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2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書 708)2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書 708)
著者:佐々木 俊尚
販売元:文藝春秋
発売日:2009-07
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文藝春秋様、献本ありがとうございました。センセーショナルなタイトルですが、2011年がどうかは別として、決して途方もない話でありません。
著者の佐々木さんは、現在はフリージャナリストですが、もともとは毎日新聞の記者畑ご出身の方です。だから後書きを読むと、記者の人たちの多くが、いかに新聞を愛しているか、またスクープと紙面の扱いを巡って、大声で怒鳴り合い、喧嘩しあったり、記事を書くことに情熱を傾けているかが伝わってきます。
新聞社には、ただぶら下がりで落ちてくる記事だけを垂れ流している記者だけではないということが伝わってきます。そんな佐々木さんがマスメディアのビジネスの崩壊と終焉について書くというのは門外漢の私たちとは比べものにならない特別な思いがきっとあるのだと思います。

さて、佐々木さんが書いておられるように、アメリカでは2008年に多くの新聞が倒れ『新聞消滅元年』の様相を呈してきました。そして、あのニューヨークタイムズですら、資金難となり、メキシコの大富豪から資金を調達したり、さらに建ったばかりの自社ビルの一部を身売りして凌いでいる状態です。
先週のテレビで、おそらく「ロッキー・マウンテン・ニュース」のことだと思いますが、ピューリッツアー賞も幾度か受賞しているデンバーの伝統ある地方紙が幕を閉じ、なんとしても復活させたいと願う記者やメンバーが、ネットの新聞として再スタートしようと購読者を募集した顛末を特集していました。しかし経営が成り立つ読者数を遙かに下回る申し込みしかなかく惨憺たる結果となったことを報道していました。それが新聞社を取り巻く厳しい現実です。

そして、佐々木さんは、これまでアメリカのメディアで起こったことはつねに3年後に日本でも起きてきており、日本では2011年から新聞社破綻の嵐が吹き始めると大胆に予測しています。

重要なことは、新聞にしても、テレビにしても、金融不況が原因で広告が減少したために、経営が揺らぎはじめているということではないということです。そもそもが「マス市場」というものがなくなってしまったにもかかわらず、おそろしいほど自らのマーケティングを行わず、ひたすら「マス」という幻影を追い続けてきたこと、さらに、新聞社の記者と読者の高齢化やテレビの番組制作が、下請けからのとんでもない搾取でなりたっているといったいびつな構造となってしまっていることなどの問題もありますが、そよれりも新聞やテレビのビジネス・モデルそのものの根底が揺らぎはじめてきていることが掘りさげられています。
そして、メディアのビジネス・モデルを、コンテンツ(記事やテレビ番組)、コンテナ(新聞紙面、テレビ)、コンテナ(新聞販売店、電波)という3つのレイヤーで一貫して考察しているところが分かりやすいと思います。
たとえば、新聞は、ネットでニュースを見る人が年々、また若い世代ほど増加してきていますが、ほとんどの人たちが見るのは、各社のニュースが集積しているYahooやGoogle(ニュース・アグリゲーター)であり、コンテナは各社の紙面からポータルサイトに移ってきてしまっています。コンベアも販売店から、インターネットに移行してきているわけで、新聞社の主導権も薄れ、新聞社が稼げるしくみも崩れてきています。かといってネットから引き上げることもできないというジレンマに陥ってしまっているのです。

読売、朝日、日経の共同ニュースサイト「あらたにす」で、各紙の社説、一面、社会面という紙面構成へのこだわりを見せていますが、そんなことを気にする読者は少ないというか、そもそも「あらたにす」を見る人は極めて少数ではないかと思います。

この本は、マスコミの今後に関して関心のある人だけでなく、経営やマーケティングに関心のある人にも、ビジネス・モデルのケーススタディとしてぜひお読みになることをお奨めします。
なぜなら、程度の差こそあれ、多くの業界で、これまでのビジネス・モデルも、現実を直視すれば揺らぎはじめていると思えるからです。その現実から「目と耳をふさいで、背を丸め、地面を這いつくばって嵐が通り過ぎるのをひたすらじっと待っている」というのはマスメディアや広告関係者の話だけではないのではないでしょうか。

さて新聞やテレビはどうなっていくのでしょうか。巨大なビルに居を構える新聞社もテレビ局もおそらく消えるでしょう。しかしコンテンツそのものへの社会的ニ−ズが消えるわけではありません。いくらブログが充実してきたといっても、プロが取材した情報が必要であることはいうまでもありません。さて、佐々木さんの考える新聞やテレビの将来方向が気になりますが、それはぜひ本書にてどうぞ。


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