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まだ文庫本や新書にあたるペーパーバックを入れると紙の書籍のほうが販売数量で上回っているとしても、電子書籍のアマゾンでの販売数量がハードカバーを抜きました。ちょっと前に電子書籍リーダーのKindleを値下げするという記事があり、苦戦しての値下げか、積極攻勢としての値下げなのかがよくわからなかったのですが、積極策だったのでしょう。

日経記事によれば、米国の出版主要13社の売上高に占める電子書籍の割合は1〜5月に8.5%となり、前年同期の2.9%から大幅に増えており、急成長していることがわかります。

日本は、これまではコミックを中心とした携帯向けの電子書籍が市場を支えてきましたが、今後、成長が期待できるのは、iPhoneやiPad向けの普通の書籍の電子出版です。昨日、アゴラで書きましたが、電子書籍の普及に弾みがつく象徴的な出来事が起これば、作家や出版社の電子出版にむけた動きも活発になってくると思います。村上龍さんが、iPad向けに長編小説「歌うくじら」を出版社を通さずにリリースされましたが、どのような波紋となって広がるでしょうか。

リリースの記事そのものは見落として、昨日の「カンブリア宮殿」で知りました。長編小説で、坂本龍一さんの音楽付きとはいえ、電子書籍としてはかなり高額な1500円という価格設定です。

これが売れると、かならずしも安いから売れるというだけではないということになり、電子出版のブーム化に火がつく可能性も高まります。

電子出版はコスト構造を大きく変えます。簡単な例を考えてみます。あまり会計学ではどうだと固く考えないでください。

仮に、1000円の書籍を一万部発行し、印刷・製本で300万円がかかったとします。書店マージンを考えないで計算すると、一冊当たりの印刷・製本代は300円で、売価の30%です。

しかし、現実はそうはいきません。日本の場合は売れない書籍は返本されてきます。それで実際に5,000部が売れ、5,000冊が返本されてきたとすると、いったい一冊あたりの印刷・製本代はいくらで、売価のどれぐらいになるのでしょうか。

当然、最終の売上げが、500万円で、印刷・製本代が300万円なので、一冊あたりの印刷・製本代は、売価の60%を占めます。1000円の本であっても、一冊600円の印刷・製本代がかかっていることになります。しかも、返本の費用、倉庫代がさらにかかってくるので大変ですね。

GIZMODEが以前、ニューヨークタイムスによる紙の書籍と電子書籍のコスト比較を取り上げていましたが、そのまま額面通りに受け取るとちょっと間違ってしまいます。
米国では、書店がすべて買い取ることが前提となっています。だから当然書店は売れないリスクを背負うので、書店のマージンが50%も占めています。

出版社がリスクを負うのか、書店がリスクを負うのかの違いはあっても、売れないリスクが大きいことには変わりません。
電子書籍はもっと安くならないのか? リアル書籍とコスト構造を比較!

これはリアルな世界では当たり前のことです。実際の原価率は、どれぐらい売れるかで大きく変動します。

電子出版は、出版のリスクを下げます。失敗しても損は小さく、逆に想定以上売れれば、利益が大きいことはいうまでもありません。あるいは大量に売れればもっと劇的に価格を下げることもできます。いや価格を下げずにもっと広告などのマーケティング費用を増やしてもいいのです。

しばらくは、電子書籍の「買い場」であるプラットフォーマー、出版社、作家の間で配分比率が揺れるかもしれませんが、それも、電子書籍が売れるようになってくると、落ち着くところに落ち着くのではないでしょうか。

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