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グロービスの堀さんはイノベーションについてつねに前向きな発言をされていると感じていました。しかし、この記事には疑問を感じます。
よく考えないといけないのは堀さんのほうかもしれません。以前、原発に対しての考え方には人によって温度差があり、「反原発」「嫌原発」「脱原発」をわけて考えたほうがいいという提案をこのブログで行いました。それを一把一絡げに「脱原発」とやってしまう議論はあまりに乱暴ではないでしょうか。
かつては経済産業省も電力自由化の流れをつくろうとしていたし、また電力会社も電力自由化にむけて事業の多角化を進めていた時期もありました。しかし、もちろん原油の高騰という背景があったにせよ、原発が電力自由化の動きを阻止する切り口となって、急速に原発が増設されます。それは結果として、いつの間にか原発の安全基準を押し下げ、また自然エネルギー開発を含めたイノベーションが犠牲になってきたのではないでしょうか。だから「自然エネルギー」に関しても目が向けられず、今は発電が不安定な風力や太陽光発電だけを取り上げた次のような発言になっていくのでしょう。
「自然エネルギー」とは、具体的には、「再生可能エネルギー」の風力や太陽光などを指すようである
それは誤解を呼ぶ書き方です。「自然エネルギー」は発電が不安定な「風力や太陽光」だけではありません。たとえば、地熱発電ひとつをとっても日本が世界をリードする技術があり、日本で原発12基分の潜在発電能力があるとされています。原発を嫌う海外へのプラント輸出の実績もあります。その他にマイクロ水力発電、潮汐利用というのもあります。現在は効率が悪い太陽光でも、ごく最近、東京大学とシャープが、現在は20%程度にとどまっている太陽電池の変換効率を、75%以上にできる構造をコンピューターによる解析で突き止めたことが発表されています。 
地熱のようにすでに実績のあるものもあれば、まだまだそれぞれの分野でイノベーションの可能性が残されているものがあり、どの発電方式がもっとも伸びるのか、どのような組み合わせが望ましいかは、それこそ市場のなかでの競争原理で決まってくる世界であり、そういった産業を育てるために政府ができることは技術開発への資金支援と健全な市場づくりであることは言うまでもありません。
当然発電と送電、配電の分離が鍵になってきます。電力会社にとっても都合が悪いわけではありません。電力トップの人たちのように企業規模の大きさや、地域で独占による社会的地位を求める人は別として、電力自由化を進めたほうが長期的には電力会社の社員の人たちの知恵や活力を引き出すことはいうまでもありません。
すべての原発を止めるというのではなく、老朽化した原発、あるいはこれまでずさんな原発政策でリスクのハードルを押し下げて無理やりつくった原発は、見直すという緩やかな見直しであれば、代替案はすでにありそうです。それはそれで検証されるでしょう。菅総理の浜岡原発停止の決定方法はよいとは思わないにしても、そのパフォーマンス抜きに、代替案を探る真剣な議論すら起こらなかったかもしれません。曲解するような報道がありましたが、復興会議の五百旗頭座長がおっしゃっているように、残念なことに今は菅総理の能力を問うている余裕など日本にはないのです。
浜岡を止める、電力が足りない、そうなってはじめて電力というインフラを真剣に考える知恵が働いてきます。あとはその知恵を信頼するかどうかだけの問題でしょう。市場原理主義者ではありませんが、危機の中でそういった知恵やダイナミズムが生まれてくることは経済や産業の歴史が物語っています。アメリカでクリアすることが不可能と思われた自動車の排ガス規制が起こった時もまっさきにそれを乗り越えたのは日本の自動車メーカーでした。
さて、これまでも日本の産業構造転換の遅れ、少子高齢化が引き起こす問題など、日本は、過去からの慣性に引きずられ、分かっている課題に真剣に取り組んでこなかったのですが、やっと原発事故という深刻な問題が起って、間違っていた過去と決別する動きがでようとしているわけで、この転換をどう活かすかのほうが重要だと思います。
それにしても情報の隠蔽体質というか酷いですね。つねに楽観的状況しか伝えない東電がやっと福島第一電発の1号機で、大量の燃料が溶融し、圧力容器の底部にたまる「炉心溶融(メルトダウン)と、冷却水の外部への漏れを認めましたが、最初からわかっていたことではないでしょうか。
極東ブログさんがワシントン・ポストで、このタイプの原子炉を設計した専門家の見解がでていた記事を紹介されていましたのでご参照ください。
堀さんのように影響力のある人こそ、原発推進政策からの転換について、より建設的な提言をされるべきだと思います。
 
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