経済のグローバル化は、もはや議論する余地がない現実です。グローバル化というとまだ貿易を考える人がまだ多いようですが、グローバル化は、貿易だけの問題ではなく、資本が国境を超えて行き交うこと、資本の国境がなくなることをも意味しています。
日本の企業も、外国からの投資ぬきには成り立たない時代です。
放送局は、きわめて国内で保護されたローカルな産業です。番組が日本ローカルというだけでなく、電波法で外国人の資本比率を20%以下にしなければならないと規制されています。
しかしその放送局ですら、現実は、フジテレビの外国人株主の比率は28.6%、日本テレビは22.7%と規制枠を超えています。
上場企業の外国人の持株比率も上昇してきましたが、ここ数年はほぼ25%前後を推移しています。もっとも多く上場企業の株をもっているのは、銀行や保険会社ですが、こちらは1980年代後半をピークに下がってきており、今ではやっと30%を超えるという程度で、外国人の持株と拮抗している状態です。ちなみに個人株主は20%程度です。
上場企業の「外国人」持ち株比率の変化をグラフ化してみる(2009年度反映版):Garbagenews.com :
会社は誰のためのものかというと、顧客、従業員、納入業者など企業と関わるすべての人たちのためのもの、ひいては社会のためにあると言えますが、会社は誰のものかというと、株式会社である限り、株主のものです。そう考えると、日本の上場企業はすでに四分の一は外国人のものといえます。
全体で四分の一ですが、上場企業の100社近くが外国の企業や個人の持株比率がすでに40%を超えています。それが現実です。
株主プロ 【 調査対象企業ページへのリンク一覧 | 投資部門別の持株比率 外国法人・個人部門 】 :
日本の企業も海外に投資を行い、現地に工場や現地の拠点、また店舗を建てています。タイの洪水でいかに海外に日本の企業の製造拠点が集積し、日本の経済活動に組み込まれていた現実が浮き彫りになりました。
資本が国境を超え、実際のビジネスのしくみも国境を超えて成り立ち、結果、製品やサービスが貿易で動くというのが現代です。韓国が輸出を増やせば増やすほど、日本との貿易赤字が膨らむのは、韓国の産業が日本のもっている素材や部品、また製造機械などを前提にしてそれを取り込むことで伸びてきたからです。
中国への日本からの投資も年にほぼ7000億円の規模で推移してきました。結果として中国と日本の貿易額は増加します。資本が国境を超えたために、ビジネスのしくみも国境を超えたからです。
グローバル経済がもはや世界の現実なのだと、ドラッカーが『新しい現実』で述べ、その講演会を日本で聞いたのは、確かもう20年以上も前のことでした。いまさらグローバル化とか言われても、昔の名前ででていますという感じでしょうか。
グローバル化はユートピアをもたらすとは限らないし、光の部分もあれば、影の部分もあるわけですが、しかしそれが現実だということが出発点です。
その頃、確かアメリカの未来学者の人だったと思いますが、グローバル化はかならずナショナリズムを引き起こすという本を読んだことが強く印象に残りました。著者がだれだったかは憶えていません。
現実はそうなったように感じます。経済がグローバル化すればするほど、文化や制度の摩擦が起ります。逃れられないからよけいに摩擦も起ります。資本の論理は投資に対してどれほどリターンがあるのかですが、かならずしも社会はそういった理屈だけでは動いていないからです。
第二に、政治利用があります。国民からの不満をそらすには他国を批判し、不満の捌け口にしたりすることが起こってきています。それも行き過ぎると、いつ対日批判が中国共産党批判に化けるかわからないので中国共産党幹部は、対日批判が高まることに警戒心を持っていると、北京大学で教鞭をとられている加藤さんの話がありましたが、理解できます。
加藤嘉一氏「反日感情を誰よりも怖がってるのは中国共産党」 - BLOGOS編集部 - BLOGOS(ブロゴス) :
第三に、経済のグローバル化によって、賃金のフラット化を進めます。タイやカンボジア、また中国の安い労働力で同じものをつくることが出来れば、同じ仕事をしている限り、日本での賃金を下げる圧力となってきます。その打撃を受けるのが先進国の若い働き手です。結果、不満がつのり、また自信を失い、精神的な支えとしてナショナリズムも生まれてきます。これは日本だけの傾向ではありません。
