2009年12月17日
それでは永遠にすれ違い、菅さんと竹中さんの「神学論争」
「経済成長の基礎は供給側になければいけない」と主張する竹中さんと、「どちらかと言えば、需要側が重要だ」と譲らない菅国家戦略相との議論があったようですが、そんなのは普通の庶民感覚、ビジネス感覚から言えば、車の両輪みたいなものであって、お二人の議論は、抽象的であり、結論のでない神学論争のように思えてしまいます。
竹中氏「供給側に基礎」・菅氏「需要側が重要」
こういった抽象的な議論が結構多いような気がします。たとえば事業仕分けで問題になった科学技術の問題もそうです。科学技術が大事じゃないかというのは正論でしょう。しかし、特殊法人による中抜きの問題は別です。
しかも、実際技術立国として国際競争力がどうかといった場合、現実は、技術力で勝ったから勝てるかというとはなはだ疑問です。日本が競争力を失ってきたのは本当に技術力の低下であったのでしょうか。ちょっと違うのではないかと思えます。
日本は、技術力では未だに極めて高い水準にあります。例えば、液晶テレビや携帯などを考えて見てください。技術は高い、しかし残念なことに、現実はその市場が成長すると、ことごとく負けていってるというのが実態です。半導体もそうです。ちょっと前までは日本は半導体で世界をリードする国でした。しかし半導体で大きな利益を上げているのはインテルであって、日本のメーカーは青息吐息です。
半導体の技術が低いのかというと決してそうではありません。では特許で負けているのかというと、すくなくとも特許数ではそれも違います。なぜ技術が高くとも負けるのか、利益が低いのかということを見直さないと、いくら画期的な技術を生み出しても、同じ轍を踏むだけです。
技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由著者:妹尾 堅一郎
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-07-31
おすすめ度:
クチコミを見る
そういった点をもっと知りたいという方は、東京大学の妹尾堅一郎教授の『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』をお読みください。分かりやすく書かれています。研究開発部門の現場の声を集めた東京理科大の伊丹教授の『日本の技術経営に異議あり』も参考になります。
日本企業の技術経営に異議あり著者:伊丹 敬之
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-11-03
おすすめ度:
クチコミを見る
よく年功序列が日本を駄目にしているという話なんかもそうですね。きわめて乱暴な議論だと感じます。そういう主張をされる方は、一度賃金体系を変える実務についてみてください。いかにデリケートな問題かが実感できると思います。公務員は別として、実際には、多くの企業が、賃金の年功序列体系の修正をやってきています。しかし、改革は社員の生活権、さらに技能の継承、また社内のモチベーション維持を考えながらやらないと、組織が荒廃してしまいます。
緩やかではあっても、年功序列の賃金体系も変化してきているのが事実です。これは、ちょっとデータは古いですが、社会実情図録の二つのページをご覧ください。
男性標準労働者(大卒)の賃金カーブの推移
賃金カーブの国際比較
また、正規雇用の問題で、規制緩和が雇用を増やすという議論がありますが、正規雇用を義務づける、あるいは最低賃金を定めると雇用は減るでしょうが、では雇用の規制緩和を進めると雇用が増えるかというと、これも怪しいのです。
そもそも製造業が問題になっていますが、賃金では日本に限らず、先進国は国際競争力はまったくありません。賃金が五分の一、十分の一という途上国と同じ土俵で競争できません。競争の土俵を変えるというほうが正解であって、いくら規制緩和して、賃金を下げても、国内が荒廃するだけで問題は解決しません。
なぜマスコミがもっと取り上げないか、野党ももっと突っ込まないかと不思議なのが、今、民主党が進めようとしている農家への戸別所得補償問題です。
もともとはFTA(自由貿易協定)をもっと進めるという、供給側にとって大きな活性化の鍵となる政策がセットで、FTAを進めれば、農業が打撃を受けかねないので、それを緩和するためのものであったはずです。
