人気ブログランキングへ

サムスンのスマートフォン販売が、2011年6〜9月期で、iPhoneの1707万台を超え、2000万台となり、スマートフォンでは販売台数でトップとなりました。

ただ6〜9月は、iPhone4Sの発売前による買い控えの影響もあったでしょうし、発売されたiPhone4Sの人気が高く、さらに米国や日本でiPhoneを取扱う通信キャリアを広げたことで、このまますんなりサムスンがアップルとの差を広げていくとは思えません。

しかし、スマートフォン市場は、アップル対サムスンの構造になってきたと日経が記事を書いていますが、その通りです。この競争関係は非常に面白い構図になってきたように感じます。日本の多くの企業にとっても今後のマーケティングを考える上でも参考になります。

コピー商品じゃないかと非難されながらも、キャッチアップ戦略で伸びてきたサムスンですが、かつて成長が著しかった頃の日本の企業とイメージが重なります。キャッチアップ戦略は効率的です。目標が明確だからです。

かなり以前になりますが、富士フイルムの研究者の人のお話を伺ったことがありました。写真の世界にはコダックという巨人がいて、ひたすらコダックに追いつくための研究開発に明け暮れていたそうです。ところが、ある時気がついてみると、追いついたどころか、抜きさってしまっていたと当時を思い出して話しておられました。

日本全体がそうでした。欧米に追いつけ追い越せで高度成長を達成したのですが、追いつき追い越してみると、目標を失ってしまったのです。そこから日本経済の成長の鈍化が始まります。

それはそうでしょう。追い抜けば成功するとわかっているところでは迷いはありません。しかし本当の意味で「世界ではじめて」を生みだすことは、失敗することも当然あり、リスクを負わなければならなくなります。

サムスンは、日本をキャッチアップするだけでなく、日本の企業の弱点を突きました。半導体で日本は高品質、しかし高価格という製品を提供してきたのですが、サムスンはそこそこの品質で安い半導体で差別化を行ない、やがて日本は敗北します。また家電も日本は高度な機能を求め、すべて自前で製品をつくる企業文化があったのですが、世界はモジュールになった部品を組み合わせる時代に移ってきていました。そのほうが開発速度もはやく、コストも安く、また製品の多品種化に向いていたために、日本の家電メーカーもことごとくサムスンに敗北していきます。

しかしいまサムスンが競い合っているアップルは、サムスンがこれまで向き合ってきた日本の企業とはマーケティングの戦略が根本から違います。

これを理解するためには、世界の多くの分野、とくにハイテクの家電の世界で起こった悩ましい現実を思い起こして欲しいのです。いわゆるスマイルカーブ現象です。高度に技術が集約された部品や素材などのいわゆる産業の川上は利益がでます。また流通業は寡占化されてきており、メーカー間の激しい競争もあって、価格の主導権が買い手である流通に移りました。また間に挟まれた加工は、途上国の台頭による競争で利益がどんどん低下してきたことです。最終製品をつくる製造業にとっては厳しい時代です。

アップルのイノベーションについては多くの人が語っています。しかしアップルの戦略で、あまり語られていないのは、この現象を克服したビジネスを築いてきたことです。

いまでも、アンドロイドOSがiOSを抜いてトップシェアとなったとか、つまりアンドロイドのスマートフォン勢力のほうがシェアが上だ、サムスンがトップシェアとなった、だからアップルの時代は終わろうとしているという見方をする人がいます。

そこで抜けているのは、「市場の支配力」という視点です。

シェアの古典的な見方で言っても、スマートフォン市場全体でのシェアは、2011年第1四半期でアップルが18.7%、サムスンが10,8%で、これではいずれも市場で相対的に支配力が発揮できるシェアにはまだ遠い状態です。

独占的なシェアを獲得すると、市場支配力を手に収めることができます。つまり川上に対しても、川下に対しても有利なポジションを得ることができます。しかしそれは簡単なことではありません。

ここでアップルとサムスンの違いがでてきます。サムスンは、通信キャリアとの全方位のビジネスです。しかし、アップルは違います。製品を絞ることで、川上に対しても、加工に関しても、同じものが発注されるわけですから、納入側は取引に魅力があり、結果としてアップルが優位に立ちます。また通信キャリアを絞って、その通信キャリアのなかで圧倒的なトップになって、優位に立つという戦略をとってきたのです。つまり川上も、加工も、川下も有利になるビジネスモデルを築いてきたのです。それが可能になったのも市場を創造した優位性とブランド力でしょう。

アップルが米国の通信キャリアのスプリント・ネクステルに対して、4年間に少なくとも3050万台のiPhone購入しなければならないという驚くべき条件で販売契約をしたことは、アップルの恐るべき「市場支配力」を物語っています。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : iPhone最大のサプライズはキャリアとの契約内容だった -

どちらが有利かははっきり数字に現れてきています。利益率がまったく違うのです。つまり、サムスンは広く薄くでシェアを伸ばしてきた、しかしアップルは自らが有利な土俵をつくりながら伸ばしてきた結果です。

たとえば、同じ程度の顧客数を持ったふたつの店で、片方の店はその店でしか買わないお客さんがほとんどだという店と、一見さんがほとんどのお店をくらべれば、どちらの商いのほうが有利で安定しているかを想像すればわかることです。


スマートフォンの主導権をめぐる競争が激化すれば、価格競争、あるいはさまざまな条件の競争がはじまります。さらに何年か経てば、今は伸びに伸びているスマートフォン市場も先進国では成熟に近づき、伸びが鈍化してきます。そうなると、利益でゆとりのあるアップルと、利益が圧迫されていくサムスンでどちらが有利になっていくでしょう。

いま、次第にサムスンはかつての稼ぎ頭であった半導体や液晶で利益を稼ぎ出すことが困難になり、スマートフォンが収益の柱となってきています。まだ利益の柱である半導体ではアップルは大きな顧客です。液晶パネルは価格下落がとまらず、また来年からは中国の大型の工場が稼動し始めます。当然、現在よりもさらに供給過剰となり、価格下落に拍車がかかります。それはサムスンの利益の圧迫につながってきます。日経がサムスンの直近の部門別の営業利益の推移を報じていますのでご参照ください。

samusu営業利益
グラフはスマホ世界首位でも、サムスンの晴れない憂鬱  :日本経済新聞 (有料版):から引用したものです。

アップルの課題は、ブランドのパワーが維持できるかどうかです。市場の変化、技術変化の激しい市場にいるために、やがてブランドの陳腐化も起こってきます。そのためにはジョブズが放ってきたサプライズを継続して発信していく必要があります。キャッチアップしてくるグーグル勢を引き離すか、タブレットPCに続く、新たな市場を生みだすことになってきます。ジョブズがいないアップルでそれが実現できるかどうかです。

サムスンの課題は、この分野はソフトの優位性やアプリやコンテンツの豊富さによって、市場支配力にも影響が出てきます。サムスンは、独自OSの開発にもチャレンジしていますが、ソフトやコンテンツ流通は抑えていません。ソフトでの優位性、またアプリやコンテンツの集積力を高め、どう製造業から進化できるかになってきます。

唐突ですが、サムスンが米国のYahoo!、あるいはSONYでも買収すれば、面白い展開になってきそうですが、キャッチアップで育った企業がいきなり独創の世界に飛び込むことはなかなか容易ではありません。

応援クリックよろしくお願いします
人気ブログランキングへ
サーバーもソフトも不要のSFA「アクション・コックピット」。
使いやすさに加え強力分析ツール「アクション・アナライザー」登場
アクションコックピット