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しかし、だからといって、パンドラの箱が開いてしまったグローバル経済をもとに戻すことは不可能です。焦点は、グローバル経済とどのように付き合うかであって、いまさらグローバル経済を批判したところで意味がありません。
それは産業革命で、蒸気機関が生まれ、やがて自動車や飛行機が登場し、工場が自動化、さらに知能化していった流れを否定し、抵抗するに等しいのです。アジアはその流れに遅れ、経済が打撃を受けますが、それをうまく取り入れた日本は奇跡のような発展を遂げました。
どうグローバル化とつきあうか、またどう利用するか、その現実に合っていないさまざまな制度を調整してどう適応するのか、あるいは異なった制度、また文化を持つ国と国が調整しあうことが課題なのですが、その現実からあたかも逃れることができるような錯覚をしていると感じる意見もあります。
TPP問題がどう着地するのかはわかりませんが、その是非をめぐっては、農水省と農協の抵抗はすさまじいものがあります。しかし、激しく抵抗すればするほど隠されていた利権が浮き上がってくるのは皮肉なことです。農家への戸別補償という、零細、兼業農家に有利な農業の弱体化政策を民主党はやってしまったのですが、その矛盾もクローズアップされてきています。
交渉に参加してもっと議論すればいいのです。途中で断れなくなるということをいう人がいますが、日本はどう頑張っても外交ができないということでしょうか。国際連盟を脱会したトラウマが今もあって、相手の言いなりにならざるをえないということなのでしょうか。国益を守る覚悟だけの問題だと思いますが、覚悟を預けるだけの信頼が日本の政府にはないということなのでしょう。それでは日本は、いつまでもグローバル経済という激流を取り込むことも、それに適応することもできないということになってしまいます。
世界の流れに遅れると、結果は黒船がやってきて、市場をあっというまに塗り替えてしまいます。あとは保護主義で拒むかですが、それは日本の孤立化のリスクを負います。経済がグローバル化してしまったためです。
アマゾンが出版社につきつけた厳しい条件問題でも感じます。もともとデジタル化の世界の潮流や消費者利益をそっちのけに、電子書籍反対だと騒ぎ、日本で電子書籍の市場を、コミックなど以外ではつくりだせなかった、乗り遅れてタイムラグが生まれたから、アマゾンは足元を見たのでしょう。
「まさに黒船」電子書籍化を迫るアマゾン - BLOGOS(ブロゴス) :
だから外国企業は強硬だとかと不満を言っているのですが別問題です。アマゾンであってもライバルはいるので、出版社はより有利な相手と組めばいいだけで騒ぐほどの問題ではありません。メールマガジンで、競争関係が同業者ではなく、売り手と買い手の間の力関係のほうが大きくなった時代だと幾度か書いたと思いますが、それだけのことであって。消費者にとっては関係のない話です。
TPP問題で、いろいろな議論がでてくることは日本が現実を知るためには、また自ら考えるということではいいことだと思います。ただ、まだまだ生産者、供給側の事情からの議論が目立ちます。もっと消費者にとって、一般国民にとって何が利益で、なにが不利益かという議論が起こってくることを期待します。
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すなわち、資本家側に「資本が委託」されているという認識が必要です。しかし現実として発生したのは資本の独り占めでした。そして中間層が崩壊し購買層が消滅しました。困った政府、資本家は「サブ・プライム層」という信用を緩めた層を作りお金を貸し、住宅や消費を盛んにしようとしました。その結果何が起こったのかはもう書くまでもないでしょう。資本主義というのはその性質上、集中と選択が最大効用ですが、その結果、格差が発生させます。格差が問題なのは購買層の崩壊を招くからです。それは回りめぐって資本の回転率を下げる。つまり資本主義もここまで似しておく必要があるのです。