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デザインの骨格デザインの骨格
著者:山中俊治
日経BP社(2011-01-29)
販売元:Amazon.co.jp
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献本ありがとうございました。

山中俊治さんは、日本を代表する工業デザイナーのおひとりで、非常に幅広い分野で活躍されています。

その山中さんが、デザインについて語っておられるのですが、私自身も比較的製品開発寄りでマーケティングの仕事をすることが多かったこともあって、共感するお話、また新たに発見させられるお話が随所に盛り込まれていて、デザインの奥深い世界に引きずり込まれ、楽しく、また心地良い刺激を受けました。

ツイッターでつぶやかれた言葉が紹介されていましたが、この言葉を読むだけでも、この本のタイトルがなぜ『デザインの骨格』なのかがわかります。
絵を描く事は、ものの輪郭を描くことではない。重要なのは向こう側にあって見えていないものや、中心軸のような仮想の線を描くこと。そうやって立体や空間の構造を把握したときに迷いなく輪郭を決定することができる
この言葉をマーケティングに置き換えれば、こうなるのかもしれません。
マーケティング戦略を構想することは、フレームワークにそってモデルを描くことではなく、ビジネスの向こう側に隠れている消費者や顧客の心の動きや行動を把握したときに、なにがマーケティングに必要なのかを決定することができる
デザインは、「ものづくり」の世界にとって重要であるばかりではなく、その根っこに潜んでいる世界観を感じさせ伝えたり、また人びとに新しい体験に導くポテンシャルを持っています。
「モノ」がたんなる「モノ」として機能するだけでなく、「モノ」としての存在を超えていくための重要な鍵になってきていますが、そのことがよく伝わってくる内容でした。

もちろん、モノとして機能させるためにもデザインの役割が大きいことはいうまでもありません。山中さんが改良されたSuicaの改札機は、タッチする面を、たった13.5度傾かせただけで、それまで半数の人たちがうまくタッチできずに通れなかったものが、なんとエラー率が1%以下に下がったそうです。

それを読んで、D・A・ノーマンの『誰のためのデザイン』を思い出しました。デザインは、どのように使えばいいのかを誘導する「インターフェイス」としていかに大切かの説得力のある事例です。

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)誰のためのデザイン?
―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

著者:ドナルド・A. ノーマン
新曜社(1990-02)
販売元:Amazon.co.jp
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アップルiPhoneを解剖した時のことが紹介されていますが、iPhoneは、あの局面を実現するために、わざわざ本体を厚く成形し、NC工作機で削った痕跡が残っているそうです。これは工程を増やすことであり、製造コストに影響するのですが、それでもデザインにこだわったアップルの凄さが紹介されています。そんなこだわりが、理屈では語りきれないアップルというブランドの個性を生み出しているのでしょう。そこにもアップルの”THINK DIFFERENT”が徹底されているのです。

デザインについて、さまざまな事例や、デザインが生まれていくプロセスを読むうちに、インスパイヤされることが多く、これはよりよいデザインを目指している人だけではなく、よりよいマーケティングを目指している人にもぜひ読んでいただきたいと感じました。

それにしても、山中さんは人を引き込むのがお上手です。まるで気に入った音楽を繰り返し聴くように、同じところを何回も繰り返して読ませていただきました。手元に置いて、知的な刺激を楽しむための一冊かもしれません。


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