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えっ!と思う記事がありました。執筆されている人は、マーケティングのお仕事をされている方のようですが、好意的に考えれば、記事になんらかのインパクトをつけたかった、つまり釣りたかったのか、無印良品の強味は、“ブランド”ではなく“雰囲気”だそうです。思わず釣られて最後まで読みましたから一本やられたということでしょうか。ただ、ブランドについて考えるいい材料になると思うので、ご本人には悪いのですが、取り上げてみました。
郷好文の“うふふ”マーケティング:“ブランド”ではなく“雰囲気”――無印良品の強みとは

しかし、変ですね。”雰囲気”も”ブランド”の大切な個性のひとつです。ブランドのコンセプトをお客さまが端的に語ることができるとは限りません。いや語れるとしたら、それはプロの方です。ブランドの個性や価値は、なんとなくこんな感じという言葉、自分にとってどうだという言葉、さらに”イメージ”や”雰囲気”でブランドを感じ取っているのが普通です。”ブランド”ではなく”雰囲気”だと言われてしまうと、ではブランドってなにかのと問いたくなりますね。

またブランドは、そこで働く人たちにとって、商品開発にしても、店舗づくりにしても、広告や販促活動にしても、その考え方、さまざまな判断の基準や尺度になってきます。
そのコアになるのが、自らがなにものか、なにを目指しているのかというブランド・アイデンティティですが、その芯となる考え方は言葉にできたとしても、実際はもっと複雑です。
たとえば、ご自身について、いったい自分自身はなになのかを考えて見てください。そうそう簡単に割り切れるものではないですね。ブランドも大人になってくると同じことです。
現場は、そういったアイデンティティも普段は、”イメージ”や”雰囲気”でとらえていることが普通です。それを暗黙知とも言うのですが、だから、きっと無印良品らしくない商品がでてきたら、現場では「これ、なんとなく”雰囲気”が違うよね」とか、「なにかコンセプトが無印らしくないよね」ということで修正されていくことがほとんどでしょう。それがブランドの隠された力ともいえるのです。

「無印良品」は、ブランドのコンセプトや性格が明確でしっかり”雰囲気”まで表現されているということが強みですが、しかし、どのような企業やブランドも弱みもあります。それが市場のなかでどちらが効いてくるのかは、消費や市場のトレンドによって大きく左右されてきます。追い風が吹けば、強味がさらに強味となってきます。逆風が吹くと、弱みがどんどん足を引っ張りはじめます。
強味があるから、その企業やブランドが、今、強いとは限りませんね。無印良品にも弱みはあります。とくに現在の消費・市場トレンドからいうと、価格競争力が弱いというのは厳しいですね。
しかし、そういった点はまったく無視で、無印っていいよな、僕大好き、実はファンなんですと言っているだけですから、ほんとうにマーケティングの仕事をしている方なのかちょっと疑問に感じます。

9月16日に株式会社良品計画は、業績の下方修正を発表しています。そこにはこう書かれています。
(略)新生活需要に向けた販売プロモーションの強化、主力商品の価格見直しを実施し売上の獲得に努めてまいりましたが、価格競争の激化や従来の手法による販売促進活動の不振など既存店舗を中心に厳しい業績推移となりました。(略)
そう、良品計画さんは、一時期の不振をさまざまな経営努力によって驚異的にV字回復を果たされたのですが、今年になって、今は、不況による消費不振、また価格競争の激化という新たな逆風にさらされ、まだ予断は許さないとしても、V字回復の勢いにブレーキがかかりはじめてきたということです。
、”無印良品”って”雰囲気”がいいんだよね、ブランドを超えているよね、俺大好きというノーテンキな話は、それなになのよと思ってしまいます。

良品計画さんがV字回復された経営努力について、参考になると思いますので、記事リンクと関連書籍を掲載しておきますね。
驚異的なV字回復を果たした無印良品の秘密
驚異的なV字回復を果たした無印良品の秘密【続編】

無印良品の「改革」―なぜ無印良品は蘇ったのか無印良品の「改革」―なぜ無印良品は蘇ったのか
著者:渡辺 米英
販売元:商業界
発売日:2006-11
おすすめ度:4.0
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ブランドは、さまざまな企業努力の結果として、消費者の人たちの心のなかに集積されたものです。個々の商品や店舗の”デザイン”や”雰囲気”は真似はできても、それが全体として統合され、お客さまのハートに刻み込まれたブランド化されると、それはそう簡単に真似できるものではありません。

しかし、ブランド力があっても、それは過去の企業活動によって蓄積されてきたものであり、本質的なところで競争力を失うとどんどんそのパワーが落ちてきます。アパレルならGAPがそういう状態に陥ってきました。
しかも品質、価格、デザインの総合で競争力を保つためには、製造から販売にいたる強い「しくみ」が必要ですが、きっと良品計画さんも、そんな「しくみ」をどうに強化していくのかが重要な課題であることぐらいは、痛いほどわかっていらっしゃるはずです。
日本の市場は、ブランドが好きなのですが、強いブランドを築くこと、つまりブランディングについては、残念ながら、必ずしも一般的には重視されてこなかったために、さまざまな誤解や混乱もあるように感じます。今回取り上げた記事もそういう状況を象徴しているように感じます。

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