無料お試し期間の期限が来るまでにさっさと解約した朝日新聞電子版「朝日新聞デジタル」が、課金がスタートしてもまだ廃刊にしていないと知って驚きました。すっかり存在そのものを忘れていたのですが、雑誌FACTAによると、無料期間では3万数千人まで申込者を伸ばしたものの、有料化した途端に解約という読者がやはりいて、結局は、有料読者会員2万5千人前後でスタートしているそうです。その2万5千人前後という会員数も解約忘れのユーザーもかなり含まれているのではないかとすら疑ってしまいます。先発の日経が一ヶ月で有料会員数6万人を超え、創刊1年半で15万人と伸ばしているのとは対照的です。
お粗末すぎる朝日の「電子新聞」:FACTA online (有料):
日経電子版 広報部|電子版広報部からのお知らせ|日経電子版の有料会員数が15万人を超えました :
FACTAによれば、社員すら購読していないようで、業を煮やした朝日の編集担当役員が社員に「タダにするから買え!」というお達しをだしたとか。社員ならいざしらず、ただでも読まないのではと野次を飛ばしたくなります。
スタートさせれば、発行部数800万を誇る天下の朝日新聞、かならず買う人はいるというおめでたいプロダクトアウトの発想がまかり通ったことにも驚きますが、マーケティングも、戦略もなく、読者を甘く見た暴走としかいいようのない計画にゴーサインをだしたことにも恐れ入ります。
ほとんど無料で読める一次情報を集めて載せたところで、それを有料で買おうという読者は存在しません。新聞メディアと変らない一次情報なら、閲覧者を増やし広告収入を得るしか手がないのが現実です。
「アサヒコム」のビジネスモデルがそうで、「アサヒコム」と中味がほとんど変わらない無料の記事を集めて有料版としてしまったのかはいまだに謎です。しかも有料にもかかわらず、「アサヒコム」でやっている有料の「ウェブ新書」や「ウェブ論座」なども読めません。
立て直すつもりなら、あるいは他紙が有料版を検討しているのなら、情報のビッグバンが起こり、情報消費の文化にどのような変化が起こったか、誰が情報価値を決める主導権を持つようになったのか、そしてどのような情報が価値として認められるようになったのかから考えないと、マーケティングでもっとも重要な、われわれの商品とは何か、なにが読者にとっての価値なのかの定義すらできません。
いくら長年やってきた乗馬で、乗馬の知識や技術があっても、それで自動車が運転できるものではないのですが、そのことをまずは理解すべきでしょう。「総合紙」というありかたが成り立ったのは、情報を伝える手段を独占、あるいは寡占していた時代だったからであり、一等地を独占していた百貨店がその役割を失い凋落してきたのと同じ立場だということを理解しなければなりません。
確かにビジネスはなにが成功するのかが予見できない世界です。だから「やってみなはれ」です。とくに大きな成功を収めたビジネスは「まさか、なるほど」で、成功してからその理由に気づくことが多いのです。しかし、間違った戦略を、つまり顧客もニーズもなく、顧客にとって価値のないものを、間違った方法で実行しようするビジネスは最初から失敗することはわかります。
朝日新聞はずいぶん高い授業料を支払ったことになると思いますが、はたして学ぶだけの柔軟性があるのでしょうか。そういえば、「朝日新聞デジタル」については、その基本的な発想の誤りを以前ブログで指摘したのでリンクを貼っておきます。
朝日新聞有料電子版が残念なたったひとつの理由 :
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各紙ともTV局を持っていますので、その広告収入でなんとか勘定あわせをしているのでしょうが、歴代の首相下ろしに奔走している様は、日本におけるマスコミの役割の終わりを暗示しているようで、ちょっと心配です。
新聞不振の原因はいろいろあるのでしょうが、それに正面から向かい合おうとしない鉢呂下ろしのようなおごりがあるからなのかも知れません。
嘗てのように各紙が競って、スクープ記事が書けるような記者クラブ制度に頼らない競争原理の導入が必要なのでしょう。