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先週の名古屋のセミナーで、いくつかの分野をピックアップし、日米の代表的な企業の営業利益率の格差をご紹介したところ、あらためてその違いを痛感された人が多かったように感じました。

企業業績の好転で、最高益決算のニュースが流れていますが、一部の企業を除いて、それでも収益性が低いことに変わりはありません。日本の企業が、売上げは伸ばしても利益を伸ばせなくなった、いや収益性を長期にわたって落としてきたことは、三品教授の「戦略不全の論理」で実証されていることです。お読みになってその歴史的推移をグラフで見ると背筋に氷が走ります。

戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか
著者:三品 和広
東洋経済新報社(2004-09)
販売元:Amazon.co.jp
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なぜ、そのような格差が生まれてきたのかですが、その根底に、消費者であれ、企業であっても、顧客のニーズが高度化し多様化してきたことに、どう取り組むかで、多くの企業が多品種少量生産という道を選んでしまったことに大きな原因があるように感じてきました。

そのことについて、神戸大学の加登教授がダイヤモンドオンラインで興味深い話を書いていらっしゃいます。
競争力を奪う不条理な均衡状態 =多品種少量生産の罠から抜け出す道 神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊|日本を元気にする新・経営学教室|ダイヤモンド・オンライン :
多品種少量生産の第一の罠は、商品開発のノルマ化と小粒化で、大きなイノベーションへの取り組みが排除されてしまいがちになることです。

開発の納期が短縮され、予算も減り、しかも開発されれば確実に新製品として市場に出されるために、ハードルの高いイノベーションを避け、しかも「現在の市場」の延長線にある無難な線を狙うということになってきます。

しかし、実際に市場に登場したときは、新製品としての鮮度のないものになってしまいがちです。しかも短納期での小さなイノベーションは、すぐにライバルにキャッチアップされ、市場での過当競争を引き起こし、価格が崩れるという悪循環を生みます。

加登教授はこう警鐘をならしておられますが、耳を傾けたい話です。
現在の日本企業は小博打の結果に一喜一憂し、結局は破滅に向かうギャンブル依存症患者に酷似している。つまり、新たな開発に少ない予算で取り組み、一握りの成功と大多数の失敗を繰り返しながら、あらゆる経営資源を浪費し続けているのである。このような行動の果てには勝利はない。

多品種少量生産の罠の第二は、今起こっている価値革命に対処できなくなってしまったことです。価値革命とは、生産技術革命によって、あるいは流通の仕組みのイノベーションによって、典型的には、いいものは価格も高いという常識が覆ってしまったことです。

価値革命に生き残るためには、アイテムを絞って、価値を高めることが求められてきます。とくに、価格とのバランスが重要になってきますが、広げすぎた小粒のアイテムばかりでは効率が落ちるばかりで、この価値革命に抗することができなくなってしまいました。

たとえば、同じ市場分野で、30品種で売上げが100億円の企業と、3品種で100億円の売上げを持つ企業のどちらが効率的であり、競争力が高いか、どちらのほうが収益性が高いかを想像してみてください。

それは理屈だろうという反論がでてきそうですが、典型的な例があります。プライベートカンパニーであり、経営が公開されていないために、日本で馴染みがないのですが、ドイツにアルディというディスカウンターがあります。世界の小売業ランキング9位であり、日本のセブン&アイやイオンよりも売上高が大きい企業です。

特徴は、取り扱いアイテムの90%以上がプライベートブランドであることと、取り扱いアイテムが極端に少ないことです。

だから、多品種少量生産の発想でも、品揃えを増やして多様化するニーズに応えるという企業ではありません。絞られたアイテム、高い品質あるいはそこそこの品質、圧倒的な安さを競争力としており、あのウォルマートですら、ドイツでは、このアルディに完敗してしまいました。

第三の罠は、マーケティング費用の分散化です。多品種、他ブランドを抱えてしまい、ほんらい目指さなければならないブランドパワーづくりが困難になってしまったことです。

日本の競争力を回復するためには、多品種少量生産の罠から一刻も早く抜け出すこと、利益重視の経営やマーケティングのマインドを取り戻すことだと思います。その転換は現実のなかでは大変なことだとは思いますが。

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