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電力自由化をめぐっては、「発送電分離」という言葉が流れていますが違和感があります。

電力のビジネスを考えると、製造業にあたるネルギー資源の調達と電力を生産する製造機能にあたる発電、電力を届け、また需給を調整する物流機能にあたる送電、最終の需要家に電力を売る小売機能をもった配電の3つにわかれ、現在は電力買取りが部分的には行われていますが、おおむね電力会社がセットになったビジネスになっています。

送電に関しては、いまさら高圧線や電柱、変電所、地下ケーブルなどの施設を重複して敷設することは無駄であり、また環境への影響を考えるとその資産を利用し、引くつぐことが合理的です。この分野での競争は期待できません。

発電は、電力会社の発電部門、余剰電力を抱えた鉄鋼などの製造業、また風力発電施設をもつ地方自治体や事業体、さらに太陽光発電や地熱発電などのさまざまな新規参入が期待できる分野であり、電力会社の発電部門を分離すれば、現在以上に発電ビジネスが活性化します。ごみ処理施設も発電さえ行えば、電力を電力の卸市場を通して売ることができます。

しかし、問題は誰がそれらの電力を売るかです。電話なら送電にあたる回線や構内施設はNTTのものを使っても、電話による通信を売る会社はNTTだけでなく、ソフトバンクであったり、KDDIであったり、今では競争が起こっています。

電力もまったく同じで、今はその地域の電力会社と契約するのがあたりまえですが、小売部門としての配電会社が分離されればどの配電会社と契約するかの選択ができるようになります。また電力消費の多い産業用を考えると、全国展開している小売チェーンや外食チェーン、また多地域に工場のある企業に、もっとも有利になる電力を仕入れ、一括して電力を売るというビジネスが生まれます。発送電の分離ということでは、この電力小売りのところが抜け落ちてしまいます。

送電会社がこの小売機能も持ってもかまわないとしても、送電と配電を一体化させると地域独占のままとなり、電力小売での競争が起こってきません。

この分野が、電力消費の最適化、また電力コストの削減などの技術やシステムの開発やコンサルティングを含めた「総合エネルギーサービス産業」(ESCO)の進化ともなり、電力競争の主役を担う存在ともなってくるので、そこで競争が起こさなければ電力自由化による電力ビジネスの活性化にはつながってきません。

多くの産業がそうであるように、川上と、川下のほうがイノベーションのチャンスが多いのです。またそれが海外との競争力を高める技術やノウハウ、またシステムともなってきます。

電力自由化の話は新しいようで古い話であり、どなたかがイノベーションが起こらないと電力会社の分離はうまくいかないと書かれていましたが、そんなことはなく、海外では電力会社の機能別分離がとっくに進められ、すでに分離されています。ロスの大停電という失敗もありましたが、その後はとくに問題は起こっていません。

イノベーションというと、技術だと未だに思っている人がいますが、決してそうではなく、ビジネスモデルを変えることもイノベーションです。ドラッカーも「イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)」でこう述べています。
 イノベーションは技術に限らない。モノである必要さえない。それどころか、社会に与える影響力において、新聞や保険をはじめとする社会的イノベーションに匹敵するものはない。
 18世紀啓蒙主義による社会的イノベーションの一つである近代病院は、いかなる医学上の進歩よりも医療に大きな影響を与えた。
 多様な知識や技術を有する人たちを働かせるための知識としてのマネジメントもまた、今世紀最大がのイノベーションだった。それは、まったく新しい社会、いかなる政治理論も社会理論も準備していない組織社会を生み出した。
電力会社を分離することで、電力会社に働く人たちにとってもイノベーションにかかわる機会も、その進化に貢献する機会も生まれてきます。持っている知識を活用し、起業するチャンスも起こってくるでしょう。

電力会社の発・送・配電分離というのはすでに海外では実績があり、とくに政府がコストをかけずに行える成長戦略のひとつにきっとなってくると思います。


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