アップルは、iPadで、たんなるネットブックでもない、また電子書籍リーダーでもない、タブレットPCという新しいカテゴリーを切り拓こうとしていますが、電子書籍リーダーとしても成功するかどうかで、タブレットPCの市場性も大きく変わってくるものと思います。もちろんスティーブ・ジョブスも当然そのことは戦略上に置いているから、iBookを立ち上げます。
なぜiBookの発表が遅れているのか、なぜiPadを先行して発表したのかの理由を想像してパズルを解いてみるのは、戦略シナリオを描くちょっとしたトレーニングにもなり、なかなか面白いところです。
新しい体験とは、もちろん操作方法や、インターフェイス、また使うシーンが変わるということもありますが、今までできなかったことができるようになるということのインパクトのほうがはるかに大きいことは言うまでもありません。
ジョブスが、iPadを、たんに、ネットブックを駆逐するタッチパネルで動く次世代型のモバイル端末と位置づけているとは到底思えません。生活そのもの、あるいは文化そのものを変えるというビジョンを持っていると見る方が自然でしょう。その鍵となる機能はやはり電子書籍リーダーです。しかも電子書籍リーダーは、ハードで完結できる世界ではなくしくみが必要だと言うことは言うまでもありませんね。
ジョブスが電子書籍をいかに意識しているかは、さまざまな記事からも伺うことができます。「アマゾンはKindleでこの機能を開拓するという優れた成果を上げた。われわれは彼らを手本に、もう少し踏み込む」とか、アマゾンの電子書籍リーダーKindleとのバッテリー動作時間の差についての質問に、「そもそも人は10時間も(つづけて) 読書をしない」と一蹴したという件があったり、「出版社はアップルにつく」とか。
iPadそのものはアマゾンでも販売されますが、焦点は電子出版の覇権をどこが握るかに移ってきています。
アマゾンのiPad発売予告ページ
ハードはその市場を拓くためのものに過ぎません。Twitterで知ったのですが、アマゾンも、「Kindleで不満があれば、いつでも返金します、返品は必要ありません」というキャンペーンを始めたようです。ビジネスの焦点はKindleではなく、電子書籍のビジネスなのです。
しかし、こういったアマゾン対アップルという話題がヒートアップするにつれ、残念ながらSONYさんの影が薄くなってしまいましたね。
さて、以前iPadについて書いたときに、iPadの電子書籍リーダーとしての機能はさほど重要ではないのではないか、読書離れが進み、出版業界、とくに雑誌の不振が叫ばれている、いまどきに誰も本は読まないというコメントを頂きました。
しかし、現実は違うようです。毎日新聞社が行っている読書世論調査によれば、読書率はざほど低下してきたとはいえない結果です。読書離れとはことなる原因があって、販売数が減り、出版業界や雑誌社の経営が厳しくなってきているのではないかということです。
読書率の推移(一般)
しかも学生に限ると、むしろ昔よりは本を読むようになってきています。例えば1955年の学生の読書率は70.4%でしたが、1975年は80.9%、2000年は94.0%、2008年はそれより少し落ちているとしても、87.0%とむしろ長期的には、読書率はあがってきたのです。
とくに読書離れの危機感から学校教育で読書に力を入れた結果だと思いますが、毎日新聞と全国学校図書館協議会が共催の調査では、小学生や中学生の平均読書冊数も増加してきています。
「第55回読書調査」の結果
ネットの利用が高まると読書しなくなるということも考えられますが、インターネットや携帯電話の普及が「本離れ」に関係があるかと思うかとう質問には、関係があると答えている人が多いのも事実です。しかし、一方では、ネット利用時間が多い人ほど、読書量が多いという結果がでています。そちらのほうも納得できる気がします。
ネット利用時間が長い人ほど実は読書量が多い (読書世論調査より)
書籍に関して、出版業界は青息吐息なのは、ブックオフなどの古書籍による流通が伸びてきたこともあるのではないでしょうか。それに辞書の市場は大きいのですが、電子辞書が登場したり、ネットで調べる、百科事典もネットで検索して調べる時代となりました。一般の週刊誌も、雑誌を読まなくともネットで十分情報が得られる、あるいはそれ以上の情報が得られることすら少なくありません。
本を読まなくなったということではなく、いろいろ環境が変わってきた、あるものはインターネットに置き換えられ、あるものは書籍がリユースされるようになったということでしょう。そういえば、私自身も、アマゾンでも結構マーケットプレイスで購入することが増えてきました。なんら問題を感じません。
今でも電子出版をやっていることろがあるのですが、携帯では成功したとしても、一般の書籍では書籍の品揃えが薄く限界があります。しかし電子書籍の市場が形成され、それが主役になっていくと、出版の世界は大きく変化します。それこそ創造的破壊がやってくるということです。
出版業界は、その変化に乗れるかどうかが問われてきます。おそらく雑誌に関しては、電子出版が救いの神になるかもしれません。
紙の発明、印刷機の発明が文明を変えてきました。それほど大げさに考えなくとも、インターネットは誰もが発言でき、それを共有することができるという新しい文化を生み出しましたが、それに匹敵するような大きな変化が起こり、新しい文化の時代がやってくるのではないでしょうか。
ちなみに、アマゾンのKindleのCMがなかなかいいので、下に貼っておきます。
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1ヶ月に1冊読む,読まないなんてレベルで議論されたりしますけど,そんなの目くそ鼻くそを笑うなわけで.
今も昔もわざわざ「本を読んでます」と言えるだけ読んでる人なんて,大していない.で,それ以外のライトな層も大して変化していない.
出版不況は雑誌が売れないこと,自転車操業的なやり方に依存しすぎたことが原因でしょう.
そうした中で,電子書籍はどうか?
ある程度のシェアは確保するでしょうが,文字を主体とする本では苦しいかな...
果たして1ヶ月に1〜2冊程度の読書をする人たちが買うか?日本の本は世界でも安い方だから,読みやすい紙の方に流れないかなぁ
1ヶ月に10冊以上読む「読書をする」人たちはどうか.買わないんじゃないかなぁ.こっちは紙に愛着がありそうだし.
狙い目はその中間層の大して読まない人たちぐらいか?
後はマンガですね.過去の作品を読みたいと思っても,既刊が50冊となると,さすがに邪魔ですからねぇ.エロを除けば,マンガが一番の狙い目だろうなと思います.
電子書籍なら,気に入ったページだけを連続して見て,毎日再確認するとか,新しい楽しみはありそうですけどね.