
花王がインドネシアに100億円を投入して第2工場を建設するというニュースがありました。なにげない記事ですが、その背景を想像するになかなか面白い動きだと感じます。なぜなら、インドネシアの拠点強化は、インドネシア市場にとどまらないアジア戦略強化にもつながってくる可能性を持っているからです。
正直言って、花王は海外展開はライバルと比べて遅れてしまった感があります。かつては増収増益の記録を毎年のように塗り替え、エクセレント・カンパニーの代表格でしたが、それも国内消費の低迷の影響を受け、かつての面影はなくなってしまっていました。
つい最近、花王の沢田社長が日経の「ニュース一言」で、「国内市場は少子化でどんどん縮小し、海外に出るしかないとみるライバルが増えるほど、チャンスは広がる。健康や高齢化では対応できていないことがたくさんある」とされていました。しかし、今回のインドネシア第2工場への投資に関した記者会見では、「花王グループは売上高の7割強、利益の8割強を国内ビジネスが占める。持続的な成長を達成するには、早くこの構造を変えなければならない」とおっしゃったそうで、やはり国内市場でのイノベーションだけでは企業成長にとっては不足だということでしょう。
花王、インドネシアに第2工場 100億円投じ衣料用洗剤など生産 - SankeiBiz(サンケイビズ) :
花王、インドネシアに第2工場 100億円投じ衣料用洗剤など生産 - SankeiBiz(サンケイビズ) :
とくにおむつ市場ではライバルであるユニ・チャームがインドネシアをはじめとしたアジア市場で大成功しているだけに、なんとか巻き返したいという思いもあるのでしょう。
ところで花王のインドネシアへの進出は、もちろん消費市場としてのASEAN市場が今後に期待でき、いま遅れると取り返しがつかないというだけでなく、おそらく、もっと違う狙いもあるのだろうとも考えられます。一昨日、アジア経済を専門にされている日本総研の大泉啓一郎さんのお話を伺う機会がありましたが、ASEANは、巨大なインド市場をもふくめたアジア戦略展開の拠点になっていく可能性を示唆されていました。

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昨年のASEANのメンバーのタイの洪水で、日本の幅広い分野の多くの企業がサプライチェーンに深刻な被害を受け、甚大な影響を受けたことは記憶に新しいと思います。それだけ多くの企業がタイに進出していたことには驚かされました。
日本企業が投資し、工場をつくってきたのは、タイに対してだけではありません。シンガポールもそれに匹敵しています。
実際、日本からの直接投資残高で見ると、2011年末で、中国へは6兆4,677億円ですが、ASEAN6カ国合計では8兆5,718億円で中国を上回っています。つまり日本の企業が実際に行なってきたのはASEANに投資し拠点をつくることでした。
なぜそれだけASEANに企業が向かうかですが、人権費が安いことも大きな魅力でしょうが、もちろんASEAN各国が経済成長にともなって消費市場としてもの魅力も生まれてきていることもあるでしょう。さらに重要なのことは、ASEANは自由貿易のネットワークをいち早く各国と結んできたために、企業にとっては非常に有利な貿易拠点ともなってきているのです。
ASEANそのものも、中心となる6カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)だけでなく、ラオス、ビルマ/ミャンマー、カンボジアも含めた東南アジア10カ国による地域経済協力圏が形成されているだけでなく、インド、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドともFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を結んでいます。
日本は各国とのFTA提携でももたつき、またあれだけ騒然としていたTPPもすっかり話題から消えてしまい、グローバル化の流れから周回遅れとなってしまっているのが現状でしょうが、企業はそういった国の事情に構っているわけにはいきません。だから、ASEANを拠点として利用する動きが生まれてくるのも自然です。
もう経済に国境はなくなってきているのです。そして中国につぐ経済大国として成長しようとしているインドは、スズキ子会社で起こった労使問題ですでに生産停止が2週目を超えており、工場進出に対する警戒感が高まったものと思います。まだ真相は究明されていないようですが、毛沢東主義を掲げる人たちが紛争を起こしているという話もあります。
さらにカースト制度もあり、なかなか日本企業には面食らう面もあります。インドで、カーストの壁を破ったのはIT産業ですが、そのIT産業でも、知り合いの話によると、インドからやってきた技術者のためにホテルを取ったところ、異なるカーストの人が混じっていて、同じホテルを取ったことにクレームがでたために、慌てて別のホテルを手配したといった話も聞きました。
大泉さんによるとASEANはインド市場を狙う拠点としては格好の立地だそうで、インドが輸入している相手国のトップは中国ですが、ASEANがそれに続いているのですが、実態は日本企業のASEANの会社からの輸出だそうです。インドを狙うならASEANからということでしょううか。高校の同級生が、若い頃からタイと日本を行き来する仕事をしているのですが、詳しい事情を知りたい方はご連絡いただければつなぎます。
日本の国内で、保護主義そのものを声高に主張している人がいますが、偏った思想とデータで自説をつくりあげるよりは、実際にASEANに行って経済のグローバル化とはどういうものかの実態に触れてみてはどうかと感じます。
弊社のSFA営業支援システムでも、アジア地域でご利用いただいているユーザー様が数社ある時代なのです。インターネット経由で利用するので国境はありません。
政治や官僚の動きが遅く、時代が求める速度についてこれなくなってきていることを感じますが、花王のインドネシアへの投資は、海外に目を向けた日本企業の取り組みが一段と加速し始めていることを象徴しているようです。
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