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読売新聞が格安の有料電子版「読売プレミアム」(YP)をスタートさせました。月額157円です。思い切ったことをやったと感じさせますが、利用は読売新聞読者に限られ、もし利用しようとすると新聞購読をしないといけません。読売新聞の購読料は、朝刊と夕刊のセットで1ヶ月3,925円なので、合計すると4,082円。
あれっ、それでは日経や朝日のデジタル版単独購入よりも高いことになります。ちなみに日経は購読料にプラス1,000円か、電子版単独だと4,000円。朝日も購読料にプラス1,000円、単独なら3,800円です。

よほどのことがない限り新聞はネットでしか見ない身からすると、紙の新聞は留守にすると新聞受けにたまり防犯上好ましくなく、またゴミにだす手間も必要なので、よけいな「おまけ」というか、やっかいものがついてくることになります。少々お金をもらっても不要です。

それに読売読者で電子版を利用する人の割合は、他紙よりも低いような気がするので、あまりやる気はなく、新聞販売店の拡販策なのでしょう。雑誌FACTAによると、この157円も、販売店の裁量で「無料」にもできるようなので、やはり読者サービスによって、読売新聞ご自慢で必達であった発行部数1,000万部を惨めに割ってきた状況のテコ入れをしたいということでしょう。

ふっと思ったのは、再販制度からすると、こういったおまけ付きというのは、どうなのかということです。景品法には触れないような気もしますが、もし他社の事例から、1,000円の価値があるものとすればこちらも引っかかるのではないでしょうか。そういったことは、おまけで発行部数を稼いできた長年の経験、また昨今は訴訟大好きな読売新聞に手抜かりはないとは思いますが。

ただ、日経のような経済紙は、読み手からすると、たとえ日経がどのような記事にしたてあげようが、たまにガセネタ記事があろうが、日経がどのような主張をしようが、他誌にはない内容が掲載されていることに価値や独自性があり、すでに電子版購読者数が20万人を超えたようです。

しかし朝日は、実際に電子版だけを購読していますが、あまり見る価値を感じません。ネット上ではいくらでも代替するメディアからの記事が流れているので、立場としては厳しいと感じます。独自性のある取材や記事はそうそうありません。記事単独で買えるほうが電子版しか見ない立場からすると助かります。記事単独で売るだけの自信がないのでしょうか。

インターネットでは、新聞社の「独自性」がなければ生き延びれないのです。社説とか変な主張などによって無理やり独自性を繕おうとしても、論説委員の書く意見などは、もうネットでは質的にも価値を失っているので、それで新聞を選ぶ読者は少なく、どのようなコンテンツを取り上げるか、またコンテンツの中味で独自性をつくらないといけない時代だとすると、ただの一般紙、総合紙の将来は厳しいと思います。

今回の読売の方式だと、販売店の裁量で、集金の際に無料で契約をつけてしまえば、読者数では軽く朝日を抜く可能性もでてきます。中日新聞も読売と同じ方式のようですが、こちらは読み放題が月額315円と読売よりは高い価格設定になっています。

それで読者を増やして、それが広告収入増になればいいという感じでしょう。獲らぬ狸の皮算用にならなければとは思いますが。電子版で読む習慣のなかった読者が、電子版で読み始めると、それが諸刃の剣となって、もう紙の新聞はいらない、一般紙はいらないということもでてくるかもしれません。

新聞社が抱えている問題は、ビジネスが紙の新聞を前提として成り立つしくみになっていることです。本来は記事というコンテンツに価値があるのですが、それを読むための手段でしかない紙のビジネスになってしまっていることです。また「紙」の制約があって、普通の家庭では複数の新聞を取ることがないために、「一般紙」という立ち位置もありえました。記事ごとにどのメディアを読むかが選択できるインターネットでは、繰り返しますが、「専門性」や「独自性」を持たない限り、競争には生き残れなくなってくると思えます。

しかし、それが再販制度で守られ、その恩恵は捨てられず、ビジネス・モデルを進化させることもままなりません。しかたないですね。ただ、斜陽産業としての新聞社が消滅しても、「ニュースを読む」ことへはニーズがあるので、また新しいメディアが生まれたり、育ってくるのでしょう。