2010年01月06日
牛丼、なにのための値下げ戦争?
やはり、生死を賭けたマーケットでの攻防がはじまると世間の注目はあつまります。ましてデフレ化のなかでの値下げ競争は格好の話題となります。しかし、利益なき不毛な競争は、弁当の値下げ戦争と重なって見えてしまいます。
冷静に眺めてみると、牛丼という外食産業は、もはやブームが去って、客離れが少しづつ起こってきている兆候が見えます。既存店で売上が落ちてきて、新店を増やしてかろうじて売上を伸ばすというステージに入ってきていることが、各社の月次情報から見えてきます。
しかも、良好な立地を確保しようとすると、そこにはかならずといっていいほど競争相手がいて、ライバルの存在が障害となりますす。だから、ライバルを叩こうという流れになるのは当然といえば当然でしょう。
値下げ競争は、昨年の四月に「すき家」がしかけたのですが、五月に既存店の客数はかろうじて対前年をクリアしただけで、その他の月は、客数も、客単価も、売上高も前年割れが続いています。新店を増やして売上を増やしているだけです。昨年末から始まった値下げ効果はまだわかりませんが、あまりいい結果にならないような気がします。
「すき家」は、牛肉輸入のプロフェッショナルであるマザーランドファームの岸本社長のブログによると、ミンチ用又はハンバーグパティー加工用のオストラリア産派材肉を使っているそうですが、豪州ドルがじわじわと上がりはじめてきておりそれが誤算となり、想定以上の利益圧迫になるかもしれません。
「すき家」月次情報
同じ低価格戦略といっても、低価格を実現するビジネスの「しくみ」に支えられた展開と、ただ競争上値下げをするのでは大きく違います。つまり「理由あって安い」のと「たんに安い」の違いです。
どうもマスコミなどでは同じように取り上げてしまっているのですが、「しくみ」に支えられた低価格戦略は利益がでます。しかし、「しくみ」が進化せず、価格戦略だけに走ると、利益を落とし、消耗戦になってきます。
この違いは大きいのです。よく、ユニクロをデフレの元凶のように扱う人がいますが、とんでもないですね。縫製を日本でするというのは、今や、よほどの高級品でしか成り立ちません。これは世界の潮流です。
では、途上国の企業がユニクロと同じビジネスをやれるかというと、それはかなり難しいでしょう。原材料の調達から、企画、デザイン、物流、店舗オペレーション、またブランドにいたる「しくみ」は一朝一夕に真似できないからです。いま、ユニクロに限らず、まだマスコミにはほとんど登場してきていない勝ち組企業がありますが、それぞれ調べてみると、すべて独特のビジネスの「しくみ」を築いてきているところばかりです。
問題は、古い「しくみ」を残し、コスト削減、経費削減できないままに値段だけ下げるほうです。こちらは、利益がでません。弁当競争などもそれでしょうね。消耗戦のすえ、みんなが疲弊するだけです。
おそらく「すき家」はこう考えたのでしょう。「吉野家」の弱みは、米国産牛肉を使っているために、BSE問題で月齢20ヶ月未満の牛肉輸入が禁止されて以降、米国産牛肉が高騰しており、値下げ競争に持ち込めば、吉野家は対抗する術をもたない、今こそ、「吉野家」から客を奪う千載一遇のチャンスで、資金力勝負で価格競争に持ち込めばいいと。
結局は、同じ業界内で、同じような商品やサービスで競争を行い、激しい消耗戦をやっていると、やがて業界そのものの魅力が低下し、やがて衰退していきます。そんな例が日本は多すぎるのです。
私たちが学ぶべきは、今日の競争戦略の中心課題は、カテゴリー間、つまり異業種、他業態との競争に移ってきているということです。牛丼チェーンも、他のファーストフード業界、あるいは他の外食産業、いやもっと違う分野かもしれませんが、異なるカテゴリーの業界との競争に勝たなければ、顧客も増えないし、売上も増えず、利益も上がりません。また、それこそが市場の創造に他なりません。
いったいどのような顧客を増やそうというのか、本当の競争相手は誰だと考えるのか、そんな異なる相手と競争に勝つためには、どのような商品やサービスを、どのようなしくみで提供すればいいのかを、この業界のいずれかの企業が見いださない限り、おそらく出口のない消耗戦が続きます。
吉野家がどこまで持ちこたえることができるのかはわかりませんが、よしんば経営が破綻したとしても、いずれかの企業が買収して生き残れば、「すき家」が狙っている残存者利益は、幻に終わってしまいます。
消耗戦も結構ですが、本当の消費者利益を考えるのなら、ビジネスの進化、商品やサービスの進化こそ追求して欲しいものです。そういえば、カニを安く売る通販会社が、カニ相場の高騰で倒産してしまったというニュースがありました。
そろそろ同業界のガチンコ勝負による価格競争から「しくみ」に支えられたビジネスの進化と市場創造へ、今年はそんな経営が広がっていく一年であることを心から願います。
応援クリックよろしくお願いします
簡単導入! ネットで利用する営業支援システム
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
1. 続・価格競争は自分食いである [ TREND frontier 営業日誌 ] 2010年01月06日 20:07
タイミングよく価格競争ネタを見つけてしまいました。
消耗戦も結構ですが、本当の消費者利益を考えるのなら、ビジネスの進化、商品やサー??.
この記事へのコメント
9. Posted by 安太郎悪太郎 2010年01月14日 17:06
私が利用するなか卯はどこも接客や調理の質が落ちてきた感じがします。価格競争にばかりに目が行ってトータルな顧客満足がなおざりでは本末転倒と思うのは私だけ?