貿易立国である日本が、関税障壁を残すというのはいかにも経済の足を引っ張っているわけで、これは大胆に押し進めるべきでしょう。
農家への戸別所得補償ということだけでは、それは需要をつくるという視点になりますが、それでは日本の経済は活性化しません。むしろ農業の産業化や生産性の向上すら阻害しかねず、いかにもまずい話です。
需要側の問題も解決しなければならないことはいくらでもあります。たとえば、本来需要をもっとも牽引するはずの若い世代の人口がただでさえ減少し、さらに非正規社員の減少、また所得の低下が起こっていたら、日本は元気が出ません。
もっと言えば、ちょっと前に、日経のコラムで、国内の人口が伸びず減少に向かいはじめた日本は、貿易の壁を取り除き、アジア全体を内需だと見るぐらいの発想が必要だという提言がありましたが、その通りだと思います。
いずれにしても、神学論争みたいな話は止めて、供給側を活性化させる方策として、もっとどのような具体的なアイデアがあるのか、また需要側を活性化させるにはどうすればいいのかをお互い提示しあい、いいとこ取りをすればいいじゃないかと思うのですが、ご両人とも、これまでの言動から感じるのは、相手を負かすことがお好きなタイプのようで、どっちもどっちのショーだと感じてしまいます。
応援クリックよろしくお願いします
簡単導入! ネットで利用する営業支援システム
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
1. 貨幣供給よりは貨幣需要の創出策が必要 [ 文理両道 ] 2009年12月18日 20:01
日銀は昨日5兆9000億円、今日も5兆3600億円と、短期金融市場に大量の通貨供給を行った。やや長めの期間の金利低下を促して景気を下支えする方針のようだが、どの程度の効果があるかは疑問である。
今は金利はほぼ極限まで低下しており、「流動性の罠」とも言...
この記事へのコメント
4. Posted by kabusiki 2009年12月19日 23:57
供給側か需要側かの二者択一ではなく、その折衷案が一番現実的な解決でしょうね。でも政治の場では中庸の意見はインパクトが無くてウケが悪いから……。
3. Posted by 死にすぎ 2009年12月18日 02:22
アクセルを踏みながらブレーキを踏んでも車は進まない
規制緩和すれば、量は分からないが確実に雇用は増える
何も怪しいことはない
中高年はイマドキの若者と比べて我慢強いんでしょ
なら問題ないね
自分がやりたいように働き、自分がやりたいように消費する
そうやってこそ真の活力が生まれる
たとえ失敗してその身を滅ぼしたとしても、真の意味で自己責任だから納得して死ねる
それが規制緩和に込められた意味です
2. Posted by ルル 2009年12月17日 21:19
竹中さんがおしゃるとおり規制緩和しすべて市場原理に委ねればうまくいくというのも、今の現実を見てみると間違いであることに気づきます。彼はうまくいかないのは規制改革が不十分だからと、二言目にはいいますが、もともと完全な市場などはありえないのに、それがあることを前提に議論しているところに無理があるのだと思います。
また、「経済成長の基礎は供給側になければいけない」という主張についても、それでは昨年3月期の決算で日本の企業が空前の利益をあげたのに、労働側の賃金があがらなかったのは何故なのかを考えれば、むしろ官さんの議論の方が正しいとも言えると考えます。
また、「経済成長の基礎は供給側になければいけない」という主張についても、それでは昨年3月期の決算で日本の企業が空前の利益をあげたのに、労働側の賃金があがらなかったのは何故なのかを考えれば、むしろ官さんの議論の方が正しいとも言えると考えます。
1. Posted by 前田 2009年12月17日 19:22
菅直人氏が経済にお詳しくないために抽象的になってしまったようですね。
ミルトンフリードマンが、常識を変えるには徹底的にロジックが必要であると述べていますから、ロジックで相手を打ち負かそうとするのは自然だと思いけどね。
菅さんはともかく、竹中さんは改革の最前線に立っていただけに言葉には重みがありますね。
ミルトンフリードマンが、常識を変えるには徹底的にロジックが必要であると述べていますから、ロジックで相手を打ち負かそうとするのは自然だと思いけどね。
菅さんはともかく、竹中さんは改革の最前線に立っていただけに言葉には重みがありますね。



