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西友が28日に茨城県つくば市に新店をオープンさせます。3年ぶりの新店で、日経によれば「これを機に、総菜専門店を含めて一気に20店舗の出店」を目ざしているようです。
日本進出10年、ウォルマート定着の秘訣  :日本経済新聞 :

西友は、いまでは小売業では世界でトップのウォルマートの完全子会社です。フランスのカルフールや英国のテスコが日本から撤退したのとは対照的で、進出から10年を経て、いよいよ日本市場を学ぶ段階から、次のステップに移るのでしょうか。

海外の名だたる小売業が日本で失敗したのは、なにも日本がガラパゴスだからではなく、日本に限らず、競争力のある小売業でも、海外の先進国で成功するのは極めて難しいという研究があります。それは先進国にはその国独自の消費文化が成熟しており、自国で培った店舗や商品の品揃えの特徴、また店舗運営のしくみなど、いわゆるフォーマットが、他の先進国で求められる消費文化にはかならずしも適応しないからです。

変わる世界の小売業
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それだけではなく、ウォルマートが西友に資本参加した当初の混乱ぶりはまさにそれを物語るものでした。規格化されていない店舗に、規格化された店舗を前提とした棚割りシステムをいれてしまったために、棚が埋まらず、空きスペースが目立つということもありました。

しかしウォルマートの特徴は、息長く市場への適応をはかる地道な努力を、科学的に、また仕組みとして追及するところにあります。日経が指摘するように、日本の小売業は、現場の裁量でキメ細かく市場にあわせていくのとは大きく経営手法が異なっています。海外の小売業はあくまで標準化されたフォーマットを重視し、現場で器用に修正するのではなく、仕組みを維持しながら、仕組みそのものの最適化をはかろうとするのが違うところです。

だから、海外の小売業のほうが、全体のしくみやマーケティングの修正で異なる市場への適応しようとするために、適応には時間を要します。しかし、いったんその仕組みがうまく回り始めると収益力に差がついてきます。それが日本の総合小売業が海外の小売業と比較した場合、売上高での差よりも、利益率で大きく水を開けられてしまっている理由です。

セブン&アイがイオンよりも利益率が高いのは、コンビニのセブン・イレブンを抱えているからで、ヨーカドーそのものは決して経営状態がいいわけではありません。仕組みづくりに弱い、だからPBでも開発力が弱く、製造メーカーや納入業者におんぶにだっこというだけでなく、リスクまで負わせるという日本独特のPBが登場したりしています。それでは高い収益力を実現することはできません。

ある流通業の経営トップの方から、やがてウォルマートが日本市場をごっそりもっていくだろう、そんな時代が来ても耐えることのできる経営をやっているというお話を聞かせてもらったことがあります。ウォルマートはドイツへの進出に失敗し撤退したのですが、それはドイツにはPB化比率が9割を超え、ウォルマートよりもはるかに効率的な体質を持っているアルディの存在があったからだと言われています。しかし、日本にはアルディにあたる効率的な運営で競争力をもった小売業は大手では残念ながら見当たらないのです。だから、いよいよ日本でもウォルマートの攻勢が始まるのかもしれません。

現場の裁量による改善の積み重ねや、技術に偏った小さなイノベーションを持ち込むことは得意だけれど、戦略がないということでは、日本の多くのメーカーも同じことです。液晶で品質や機能での競争をやっているうちに、現地の市場に合わせたマーケティングを展開するサムスンに敗れ、また途上国の低価格品にまで実質的にはキャッチアップされてしまいました。さらにハードだけでなく、コンテンツを開発し提供する多くの企業を引き寄せ、また提供するシステムに、情報家電の焦点が転換した流れについていけなくなったことも、部分最適化は優れていても、戦略での適応には不得意です。

アゴラの書評で、井上晃宏さんが『日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)』を取り上げ解説されていますが、共通するのは、問われているのは日本の経営のありかたそのものではないかと思われます。
DRAMの「敗戦」は装置産業化が原因ではない : アゴラ - :

日本の企業でも戦略が優れ、世界市場をリードしている企業があるとはいえ、それは極めて少数です。大きな企業の経営で手腕を発揮する人材を生みだす文化や仕組みに問題が起こっているのでしょう。それこそスポーツで監督やコーチを海外から招聘するように、海外に人材を求め、そのもとで育つ環境をつくったほうが解決としては早いという気もします。

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