
日本版スマートTV規格対応製品が2013年に登場するとか勇ましい記事がありました。さっぱりわからないのが「スマートTV規格」なるものです。もしそれが成り立つとしても、総務省とかNHKとか社団法人が決めることではなく市場が決めることです。
ちなみにこのスマートTV規格は、NHKの放送技術技研のHybridcastがベースになっているようですが、放送技研から昨年発表されたHybridcastの技術仕様概説(PDF)を見れば、放送局の事情や立場を配慮した優等生だなあ、日本の放送局を守ろうという意識が働きすぎているのではないかと感じさせるものです。
スマートTVでいろいろできることはあるでしょうが、もっとも大きいのはビデオ・オン・デマンドだと思います。録画しなくとも、「好きな時間に、好きな映画やテレビ番組、ネット上の動画を見ることができる」ことです。
それができるようになると、SNSを見ていて「この番組がよかったよ、必見だね」と友達がメッセージをくれたら、リンク先をクリックすれば、放送時間に関係なく番組を見ることができるようになってきます。
時間の制約から解放されるのです。これは見る側にとっても便利なだけでなく、毎年テレビを見る人が減り、稼ぎの広告収入が細ってくる現実を抱えた放送局にとっても、視聴者を増やし新たな広告収入を得るメリットがあります。しかし、そのビジネスへの大転換にむかう戦略が描けず、各社ともビデオ・オン・デマンドは小出しにやっているにとどまりなかなか進みません。
時間の制約がなくなるとテレビ番組表の意味はほとんどなくなり、なにを見るかを決める新しいなにものかが生まれてきます。それがSNSであったり、番組やコンテンツを検索できる新しいタイプの「スマートTVポータルサイト」です。そこにはさまざまなコンテンツも集積してきます。
NHKの放送技研が描いている姿もほぼそんな感じですが、決定的に限界だと感じるのは、SNSも電波で送られてくる番組中でやり取りを行うことに重点が置かれていることです。それは番組の「おまけ」にすぎません。やたら流れているTV通販の会社にとっては、番組を見ながら即注文と決済ができるようになるので喜ぶでしょうが。
基本的な時間フリー、そしてインターネットがサクサク利用できるハードと通信を含めた周辺環境などの基本的なスマートTVのしくみがができれば、あとはゲームコンテンツのメーカー、また生活に役だったり、面白いアプリを開発している会社、それ以外のさまざまなサービス会社が新しいアイデアを持ち込んできます。それでどう進化していくかは、「先のことなど誰にもわからない、ケセラセラ」でしょう。
NHK放送技研で感じるのは、もしNHK放送技研がスマートTVのしくみを開発するベンチャー企業だったら、同じ技術陣でも描いた姿は異なったのではないか、市場での勝負になってくるので、電波利権がからんだ放送局とか、総務省が介入し、なかなか動かない日本市場ではなく、海外から攻めたのではないかと感じます。
日本の場合は、見る人にとってどうかよりも、テレビ局にいたれりつくせりの配慮したもののほうが受け入れられやすいのでしょうが、それでは最初からガラパゴスになる宿命を背負ってしまいます。日本版スマートTV規格を世界の規格にしたいと思っても、海外の先進国では、あるいは途上国でもそれを素直に受け入れるとはとうてい思えません。
結局は海外でも魅力ある規格に練り直し、海外市場を制覇することで、事実上の規格(デファクトスタンダード)化する道しか考えられません。そのためにはもっとユーザー視点、ユーザーの生活がどう変わるからスタートしたものでなければいけません。技術以前の戦略の問題ではないかと感じます。
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