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iPhone4Sが発表されました。予想通り、音声認識機能がつき、速くなり、写真の画質が向上したなどの製品の改善がなされたものでした。たしかに機能や性能は向上したとしても、サプライズといえる内容はなかったように思います。
「iPhone 4S」発表 デュアルコアA5プロセッサ搭載 - ITmedia ニュース :

もうスマートフォンに関しては画期的なイノベーションは生まれてこず、機能や性能、またクラウド利用による利便性を高めながら、普及させていく時代にはいったのかもしれません。国内でも話題は、KDDIもiPhone4Sの発売を開始することを発表したことでした。
新iPhone「4S」、14日発売 KDDIも取り扱い  :日本経済新聞:

それよりももっと大きなサプライズは、昨日ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた米国の第三位の通信キャリア、スプリント・ネクステルがアップルと交わした契約内容でした。
スプリントもiPhoneの取り扱い開始へ―2014年まで赤字の公算でも - WSJ日本版 - jp.WSJ.com :
iPhone 3000万台超購入を確約 - スプリントが200億ドルを賭けた一発逆転の大勝負(WSJ報道) - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース) :

スプリント・ネクステルがAT&T、ベライゾンに続いてiPhoneを扱うために、売り切れるかどうかに関係なく、4年間に少なくとも3050万台のiPhone購入しなければならないという契約に同意したというのです。年間2.5兆円の売上のスプリント・ネクステルが、1.5兆円でiPhoneを買った、あるいは取扱の条件として買わされたということです。それは会社の存亡を賭けたことになります。

ソフトバンクはiPhoneの販売台数を公表していませんが、米国の調査会社は2010年3月期で320万台を売ったとしています。それと比較してもすさまじい条件です。スプリント・ネクステルが倒産でもしないかぎり、アップルは4年間は黙っていても、スプリント・ネクステルが会社の命運を賭けて売ってくれます。マーケティング費用をアップルが負担しなくとも必死で売ってくれるのです。

なぜ、そのような無謀とも思える賭けにスプリント・ネクステルが動いたかですが、下のグラフのように年々売上が下降線を辿り、赤字が続いているスプリント・ネクステルとすれば、iPhoneを扱っていないハンディを解消し、業績回復の手段が他になかったからでしょう。

sprint


さて、スプリント・ネクステルがアップルと交わしたとんでもないとも思える条件で思い起こされるのは、KDDIがいったいどのような契約條件だったかです。おそらくKDDIもiPhoneに命運を賭けざるをえない條件を飲まされたのではないでしょうか。
 iPhone5がKDDIからも。どんな条件を飲まされたのだろう - :

確かにソフトバンクの独占は崩れましたが、ソフトバンクとKDDIがiPhone販売で競い合えば、iPhoneの日本での販売も伸びます。真偽のほどはわかりませんが、ソフトバンクの内部資料による販売台数の予測では、ソフトバンクの独占販売では2011年に470万台、KDDIも販売を行った場合は、826万台という記事がありました。結果はわかりませんが、ソフトバンクとKDDIが必死でiPhoneを売ることで販売台数が伸びる可能性が高いことは間違いありません。

なぜアップルは、それだけキャリアと強気の契約ができるのでしょう。それはiPhoneのブランド力であり。市場の支配力です。

市場の支配力を、市場のシェアだけで見ている人がいて、アンドロイドがスマートフォンのOSの市場シェアのトップとなり、アップルをはるかに上回る伸びを示していることから、もうアップルの時代は終わったと見る人もいますが、それは現実とちがっています。

むしろ市場シェアで市場の支配力が決まるというのは、現代は必ずしもそうではなくなって来ています。シェアを伸ばしても利益がでない、シェアが高くとも利益がでないという現象があちらこちらで生まれてきています。

市場の支配力は、市場のシェアだけでなく、もうひとつの尺度もあわせて見なければ実態が捉えられません。

もうひとつの尺度は、原材料、部品、組立加工、物流、販売、サービスといったそれぞれのプロセスで利益を積み重ねて最終のユーザーが支払う金額になりますが、それらの総利益のなかでどれくらいの利益を得ることができたかの付加価値のシェアです。

言ってみれば市場のシェアが「ヨコのシェア」だとすると、そちらの利益のシェアは「タテのシェア」といえるでしょうが、アップルは後者の「タテのシェア」が異常に高いのです。「タテのシェア」はビジネスの仕組み、どのプロセスまで扱うかによっても決まりますが、さらにブランド力も大きく影響してきます。この視点は、メルマガでも詳しくご紹介しましたが、もう一度詳しく書いてみるつもりです。
発想を思い切り変えよう!視点を変えれば先が見えてくる〜大西宏のマーケティ ング発想塾 :::

イメージで言えば、「ヨコのシェア」と「タテのシェア」の両者で支配力は決まってくるということです。たとえば、アンドロイドのスマートフォンでもっとも強いサムスンは販売台数では、iPhoneを追いぬく勢いですが、営業利益率で比較すると、アップルの二分の一程度です。つまり市場の支配力は弱いのです。たとえ販売台数がほぼ同じだしても、アップルははるかに大きな市場支配力をもっているのです。

アンドロイドがすさまじ勢いで伸びているにもかからわず、なぜスプリント・ネクステルがアップルの軍門に下ったに等しい選択を行ったのか、なぜKDDIもそうなのかは、市場シェアや販売台数だけでは説明ができません。販売台数や市場のシェアだけをただただ追いかける時代はもう終わっているのです。


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