8. Posted by 業界人 2010年01月07日 14:53
なか卯の既存店の月次推移では、客単価は増えたけれど、客数の落ち込みはかなりのもので、水膨れ。
http://www.nakau.co.jp/ir/nenji.html
http://www.nakau.co.jp/ir/nenji.html
7. Posted by 社員 2010年01月07日 11:06
この人は何を見てこう判断したのでしょう?
テレビCMですか?
”すき屋”と言っている時点で?です。
ゼンショーは多種な外食チェーンを持つグループであり、つい先日もコスト削減の目的でグループ子会社のなか卯を吸収することを発表したばかりですし。
恥ずかしくないのでしょうか?
テレビCMですか?
”すき屋”と言っている時点で?です。
ゼンショーは多種な外食チェーンを持つグループであり、つい先日もコスト削減の目的でグループ子会社のなか卯を吸収することを発表したばかりですし。
恥ずかしくないのでしょうか?
6. Posted by かぽーんw 2010年01月06日 23:45
> 異なるカテゴリーの業界との競争に勝たなければ、顧客も増えない
その通りです。
理想は異なる業界と競争しているように見えて、実はすべて同一企業グループでしたという形でしょう。
すき家さんにしても、同一グループ内にハンバーグのビックボーイ、パスタのジョリーパスタ、焼肉の牛庵、ピザのシカゴピザなど様々な事業体を持ちリスク分散と収益の多様化を図ってますよ。
牛丼業界が飽和状態にあることは周知の事実です。
でも、徹底したローコストオペレーションを追求し、低価格でも利益の上がるシステムを開発、他の事業体へ応用すればグループ全体で収益拡大が可能となります。
牛丼しか見ないでビジネスモデルの巧拙を述べるのはやや拙速かもしれませんよ。
その通りです。
理想は異なる業界と競争しているように見えて、実はすべて同一企業グループでしたという形でしょう。
すき家さんにしても、同一グループ内にハンバーグのビックボーイ、パスタのジョリーパスタ、焼肉の牛庵、ピザのシカゴピザなど様々な事業体を持ちリスク分散と収益の多様化を図ってますよ。
牛丼業界が飽和状態にあることは周知の事実です。
でも、徹底したローコストオペレーションを追求し、低価格でも利益の上がるシステムを開発、他の事業体へ応用すればグループ全体で収益拡大が可能となります。
牛丼しか見ないでビジネスモデルの巧拙を述べるのはやや拙速かもしれませんよ。
5. Posted by mononoke 2010年01月06日 21:49
格差社会と言われて久しいですが、低賃金で働く人々にとっては低価格である商品しか購入できない現状があります。安ければ客が流れるという事実は日本の富の分配の格差が広がっている一つの証拠と言えますね。デフレ脱却・ビジネスモデルの進化も結構ですが、低所得者層を支える価格競争は日本の経済格差が広がればどんどん進むのは間違いないでしょう。
安くて上手いものを作る事ができる企業だけが生き残っていくのは間違いないし、吉野家のようにアメリカ産牛にこだわって消費者の現実を無視していると売上げは落ちていくのは間違いないでしょう。
安くて上手いものを作る事ができる企業だけが生き残っていくのは間違いないし、吉野家のようにアメリカ産牛にこだわって消費者の現実を無視していると売上げは落ちていくのは間違いないでしょう。
4. Posted by まじかる☆スフィー 2010年01月06日 21:48
「しくみ」のない値下げに先がないというのは同意。値下げそのものは大歓迎なので一時的要因じゃなくしっかりした仕組みで安くやってほしいものです。
> 異なるカテゴリーの業界との競争に勝たなければ、顧客も増えない
王将、サイゼリア、マクドからも客奪う・・・なかなかしんどそうです。
牛丼屋が任天堂みたいに新たなユーザー層掘り起こしをするために何やればいいんでしょう。
その策が思いつかないから値下げで客数増やしての売上アップ狙うんでしょうね。あるいは世界に店舗拡大するか。その「掘り起こすための何か」を提案してあげて下さい。。。
> 異なるカテゴリーの業界との競争に勝たなければ、顧客も増えない
王将、サイゼリア、マクドからも客奪う・・・なかなかしんどそうです。
牛丼屋が任天堂みたいに新たなユーザー層掘り起こしをするために何やればいいんでしょう。
その策が思いつかないから値下げで客数増やしての売上アップ狙うんでしょうね。あるいは世界に店舗拡大するか。その「掘り起こすための何か」を提案してあげて下さい。。。
3. Posted by aaamm 2010年01月06日 21:23
実際に食べに行って目で見て
この記事を書いているのかな?
値下げ以前より入客はかなり増えてるし、売り上げも増えているのに人件費も以前より抑えているようだし、回転率も高い。
割りばしもやめて、肉もメキシコ産の牛肉に切り替えている。
思いつくだけでこれだけのことをしているぞ?
値下げをするための準備を整えたうえでの
値下げだと思うのですが?
この記事を書いているのかな?
値下げ以前より入客はかなり増えてるし、売り上げも増えているのに人件費も以前より抑えているようだし、回転率も高い。
割りばしもやめて、肉もメキシコ産の牛肉に切り替えている。
思いつくだけでこれだけのことをしているぞ?
値下げをするための準備を整えたうえでの
値下げだと思うのですが?
2. Posted by なお 2010年01月06日 17:54
1. Posted by YSK 2010年01月06日 16:21
別次元の話かも知れませんが、どちらのチェーンもどんどん品質(味)が落ちてきているように思います。価格競争がかえって客離れを加速しているような、、、。
たとえば特盛りではなく、特上を作っても良いように思うのですが、仕入れや生産体制上無理なのでしょうかね。
たとえば特盛りではなく、特上を作っても良いように思うのですが、仕入れや生産体制上無理なのでしょうかね。



