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農水省が、これからの卸売市場のあり方を検討するために「卸売市場の将来方向に関する研究会」をスタートさせています。いったいなにを目的としてマーケットに関わろうとしているのでしょうか。

その背景には、卸売り市場を通さない取引が増え、卸売り市場の役割が低下し、地方によっては経営も厳しくなってきているということがあります。

赤松農相は、「イオンだってもうかっていない。何でも産直がいいというのは間違いだ」と増えてきた産地直送を問題視しているようですが、イオンがもうかっていないのは、もっと違うところにあり、問題のすり替えではないでしょうか。

産地直送というか、生産者とスーパーなどの小売りや外食チェーンなどの企業が、卸売市場を通さずにダイレクトにつながり、いわゆる場外取引が伸び、農協も通さない取引が増えてきたことには必然性があります。

卸売り市場での取引は、セリを行い、需給のバランスによって、価格が調整されるしくみであり、経済の教科書みたいなものですが、実は生産者が大きなリスクを背負ってしまうしくみにもなります。

豊作であれば、価格が暴落し、しかも過剰収穫分を生産者は廃棄せざるをえなくなってしまいます。生産にかけた費用も回収できず、またかけた労力も水の泡です。大量の牛乳や白菜を空しく廃棄するシーンをご記憶の方も多いのではないでしょうか。
またせっかく生産しても、味は変わらないのに、わずかな傷があっても、またカタチが悪いと商品価値が著しく低下し、卸売市場では売れません。売れても二束三文で、生産者側は損失となります。

農家が生産する前から、販売側、あるいは消費側に作物を引き取ってもらう契約を行えば、販売側は不作の際のリスクを負いますが、安く仕入れることができるだけでなく、生産者はそういったリスクを防ぐことができます。価格は、卸売市場のセリで決まるのではなく、販売業者の値付けになるのですが、実際は、販売業者間での市場の競争で決まってきます。

流通側、消費者側のメリットとしては、低農薬や有機栽培などの条件を指定でき、望む品質を保つことも可能になってきます。しかも、店頭で売れないカタチや色の悪いものも、カット野菜のように加工したり、サンドイッチや総菜などの材料として利用することで商品として利用できます。実はこれが生鮮食品の販売価格を下げ、安定させるためには大きいのです。
卸売市場などの中間流通を省き、引き取ったものは、加工も含めてすべて商品化するというのは合理性が高く、そういった産地直結型の流通が伸びてくるのはある意味で当然のことです。

農家が、朝市や道の駅などで直接販売するという店も人気がでてきていますが、それでは、都市部の消費をまかなうには無理があり、やはり生産者と販売力のある販売者、消費量の多い消費側が直結して流通させるしくみは時代の要請ともいえるのではないかということです。
さらに進めば、流通や外食チェーンが農業生産まで行うということになりますが、まだまだブランドイメージアップのために、小規模でやっている程度だというのが実態ではないでしょうか。

卸売り市場は、零細な飲食店や小売店が残っている限りなくなることはありません。そういった需給を調整し、供給を確保するためには必要でしょう。しかし、流通側がチェーン化し、産業化してくると、わざわざ卸売市場を通す意味合いはなくなってしまいます。

農水省は、あるいは赤松農相の卸売市場強化の動きは、そういった時代の自然な流れに政治が介入するということでしょうか。そういった流通の合理化の妨げになる強化案であれば、農業の産業化や高度化を疎外しかねません。卸売市場の将来方向も結構ですが、もっと広い観点で、農業の産業化を考えないと消費者はいつまでも高価格な食品をかわされ続けるということになってしまいそうです。

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