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30年以上も前でしょうか、ある大手量販店からの依頼で、アメリカの小売業のPBに関する資料を苦労して翻訳したことがありました。PBが日本で始まってもうかなり年月が経ているのですが、本格的なPB化の波はなかなかこなかったというのが現実です。それだけナショナル・ブランドのブランド力やマーケティング力の壁、さらに流通支配の壁が厚かったということかもしれません。

しかし、この数年、あきらかにPBが伸びてきました。実際にPBを購入した人のアンケート結果などからも、急速に浸透してきていることがわかります。しかし、実際にはどの程度伸びてきたのかという販売データは断片的にしかわからなかったのですが、PB市場に関する富士経済の調査結果を紹介した記事がありました。2009年のPB食品10カテゴリー59品目の市場規模は、対前年比で21.6%伸び、2兆円を超える規模になったそうです。
主役はイオンとセブン&アイHD――2009年PB食品市場は前年比2割増に

ずいぶんPBも売れるようになったと感じる人が多いでしょうが、まだナショナルブランドを含めた全体市場の8.8%ということだそうです。欧米の主要小売業のPB比率が3割から4割程度あることからすると、まだまだ発展途上の過程だということでしょうか。しかし、いずれにしても、PBが成長市場であることは間違いありません。

しかし、まだまだ日本の場合はナショナルブランドのブランド力が高く、PBそのもののブランド力が弱いということもあって、日本型PBは製造する国内トップメーカーの名を前面に打ち出すダブルブランドが多いというのも事実です。

それは日本では、食品分野のナショナル・ブランドのブランド力がそれだけ高いということでしょうが、もっとPB比率が高まり、継続して購入する人や購入する頻度が増えてくれば、状況も変わってくるのだろうと思います。消費者が実際に購入するということで、確実にブランド力が高まってくるわけですから。

ダブルブランドでないと売れないということは、PBのブランド力の問題だけでなく、ただ商品の仕様をマイナーチェンジしたり、パッケージを変えるだけの商品企画力や開発力しか流通側にまだないということかもしれません。ダブルブランドによって、売れるというのはある意味で麻薬みたいなものになってしまう危険性も感じます。

同じPBと言っても、そういった最低販売数量保証などのメーカーとの取引条件によって、オリジナルなブランド化するというのと、製造から販売までの一貫したしくみをつくる、場合によっては原材料の調達までを行ってPBを生み出すというのではかなり違いがあります。利益率で大きく違ってくるということです。衣料品などは、ユニクロにしても、H&Mにしても、あるいは、国内のアパレルメーカーのSPAのビジネス・モデルにしても、どちらかというと後者のほうです。雑貨の無印良品も後者です。

さて、シェアというと、一般には販売シェアを指します。それはブランドとブランドでどれだけ市場を押さえるかという横の関係のシェアだとすると、その市場での利益配分がどうなっているかという縦のシェア(市場サープラス)という物差しがありますが、どちらかというとビジネス・モデルの革新、とくにPBというと、この縦のシェア関係が重要になってきています。

ビジネス・モデルの革新によって、生産から販売の一貫したしくみをつくり、縦のシェアを上げていくと、安く売っても高い利益を生みだすことが可能になってきます。ユニクロやニトリがその典型的な例かもしれません。取引条件によるPBでは、その縦のシェアを高めていくことには限界がでてきてしまいます。まだまだ非合理的な、効率の悪いプロセスがどうしても残ってしまうからです。

こういったビジネスの縦の関係の統合や効率化、縦のシェアを上げていくという視点は、おそらく流通業だけの問題ではないと思います。製造業もサプライチェーンマネジメントによって、原材料や部品の調達は合理化してきたのかもしれませんが、まだ調達の範囲を超えていないように感じます。

そういった縦のシェアの視点から生まれてくる革新は、もうすこし時間を要するのかもしれません。しかし、それは残念ながら、生産性が低く、利益率も低い日本の産業が活性化するための大きなテーマのひとつであることは違いありません。

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