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米国で、昨年10〜12月期のスマートフォン市場シェアでiPhoneがアンドロイドをわずかながらも上回りました。iPhoneが44.9%、アンドロイド勢は、44.8%でした。アンドロイド勢の伸び、とくにサムスンの伸びが著しく、それに押されっぱなしに見えたiPhoneですが、一挙に倍近くシェアをあげ、アンドロイドの優勢をかき消したことになります。これだけの短期での逆転は劇的です。

問題は、なぜiPhoneが、なぜそれほど一挙にシェアの奪還を行えたのかです。iPhone4Sが画期的だったからでしょうか。いやそうではないでしょう。あるいはジョブズが亡くなり、あらためてiPhoneを生み出したイノベーションの功績が認識されたからでしょうか。

いずれもが影響しているとは思いますが、思い起こしていただきたいのは、昨年はアップルが通信キャリアに対する政策を大きく変えた一年でした。日本でも、auがiPhoneを売り始め、ソフトバンクの独占販売が崩れましたが、それに先立って、米国でもそれまでのAT&Tの独占販売体制から、年初に通信キャリア最大のベライゾンがiPhoneの販売契約を結び、さらに三番手のスプリント・ネクステルが販売契約を結びました。

なんとそのベライゾンの10〜12月期の決算によると、同期に売った770万台のスマートフォンのうち、iPhoneが420万台を占めたといいます。つまり55.4%がiPhoneだったのです。
iPhoneが「Android全部」を上回る:米Verizon社の販売 WIRED.jp 

もちろん新製品の発売効果も加わったとしても、同じ通信キャリアで売れば、iPhoneのほうが売れるということです。

iPhoneの逆転劇は、重要なマーケティングのヒントを見せてくれています。競争で、目に見えやすいのは、製品であったり、販売数量や金額での市場シェアであったりします。そしてアンドロイド勢、とくにサムスンは、アップルに「追いつけ追い越せ」の競争原理です。製品でライバルよりも高い品質や機能、また価格で勝つという発想です。日本の情報家電がその原理で動き、世界を制したものの、やがて韓国、中国に同じ原理で敗北してきました。

しかし、アップルの戦略を、よくよく見てみると、一貫してアンドロイドをライバルとしたものではないことが見えてきます。ではアップルはなにと闘ってきたのでしょうか。

製品のコモディティ化です。同じ土俵で競争する限り、製品間の差はしだいになくなり、価格での競争に移ってきます。だから、アップルは需要>供給の関係を保ってきたように思います。供給が大きく上回ると、一挙に価格の下落がはじまり、コモディティ化の地獄、市場のレッドオーシャン化が進み、どの市場のプレイヤーも利益がだせなくなってしまいます。液晶テレビがその悪循環にはまってしまいました。

スマートフォンの定義を塗り替え、その市場を育てるために、アップルは本気になって売ってくれるややマイナーな通信キャリアに独占販売をさせてきました。アップルが追求してきたのは、販売シェアではなく、ブランド価値であり、通信キャリアに対して支配力をもつこと、さあに利益をあげることだったと思います。まるで経営やマーケティングの教科書のような戦略をアップルはとってきたのです。しかしその教科書にでてくるような戦略がこの分野では画期的でした。

しかし、恐らくアップルの想定以上の勢いでスマートフォン市場が成長したために、需要と供給のギャップが大きくなり、そこにアンドロイドが入り込む余地が生まれました。だから販売量を追及するプレイヤーの揃ったアンドロイドは急速に伸びました。しかしアップルが販路を広げたとたんにそのギャップは解消され、大きくシェアも伸ばす結果になりました。

つまり、これらの点で3つの教訓が見えてきます。

まずは、もっとも怖いのはコモディティ化であって、売れるから造る、ライバルと同じ土俵で競争すれば、やがて供給過多になり、コモディティ化の罠にはまってしまうことです。おそらく数年後、10年以内に、スマートフォンもいきつくところまで普及します。そうなると待っているのは、低価格品しか売れない新興国しか販売を伸ばせる市場はなくなり、また供給過多になってしまうことは間違いありません。


第二に、製品もブランド価値を高める重要な役割をもっているとしても、長い目で見た競争では、製品よりはブランド価値のほうが重要だということです。スマートフォンの競争は製品よりもさらに上位のブランド間の競争なのです。もちろん音楽コンテンツやアプリを供給するプラットフォームの質もブランド価値を左右しています。


第三に、ビジネスは製品間の競争や、市場シェアの競争よりも、買い手や売り手との力関係での競争に移ってきているのです。アップルはその力関係で有利な立場を追求してきたために、圧倒的に利益率が高いのです。
ブランド力があるから、売りやすい、だから通信キャリアは喉から手が出るほど扱いたかった、しかし取扱うためには驚くようなノルマが課せられるのです。米国の通信キャリア、スプリント・ネクステルとの契約は驚くような厳しい内容でした。

利益を重視し、直接競合を避け、ブランド価値を追求し、市場の支配力を高めてきた結果、2011年でなんとアップルの手持ちのキャッシュがさらに380億ドル(およそ3兆円)増え、ついに976億ドル(7.5兆円)にまで達したのです。

スマートフォンにしても、タブレットPCにしても技術の変化の激しい分野なので、このままアップルの快進撃が続くとは限りませんが、この体力差はじわじわと効いてくると思います。

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