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テレビは生き残れるのか (ディスカヴァー携書)
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献本ありがとうございました。

さて、今週で東北を除いてアナログ放送は停止されます。その駆け込み特需で、ブルーレイの録画再生機の販売が、去年の同じ時期の3倍と好調で、一部は品切れも起きているようです。
地デジ化まで3日、ブルーレイにも特需 販売3倍に  :日本経済新聞:

しかしきっとそれも最後のイベントとなり、テレビはおそらく今後とも主要なメディアとして生き残ったとしても、地デジ化は、広告収入の減少の歯止めにはならず、生き残るとしてもこのまま緩やかに衰退していくものと思います。

おそらく放送局が地デジ化によって再び成長すると思う人はいないのではないでしょうか。

「テレビは生き残れるのか」の著者は、幅広く映画やテレビの仕事にも関わっていらっしゃるコピーライター境さんですが、テレビ産業の衰退による影響は、たんにテレビ業界に留まらず、映画産業、アニメ産業も含めた広く映像産業全体までおよぶだろうと見ていらっしゃいます。

なぜなら、今日は映画産業も、アニメ産業もテレビ局の資本や、テレビと一体になったプロモーションを前提として成り立つようになってきているからです。

境さんは、地デジ化は、それでなくともテレビ離れをしはじめている若い人たちがテレビから去る、つまりテレビを買い替えない人たちがでてくること、それが全体のたとえ1%とか2%の小さな数字でもその影響は大きいとされています。

しかし現実はもっと厳しい。

池田信夫さんの記事によれば、「全国の家庭にあるテレビは1億3000万台程度と推定されるが、デジタル放送推進協会の調べでは、デジタル対応テレビは8000万台未満」だそうです。つまり5000万台が消失してしまったことになります。
アナログ放送終了はテレビの終わりの始まり|池田信夫の「サイバーリバタリアン」 :

おそらく地デジ化は、テレビを買い替えない人の割合よりも、その数字から推定されるのは、もちろんチューナーで対応した人もいるとしても、それまで家庭に2台、3台あったテレビが再び1台になってしまったのです。つまり家族それぞれが、それぞれの部屋で違う番組を見るライフスタイルが崩れることになります。

皮肉なことにテレビのデジタル化は、テレビの接触時間を保ってきたテレビの台数を減らし、個室からテレビがなくなった人たちを別のメディアに向かわせます。電波独占のなかで築いてきた放送局の優位性もさらにインターネットが侵食していくことを予感させます。

NHKに受信料契約の解除を申し込む世帯もあり、その問い合わせに「コールセンターがパンクしないよう7月1日からオペレーター数を20席から100席に拡大し、アルバイトスタッフも大幅に増やした」という記事もありました。
実際には、ワンセグ付きの携帯電話やスマートフォン、テレビチューナー付きのパソコン、カーナビも受信料を支払う必要があるので、同記事では「契約解除を申請できる世帯は、それほど多くはないということになるが、同局への問い合わせはしばらく収まりそうにない」としていますが、どうでしょう。
緊張感最高潮!NHK、地デジ化目前で“生命線”受信料に異変  SankeiBiz(サンケイビズ) :

境さんは、地デジ化後は、いまだに現場に残っているアナログ技術がデジタル技術に変わり、制作がより合理化されるだけでなく、映像産業全体にリストラの波が押し寄せてくるだろうと予測されています。

そして、映像産業全体の再編の必要性を訴えていらっしゃいます。しかし境さんが指摘されるように、テレビの世界の人たちは過去の良き時代の思い込みや発想から抜け出せないのも現実だと思います。

衰退産業は、その多くが、いったん衰退が始まると悪循環が始まります、もうすでに広告費の減少から、番組の制作費を抑えることははじまっており、安く制作できるクイズ番組やバラエティ番組が増えてきました。制作費のかかるドラマなどは減っていきます。いまだに視聴率を10%稼げる「水戸黄門」も今年で終わるそうです。

いずれにしても、番組コンテンツの劣化がさらに若い人たちのテレビ離れを後押しします。

そうしてゆっくりとテレビ局もテレビ局が支えている映像産業も死にむかって行くのでしょう。その速度が緩やかであればあるほど、テレビ局も映像産業も大きな変革を起こすことは難しいのです。熱い湯に触れたカエルは身の危険を感じて跳んで逃げ去りますが、少しずつ水の温度をあげていくうちに身の危険を感じることができず茹であがってしまう「茹でガエル」の教訓のようにです。

異なった発想や文化を持つ外部の血をいれることも、ライブドアや楽天の経営参加を強く拒んだために、そのチャンスを失いました。

その一連の出来事のなかで、電波独占をくずすことがいかに難しいのか、また外部の血を寄せ付けない放送局の体質を見せつけれられたわけですが、テレビ産業のゆるやかな衰退は、新しいメディアが育つ、あるいは新しい映像コンテンツが生まれる余地を確実に広げます。

皮肉なことに、テレビのデジタル化は、インターネット対応テレビの普及を促進し、光フレッツの茶柱3本のCMが象徴するようにリビングにインターネットを持ち込み、さらにスマートフォン、タブレットPCとテレビの3つのスクリーンがつながるパンドラの箱を開けてしまったのです。きっとこの流れが新しい映像文化を育てていくのでしょう。

「テレビは生き残れるのか」は、さすがにコピーライターの境さんの著だけに読みやすく、またテレビや映像産業の変遷など親しめる内容で、おすすめできる一冊です。


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