結果になりました。2030年時点で原発をゼロとするシナリオへの支持が討論会前の32.6%から47%に増加しました。「感情」や「情緒」、「不安」の強いエネルギーに支えられた「正義」が勝つのです。
なぜなら、ひとりひとりはまともで賢明な人たちであっても、集団で議論するうちに考えられないような間違った結論に達する集団浅慮が働きやすいテーマだからです。

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 数え切れないぐらいフォーカスグル−プ(グループインタビュー)を体験してきたので、最初からこの討論型世論調査から出る結論のでかたを憂慮をしていました。ふつうは特定の意見に流されやすいテーマにはそれなりの配慮をした進行のしかたを工夫するものです。フォーカスグループは目的が世論調査ではないので、それも可能です。

さて、このエネルギー問題の討論型世論調査には、疑問が3つあります。

まず、この結果をどのように生かすことができるのか、また生かそうとしているのだろうかという疑問です。実施してしまった限り無視はできません。よりよい方法で意見を聞いたというだけではアリバイ作りでしかなく誰も納得しません。ほんとうに政府は原発ゼロのシナリオを選択するのでしょうか。

第二は、討議の方法、資料の提供の仕方などが適切であったかです。とうぜん原発ゼロを主張する人たちには、結論が単純であるために、ひとつの結論に向かう強い心理的団結が生まれます。いかに静かに討議したとしても、その集団の持つ圧力に流される人は当然出てきます。モデレーター(司会・進行役)がいかにプロで、公平性を保ったとしても、その集団で起こってくる心理のメカニズムを押さえることは極めて困難です。

集団で議論しあうなかで、さまざまな人の心の動きがいかに複雑に起こってくるか、その人間模様やドラマは、父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室で議論する様子を描いた映画『12人の怒れる男』で見事に描かれています。集団で議論する際になにに気をつけないといけないかをまざまざと見せてくれる映画なので、一度はご覧になることをおすすめします。研修の教材としても使えると思います。
第三は、エネルギー問題という複雑で、影響もそれこそ貿易収支から電気料金、さらに環境問題と広範囲におよんでいるテーマで、さらに自然エネルギーの技術イノベーションがどの程度成功するのかもわからない状態でのシナリオを描くことができるのだろうかという疑問です。

つまり、討論型世論調査の実施方法の良し悪しの前に、このテーマは、もともと討論型世論調査にはなじまない問題であったことを、内閣も、専門家も見逃していたのではないか、それよりは新しい手法でやってみることに固執しすぎたのではないかと感じるのです。

今回のシナリオそのものを選ぶという、あるいはそれぞれのシナリオに対する評価を行うという方法も拙い方法だと感じます。いかにも具体的なようで、それぞれの実現性については疑問が残ります。

実際、商品開発などで、理想とする仕様や機能があっても、その時点の技術では実現できないこともあります。なにかを選べば、なにかが犠牲になるというのが現実です。エネルギー問題も同じです。原発ゼロもいいのですが、それは電力料金が上昇し、貿易赤字が拡大し、経済が悪化させ、それが産業をも暮らしにも直撃します。そんなあちらを立てれば、こちらが立たないというトレードオフの課題に直面しているということを忘れてはならないのです。

必要なのは、もっと、原発、自然エネルギーなどの専門家、エネルギー問題の専門家、政策の専門家など電力会社のなかのブレーンを含め、ほんとうは国民がなにを考えなければならないのかを整理し、国民に示すことです。
まるで羹に懲りて膾を吹くかのように、電力ムラからなんらかの支援を受けていたからという不信感で、原子力の専門家を排除してはならないのです。なぜならほんとうのことを知っているのは彼らなのですから。

問題がトレードオフであるため、なにかが犠牲になる可能性が極めて高いのです。なにかを選んだ時に、なにを捨てることになるかを明らかにしてこそ、ほんとうの議論になってくるのではないでしょうか。

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