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牛丼は吉野家のほうが美味しいのになぜすき家にかくも差をつけられるのだろうという素朴な疑問を持つ人は少なくありません。なぜでしょうか。

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牛丼の味では「吉野家>すき家」だとしても、業績で「すき家>吉野家」なのは、競争の焦点が「牛丼の味」だけではないことが分かります。

もちろん、すき家の牛丼がまったく美味しくないというのなら、吉野家は味を訴求していけばいいのでしょうが、利用者がなにを求めて店を選んでいるかは、もっと多様だということでしょう。

牛丼戦争は当事者の人たちにとっては大変なことでしょうが、第三者として見ると、大変興味深く、マーケティングのいいケーススタディになります。なぜなら、まるで教科書に書かれているようなシェアの格差による冷徹なメカニズムがこの競争に働いているからです。

実は、すき家と吉野家の店舗数での格差はそう大きいものではありません。吉野家は国内でおよそ1200店、すき家は1500店で、ちなみに松屋は800店です。すき家の店舗数の伸びは大きく、店舗数でも格差はではじめています。
しかし問題は売上高の格差の大きさです。2010年3月期の決算を見ると、吉野家は海外売り上げが含まれていますが、1022億円、すき家は3342億円で、3倍以上の開きがあります。ちなみに松屋は620億円でした。
乱暴ですが、この3つのチェーンにすき家と同じゼンショーグループのなか卯を加えて牛丼チェーン市場が構成されているとすると、市場規模はおよそ5300億円になります。つまり金額シェアで見るなら、すき家が63%、吉野家は19%、松屋は12%です。

すき家のシェアは、シェアによる市場でのポジションの指標として知られているクープマンの目標値では、安定的トップシェア(41.7%)をはるかに超え、独占的市場シェア(73.9%)に近づいています。すでにこの業界では完全にリーダーのチェーンだと言えます。

すき家は、王道のようなリーダー戦略をとっています。メニューを広げ、つまりラインアップを揃えた総合戦略をとっており、牛丼以外のメニューの売り上げも相当大きいと推測されます。しかも、コスト優位をいかし、低価格メニューで顧客を吸収してきました。
すき家にとっては、同業界での競争よりは、ファーストフードのカテゴリーとの競争の段階に入ってきています。もう吉野家はライバルではなく、マクドナルド、あるいはケンタッキーがライバルです。

ではシェアで大きく水をあけられた吉野家ですが、これだけ格差がでる、つまり集客力で差が出てしまうと、直接対決を行えば行うほど、すき家のちょっとした反撃でおおきなダメージを受けてしまいます。

吉野家は、すき家と直接対決してはいけないのです。すき家との違いをいかにつくり出すことに徹した差別化戦略、あるいは顧客も絞ってニッチ戦略をとるしかないのです。

競争の焦点をいかにずらすかです。吉野家は280円の牛鍋丼で、客数増に成功しました。しかし、その効果がわずか1カ月しかもたなかったようです。
客単価の下落に見合った客数増ができず、10月の既存店売上高は、前年同月の3.8%減となりました。さらに吉野家は、牛キムチクッパを投入してきていますが、問題は吉野家がなにを目指しているかです。

280円は裏目だったのか 吉野家がデフレスパイラルに陥っている (1/2)


もし競争力のある、つまり集客力のある低価格のメニューを増やしていこうと考えているとすれば、メニューの多さでは、牛丼でもすき家に分があります。しかも、メニュー開発で連続ヒットというのはそう簡単ではありません。

もし、メリハリのあるメニューの変化に戦略を置いていたとしたら、それは差別化につながるかもしれません。マクドナルドの戦略を徹底的に模倣することが考えられます。ただしそれを実現する体力があるのかどうかにかかってきますが。

いずれにしてもシェアの状況や格差によってなにを目指せばよいのかは違ってきます。シェアの状況や格差によって、どのような戦略発想すればよいかについては、今週からはじめたメールマガジンに書いていますので、参考にしていただければと存じます。

メールマガジン「大西宏のマーケティング発想塾」創刊の記事を下のエントリーに一部を掲載しましたのでご参照ください。