洋菓子の経営学―「神戸スウィーツ」に学ぶ地場産業育成の戦略
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暖簾とブランドは違うという人がいます。しかし、ブランドがお客さまの製品やサービス、また企業に対するお客さまの心の奥に潜んでいる感情だとすると、暖簾もブランドも本質に違いはありません。
その違いは、手工業の時代、まだマスコミがなかった時代と、工業生産とマスコミが登場し、さらに情報革命が起こった時代背景の差だといえます。
ブランドは大量生産と大量販売、そして拡大再生産を狙ったマスマーケティングや経営で支えられ、暖簾は時を超え世代が変わっても継続する経営の思想やしくみでなりたっている、だから違うという発想もわからないではないですが、人びとのニーズが多様化し、また高度化するにつれ、より本物が欲しい、また商品やサービスの背景にある物語り性が求められてくると、教科書的なマスマーケティングの考え方では解決しない問題もでてきています。
さて「神戸スイーツ」は典型的な地域ブランドです。今や全国ブランドともなり、この時代にあっても人気が衰えません。神戸では、神戸に訪れる観光客のために並ばなくとも買えるタクシー・ツアーまであるほどです。
以前、大丸と神戸新聞社、さらにGOOのコラボレーションで「神戸スイーツ・フェスタ」のブログを活用したマーケティングが行われたことがありました。
『洋菓子の経営学』は、「神戸スイーツ」がなぜ全国ブランドまでなりえたかの秘密を丹念なリサーチを行ってまとめられた一冊です。独立を目指す人でなければ雇わないということ、コンテストにどんどん参加させ、腕を磨かせるとともに、職人さんのブランド化をはかる、さらに独立は援助しても、お互い競合関係にならないようにしている点などは、老舗の職人を育てるしくみ、また暖簾分けに近い発想です。しかも、独立するときは、同じ菓子をつくらないという暗黙のルールがあり、新しい発想の菓子づくりが求められます。
この本を読むと、ブランド価値を支える暖簾経営という伝統とイノベーションを両立させるという新しい経営のありかたも見えてきます。
そうやって「神戸スイーツ」は、多くのブランド化されたパティスリーが地域に集積し共存する関係を保ち、東京にもまねのできない厚みとバリエーションを生んできました。全国の地場産業の活性化を考えている人たち、また新しいブランド経営のありかたを考える人たちに必読の一冊だと思います。
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