人気ブログランキングへ

池田信夫さんのブログで、「成長戦略とは競争戦略である」というコラムがあありました。思わず釣られて読んでしまいましたが、そこまで思い切って言い切るのは気持ち良いかも知れませんが、果たして本当にそうでしょうか。ふっと疑問に感じたことを書きます。
「成長戦略とは競争戦略である」(池田信夫blog part2)

また、池田さんに限らず、政府ができるのは規制緩和や金融政策ぐらいであって、市場に関与すべきでないという考え方をする人もいらっしゃいますが、そちらもどうなのかと思ってしまいます。

確かに、これまでの政府のやってきた保護主義的な日の丸プロジェクトが成果をあげられなかったことも事実でしょう。日本の農業政策がその典型例だと思いますが、新規参入が阻まれ、競争が生まれず、結果として、農業の生産性が向上するどころか、農業の担い手も不足する事態となってきました。産業の発展には競争は極めて重要なことはいうまでもありません。切磋琢磨の競争に揉まれるなかで、知恵も生まれ、また企業の活力も引き出されてきます。

これまでの政策の多くが、「なにか」を目指す際に、「いかに」取り組むかを間違ってしまった、政府が、というか一部の政治家と官僚が関与し、さらに利権が生まれ、自由な競争を取り入れなかった、むしろ実質的には規制してきたことによる失敗が多かったことも事実でしょう。つまり戦略が間違っていた、あるいは甘かったということでしょう。企業で言えば、どの市場に照準を合わせるか、その市場で、どのようなポジショニングの獲得を目指すか、さらに実際にはどのような研究投資を行い、またビジネスのしくみを組み立てるかが合わさって成長戦略ですね。

競争を促す手段として規制緩和も重要であることも間違いないことです。その点は納得できるのですが、しかし、では競争していれば、企業は、あるいは激しく競争が行われている市場は成長していくのかというと、現実の市場では、そうとは限りません。身近な例では、たとえば、ビール業界は、競争が激しいカテゴリーです。ドライ戦争があり、発泡酒、さらには第三のビールと争点を変えながら、競争が繰り広げられてきました。それで変わったのは何か。それはアサヒとキリンのシェアだけで、市場はむしろ縮小してきました。それが現実です。

それこそ、日本企業は、エレクトロニクスの分野のように、過当競争だといわれるぐらい世界市場で競争を繰り広げてきましたが、では、生産性のバロメーターとしての営業利益率が高まったかというと、そうではありません。営業利益率では、サムスンにも差をつけられてしまっています。
競争さえすれば、生産性が高まるのかというと、そうではなく、どのように競争するのかによっても差が出てくるということです。同じ土俵で競争しあっていては、同質化競争といいますが、それはお互いをつぶし合うだけの結果となります。他社とは大きく違うポジショニングやアプローチを変え成功した企業は利益率も高く、最高の競争戦略は競争しないことだと言われるゆえんです。競争のしかたも、いろいろあるということです。

成長戦略にとって、競争を促すこと、競争を取り込むことは極めて重要だけれど、競争さえ促進すれば、産業が成長する、あるいは生産性が高まるというほど単純なものでもありません。

規制緩和が日本の成長戦略にとって大きな鍵となることにも同意します。さらに言えば、規制緩和は、競争だけの問題だけではないからです。
規制緩和などによって、新たなビジネスチャンスを創り出したり、中央集権の非効率を是正し、生産性を高める可能性も生まれてきます。たとえばわかりやすい例として、それが効果的かどうかは別として、カジノの導入を地方に認めれば、そこにレジャー拠点が生まれ、観光産業が活性化する可能性が広がってきます。
しかし、政府が特定の産業に、成長分野として照準を定め、政府がなんらかの施策を打つことがまったく効果がない、意味がない、規制緩和による競争促進しかないといわれると、ほんとうにそうなのだろうかと疑問に感じてしまいます。

1980年代は、日本とドイツが世界市場を席巻し、アメリカや旧共産圏国などの産業に大きな打撃をあたえました。だから、その頃は、アメリカのさまざまな都市で、失業したホームレスの人たちが教会で施される食事に列をなす姿が報道されていたものです。そのアメリカが1990年代に、ITや金融を成長分野としてターゲティングを行い、積極的な育成政策を行ってきました。今でも、IT関連の研究開発プロジェクトに20億ドル以上の国家予算が割り当てられています。それが無意味だったのでしょうか。要はやり方次第だということでしょう。

思い出したことがあります。ある仕事をしていたときに、ロスで開催された音楽配信の協議会に研究目的で参加する機会をつくっていただいたことがありました。
その協議会のパーティで、そこに参加していたベンチャー企業の人たちに、なぜ収入がほとんどないのに、事業を続けることができるのかと尋ねたことがあります。
それは州政府が雇用促進を目的として補助金がでたので資金はある、いまはベンチャーキャピタルが資金を援助してくれているからやっていけると何人かが答えていました。州政府がその分野の起業を促進するための投資を行っていたということです。日本との環境の違いを感じてしまいました。日本でも、政府や自治体が資金を出してくれる事業がありますが、残念ながら、過疎対策事業であったり、農村の活性化事業だったりして、これでは票にはなっても、成長戦略になりません。

さらにアメリカの場合、日本にも外交圧力を加え、日本の市場開放を要求し続けて、金融などの日本市場への参入を促してきています。これも政府の介入です。輸出の促進という点でも政府が行うべきことはあります。日本の外務省の営業力査定なんかやって見ても面白いですね。

政府が、成長分野を定めることは無意味ではないと思います。しかし、現実にはその分野を「いかに」育てるのかという戦略のありかたがのほうが重要です。もちろんそこには、参入と競争を取り組むために規制緩和を行うことも、あらたな規制によって産業の転換をはかることも必要になってくることは自明の理でしょう。ハイブリッドや電気自動車を普及したければ、ガソリン車を規制するか、ハイブリッドや電気自動車に有利な条件整備を行わないと、そちらに市場を誘導することがなければ、コストの高くつくハイブリッド車や電気自動車は売れません。

成長分野に企業活動を誘導し、そこで公正な競争が行われる基準としての法整備を行うのも政府の役割です。排出権取引なども、法整備なしに、民間だけがかってにやれるというものではありません。
さらに投資効果がすぐには見えてこない基礎技術分野などは、民間投資では限界がでてきます。当然、政府が投資を行うということになりますが、それも、目標設定や、開発戦略、また進捗をしっかり吟味しなければ、無駄な投資に終わってしまいますね。

応援クリックよろしくお願いします

人気ブログランキングへ

簡単導入! ネットで利用する営業支援システム
アクションコックピット