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素朴に考えましょう。まずは日本郵政の「官から民」という意図はどこにあったかです。
ひとつは、経営の効率化の問題でしょう。お役所仕事じゃなく、自立して一人歩きできるようにしましょう。経営が行き詰まり、赤字が膨らんで、税金を投入し続けるような事態は避けたいということです。民営化して経営を効率化できれば、逆に法人税も入り、一挙両得だということですね。これは正論でしょうね。
で、西川さんは成果を上げた、利益も出したというとですが、日本郵政発足前に損失をしているので、まだ本当に西川さんの経営成果がでたと判断するには早すぎるようにも感じます。

次に、郵貯、かん保の300兆円にも登る巨額な資金が、ほとんんどが国債が中心の公債での運用されています。それをもっと有効に活用しようということでした。
しかし、実際には郵貯もかんぽも貸出審査のノウハウも、人材もなく、西川体制でもそれは進展したということは聞かれません。せっかく財界の方々が数多く経営陣にはいっていたにもかかわらず、そういった大企業が郵貯、かんぽから貸出を受けたという話もなかったのではいかと思います。では、本当にこの300兆円を民間に貸し出す、運用先を変えることができるのでしょうか。

これは金融の専門家に聞きたいところですが、国内で資金需要が大きく伸びる状況ではありません。資金需要は大企業よりも中小零細企業の運転資金に移ってきており、それは極めてリスクの高い貸出となってしまいます。政府保証でもつかない限り不良債権を大量に抱えることになってしまいます。

国内で運用するのが困難なら、ではその資金はどこに持って行くのでしょうか。郵貯、かんぽを日本郵政から引きはがし、株を売却すれば、少ない投資で300兆円を手に入れることができるのですが、そうなると、普通に考えれば、0.8%という低利の公債を保有するのは効率が悪く、公債から違うところ、海外つまりに運用を切り替えるのじゃないでしょうか。
その時に国債金利はどうなってくのでしょうか。現在国家予算のうち、国債の償還や利息支払いで20兆円ぐらいありますが、金利があがれば、下手をすると国家経営が破綻しそうな気配です。

第三点目は、竹中さんが強調されていたことですが、「官から民」に移行すれば、そんどん新しい事業が生まれてくるということでした。
竹中さんが得意そうに語っていらっしゃったけれど、一番驚いたのはこの超楽観主義でした。実際のビジネス社会で、民間企業だからといって、どんどん新しい事業を生み出し、成功している企業ってそう多くはありません。そこには厳しい競争もあります。ある日突然コンビニをやって成功するのかということですね。常識的に考えれば甘いのじゃないでしょうか。

日本郵政の民営化で疑問に感じたのは、「かんぽの宿」の売却問題でした。入札のプロセスが不透明であったという以前に、なぜ現状の雇用を維持し、人を削らないという制約条件で売却を行うことを「政治」側でつくってしまったのかです。
さらに、なぜ買い手がつきにくい「一括売却」というやり方だったのかです。株式売却の時期からゆとりがないということだったのでしょうか、それでは本末転倒です。

かんぽの宿で結構利用があることろでも赤字化してきたひとつの原因は、現場で役に立たない余計な人を高給で抱えていたからではないでしょうか。普通なら、人員削減や効率化を行い、資産価値を上げて売却するのが合理的な進め方だと思いますが、わざわざ二束三文でしか売れないようにして、それで入札するということは裏になにか意図があったとしか解釈できません。

「民から官への逆行」だと批判するのは受けがよいでしょう。確かにそういう印象を拭えない人事です。しかし「官から民」への国民の期待はどこにあったのかは未だによくわかりません。おそらく見る立場によって違ったのではいかということです。

今回の人事は、国会で野党が与党を攻撃する格好の材料となることは必至です。ただ「官から民」ということがどのような意味を持っているのかという意味を明らかにしていく議論でなければ、あまり有意義だとは思えないし、西川体制でなにが成果であったのか、またどのような問題を抱えたのかの総括も含んだものでなければ、国民の関心の的にはならないように感じます。国民の関心はもっと切実な問題に移ってしまっているのではないでしょうか。
そうだとすれば、専門家やインテリ層、またマスコミでは議論が沸いたとしても、新政権が崩壊するほどのダメージとはならないでしょうね。
自民党の心ある議員の方にお願いしたいのは、政府批判も結構ですが、当面大きな政局は生まれそうにないので、ぜひ郵政民営化も含め、腰を落ち着け、民主党とは違う問題解決の切り口で、質の高い議論を展開していただくことです。それが自民党再生への早道であり、王道ではないでしょうか。今回の日本郵政の問題は、与党というよりは野党自民党が、新しい野党の姿を見せ、評価をえるための試金石となると思います。

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