中学校での武道必修化は、多くの期待を集めながら、リーダーになってみると首相の座を投げだす残念な結果に終わった安倍さんが熱心に進め、福田政権で決定されたものです。愛国心の人一倍強い安倍さんとしては、日本人のアイデンティティをしっかりもった人材を育てたかったのでしょう。その教育改革の一環として武道必修化を進めたかったのだと思います。
しかし国際化が進み、いやがおうでもかつてとは比較にならない競争にさらされる社会のなかでは、学校教育に求められるのはアビリティ(能力)を育てるほうだと思います。日本人としてのアイデンティティ感覚は、なでしこジャパンを応援することでも育まれてきますが、厳しい局面にあっても仕事を投げ出さない人材は、アビリティ(能力)を高めなければ生まれて来ません。スポーツで、いくら選手たちに愛国心があり、根性があっても、体力やスキルといったアビリティがなければ勝負にならず、結局はなす術もなくゲームに負けるのと同じです。
しかし子供たちのアビリティをさらに高めるためは、教育の質的向上が求められます。教育への投資も必要になってきます。安倍さんが、武道をどう考えたのかはわかりませんが、武道必修化という安易な発想は、その動機から危ういものを感じます。
問題は柔道です。問題を起こし過ぎなのです。中学、高校における柔道事故の死亡者は1983年から2010年の28年間で実に114名にも上り、全国柔道事故被害者の会まで結成されています。
全国柔道事故被害者の会 :
スポーツ人口でいえば、サッカーや野球の10分の1にも満たないにもかかわらず、中高で年間4名も死者を出すというのは異常です。さらにもうすこし事故の範囲を広げると、中学校のスポーツ活動で重度の負傷についても発生確率でもトップです。
学校におけるスポーツ中の事故 特集:柔道事故 :
その実施にむけ、各都道府県の知事や各自治体の教育委員会に柔道の安全管理の徹底についての依頼が、文部科学省スポーツ・青少年局長からだされています。しかし、そんな注意してくださいよで済むようなレベルの問題とは到底思えません。
武道必修化に伴う柔道の安全管理の徹底について(依頼):文部科学省 :
なぜ柔道でそういった事故が多発するのでしょう。スポーツ指導の経験があればすぐにわかります。
安全な指導方法のあり方がこの競技では確立しておらず、また指導者に浸透していないことです。したがって指導者の個人的資質に頼り、しかも指導者の中には「柔道一直線」で、特訓すれば教えたと錯覚している不適格な人も多いこと、それ以外は考えられません。
柔道を口実としたリンチ、あるいはいじめによって、致命的な被害にあって意識もないまま寝たきりになるという事故も起こっています。しかもそのリンチやいじめに「柔道一直線」のトホホ教師も加担していたと思われるものすらあります。
柔道人口が日本の倍ほどのフランスでは日本のような死亡事故がないことでも日本の指導体制の貧困さ、指導者のレベルの低さが想像できます。
要は指導者面をしているけれど、頭のなかは「柔道一直線」のスポ根アニメ程度しかなく、生徒たちの安全をその「柔道一直線」に委ねようというのだから、生徒よりもまずは指導者のほうを教育する必要があります。いくら指導経験があったとしても、それが危ない指導経験の積み重ねではよけいに危険です。
必須化の決定があってから、充分時間があったので、文科省は本来は、柔道関係各位に、柔道を授業に取り入れてもらい広く体験してもらいたいのなら、安全な指導について研究を行い、指導要領を作成するなり、また徹底した指導者教育を行うこと、資格試験などによる審査を厳格に行うように指導すべきだったのです。
必要なのは、アイデンティティを育むよりも先に、スポーツ・インテリジェンスを高めること、また教えるアビリティを高めることでした。おそらく、そういった内容での柔道界への要請は日本の停滞する柔道復活の鍵ともなってくるのではないでしょうか。
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