普段夜食のために行く近所の店にはテレビがあります。チャンネルの選択は、なんとはなくその場の空気で決まっていくのですが、その時にでてくる会話は、きまって、最近のテレビは面白くない、企画もよく似ているし、どれも同じようなお笑い芸人と、タレントがでていて飽きるという類のテレビ番組への不満です。
なぜそうなったのでしょう。そんな複雑な事情はないと思います。ひとつは、採算が悪化し、時間をかけて取材をする、あるいはひとつのテーマを追うゆとりがなくなったことがきっとあるのでしょう。
もうひとつは視聴率の罠です。番組企画については、重要なのはスポンサーがつくかどうかで採用不採用が決まります。視聴率がとれている他局の番組を模倣する、そして人気のタレントを使うと、それが視聴率の保険になり、スポンサーも説得しやすいということになります。こうしてどんどん画一化が進んで行くのです。
一見は、無難なマーケティングのようですが、模倣(ミーツー)のマーケティングはやがて破綻します。同じような番組ばかりになると、番組の陳腐化の速度もはやまり、番組の魅力が落ちて、結局は「テレビ離れ」というしっぺ返しがやってきます。
このあたりについて、かつて音楽の世界で、JポップがCMとのタイアップでどんどんヒットを飛ばしたものの、どんどん曲がスポンサー好みの無難な音楽になってしまってやがて衰退していったことを重ねあわせて書かれているジャーナリストの烏賀陽 弘道さんの記事がとても参考になります。
テレビは今日も金太郎飴のタレント番組ばかり
「報道番組」をつくらせてもらえない民放の記者たち
実際、テレビ離れがいよいよ加速し始めたようです。グラフはテレビ東京のメディアデータから引用したものですが、緑色の線のHUTを注目してください。HUTとは「どのくらいの世帯がテレビ放送を放送と同時に視聴していたのかという割合」(ビデオリサーチ)ですが、長期的に下降傾向をたどっています。そのHUTが2010年上期に急激に落ちたことがわかります。
2009年までは若い世代が視聴率を支えていたのですが、ついに若い世代まで「テレビ離れ」が始まったのかもしれません。
テレビ東京メディア・データ
ビジネスで失敗するのは、みんなに好かれようという誘惑に負けることだという金言がありますが、視聴率は、どれだけ深く見られたかではなく、どれだけ多くの人に見られたかであり、そんな危うさが潜んでいます。
さらに、視聴率は「ながら視聴」をとらえていません。たとえ、テレビのスイッチをいれている時間は減らなくとも、PCやインターネットの普及や、携帯利用時間の増加などで当然「ながら視聴」が増えてきます。テレビをつけていても、実際には他のことをやっていて、なんとはなく音だけ聞いているという人もきっと増えてきているはずです。
つまりテレビ局同士の競争だけではなく、さまざまなメディア、あるいは生活行為との競争が始まっているのです。当然、人びとを画面に惹きつけ、じっくり見てもらう番組コンテンツの魅力の強さや深さが必要になってきますが、画一化は、その惹きつけるパワーも失わせます。そして、次第に情報感度の高い人たちから順にテレビから逃げていくのです。
さて、それほどテレビの世界が重視し、番組企画まで大きな影響のある視聴率ですが、これが申し訳ないのですが、ほんとうに笑ってしまいたくなるほど遅れているのです。
マーケティングサイドからすれば、全体の視聴率がどうかということも参考にはなるでしょうが、本当に広告を見て欲しいのは、その商品やサービスを買ってくれそうな人たちです。その商品やサービスに縁のない人がいくら広告を見てくれても意味がありません。だからどのような人びとをターゲットとしてマーケティングを組み立てるのかが重要になります。
しかし、視聴率データが示しているのは、男女と年齢階層、しかも大雑把な区分しかありません。たまにM1層とかM2層、あるいはF2層、F3層とかという言葉を知って、自慢げに話している人がいますが、そんな粗いターゲット設定をしているマーケティングはそう多くはありません。視聴率調査で、20歳以上の区分は、20〜34歳、35〜49歳、50歳以上の3区分ですが、違和感がありませんか。つまり、商品やサービスのピンポイントの人たちにどれぐらい見られたかがわからないということです。
視聴率調査の限界、あるいは視聴率調査のイノベーションの停滞かもしれません。極端な話が、視聴率がたとえ3%であっても、アウトドア用品を売る企業にとっては、アウトドアライフを楽しんでいる人の10%が見てくれれば10%の成果があったことになります。しかも、アウトドアを楽しむ人は、年齢が重要な尺度ではありません。
そんな視聴率データの限界、しかも調査の誤差を考えると1%の視聴率の変化に一喜一憂するという世界はまことに不思議です。
テレビは、ますますどの局との視聴率の争奪戦かというだけでなく、他のメディア、とくにインターネット、あるいはゲームなど、他の生活行動との時間の争奪戦になってきます。
その番組に惹きつけるコンテンツの魅力、その番組でしか得られない独自の魅力づくりができなければ、テレビはますます衰退していくだけだと感じます。
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チャンネルを合わせてテレビは写っているが、実際には「視聴はしていない」つまり、なんとなく習慣で、惰性でテレビの電源が入っているという家庭が増えていると思います。
もはや、テレビが娯楽だった時代は過ぎ去り、報道番組にも騙されなくなり、ニュースも「ああ、ネットで流れたいた事は本当だったんだね」と追認する手段に成り下がっている。
デジタル多チャンネル時代に突入し、本当の生き残りの時代に突入。たぶん、多チャンネル化したメリットはまったく生かされないでしょう。頭が硬い人間多いから(上層部)、馬鹿な人間多いから(現場)