一橋大学の神岡教授が、日本でなぜスマートフォンが生まれなかったのかを例に、マーケティングの組織や考え方の課題について講演されたそうです。
なぜiPhoneをつくれなかったのか? 日本企業が抱えるマーケティング上の問題とは【MarkeZine Day Premium 2010】(2/2):MarkeZine(マーケジン) :
神岡教授が指摘されているように、日本の多くの企業は、製品カテゴリ別、またブランド別の事業担当がいて、その現場がマーケティングを立案し、実行管理する現場型マーケティングが主流だと思います。コトラーが言うように、「マーケティングは、マーケティング部門の仕事ではない」ので、現場型のマーケティングは、機能してきたし、今でも機能していると思います。
現場型マーケティングが優れているのは、構想や計画づくり、また実際のオペレーション管理を現場が主導しており、きめ細かく、スピードあるマーケティングができることです。
また消費者や顧客の情報、競合動向、技術動向なども集約されており、きめ細かく、またスピーディに、市場の要請にこたえるマーケティングの展開を可能にしています。
しかし、現場型マーケティングの限界ともいえるのは、ビジネスプロセスを大きく変えたり、市場の枠組みを超えること、また現在自社にはない技術や人材の資源を超えた新しい資源を必要とする領域へのチャレンジには向かないことです。
なぜなら、現場にはその権限がほとんどありません。たとえ権限があっても、製品のライフサイクルがどんどん短くなり、またライバルの動きも激しいために、新製品やプローションのしこみも忙しく、さらにマス広告頼みでは効果が落ちてきているために、既存市場での対応ですら忙しくなってきており、経営に大きな意思決定が必要な案件を固める暇もなく、また避けたいというのが現場の本音だと思います、
だから、既存市場に向けた新製品の企画、既存市場でのマーケティングをしっかりやるというのがほぼ暗黙の了解になっています。
そうして、大きく製品概念を変えたり、新しい市場を創造するようなイノベーションは、技術開発部門にゆだねられていくということになるのでしょう。
ただ、技術だけに頼ったイノベーションには限界があります。まずは大きな技術イノベーションは、そうそう計画的に生まれてくるものではないし、研究開発にも時間も要します。
だから、納期までに開発できる性能や機能で競争するわけですが、それはすぐにキャッチアップされてしまいます。もっと悪いことに、過剰機能、過剰性能となって、いくらいい製品が生まれても、それが価値とならず、価格が下落していきます。
そういった悪循環から抜け出し、目の前の閉塞感を破るためのブレークスルーを実現するためには、きっと現場型のマーケティング組織とはことなる組織やチームが必要になってきているのだと思います。イノベーションを企てる組織や仕事人がますます求められてくるのではないでしょうか。
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