新しいMACBOOKが発表され、話題を呼び、ネットでは記事が毎日のように記事が更新されています。その記事数は、GOOGOLEのニュース検索で見ると一週間で750件を超えています。さらにテクノラティでも、ブログの人気キーワード第二位となっており、MACBOOKを含んだブログが急増しています。
確かにネットに流れている写真を見る限り、薄くスタイリッシュに仕上がっていて好感が持てますが、しかし、個人的には、すでにノートPCが、なくてはならない道具とはいえ、特にPCそのものに対して期待するところが、電池の持ちと、OSの立ち上がりの速さぐらいで、その他はほとんどなく、コモディティ的な存在となってしまっているので、MACBOOKそのものに対する関心は沸いてきません。
それによくよく見てみると、人によっては違うかも知れませんが個人的にはさほど感動する技術イノベーションも感じません。トラッキングエリアが拡大したタッチパッドの搭載で、ジェスチャーによって操作するというのも、功罪があるということでしょう。
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それよりは、アップル、というよりもスティーブ・ジョブスのマーケティング戦略の巧みさに惹きつけられます。
iPodとiPhoneで切り開いた高いブランド・イメージ効果で、これまでグラフィック関連市場や教育関連市場のニッチな分野で生き延びてきたアップルのPCが、PCにこだわりを持つユーザーにも少しずつ裾野を広げてきたわけですが、XPやVISTAも使えるので、WINDOWSのPCからのブランドスイッチのリスクも小さく、今回の新しいMACBOOKはさらにファンを広げることは間違いないと思えます。ブランドがいかに重要かの新しいモデルケースにもなりそうです。
さらにスティーブ・ジョブスは、情報を小出しにしながら、コントロールし、巧にメディアやオピニオン・リーダーを引き寄せ、期待感を増幅させ発表にもって行きます。そしてスティーブ・ジョブス自らがプレゼンテーションを行います。これほど見事な演出がかつてあったでしょうか。
iPhoneは、独特の携帯文化ができあがっている日本での反応はいまひとつとしても、グローバルな市場では独特のポジションを固め、実際の販売数量以上の存在感をつくりました。
おそらく、それからこのMACBOOKも、ノートPCユーザーのメインを押さえるところまでいかず、シェアを伸ばす程度でしょうが、それ以上に実態以上のブランド
の存在感をさらに広げることになると思います。
個々の技術イノベーションや広告・プロモーションといったマーケティング手段ではなく、マーケティングを統合して、新しい世界をプロデュースするリーダーシップは、いま求められているマーケティングのあり方を象徴しているように感じますが、比較的ボトムアップ型のマーケティングを行っている日本のマーケティングがそういったマーケティングを実現できるかどうか。もっと異なるマーケティングスタイルを創造できるのかにどうしても関心は向かっていきます。
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よく考えてみてほしい。DELLやNECがああいうものを作るだろうか?多分、作れない。彼らが作るのは単純に部品を組み合わせてできる事であり、Appleのそれではない。
iPodだってそうだ。MP3プレイヤーなんて、当時、吐いて捨てるほどあった、でも、アップルがトップになったのは、技術的な違いではなく、技術の使い方に大きな違いがあったのだ。ソフトとハードとサービスとビジネス、これを巧みに組み合わせている。そういう意味ではジョブスはマーケティングだけでなくプロデューサーとしても優れている。
彼のマーケティングが光るのももちろんだが、その裏にある新しい文化の創造、それなしにAppleの成功はあり得ない。iPodが単にデザインが綺麗なだけのMP3プレイヤーだったら、これほどのヒットにはならなかっただろう。私から見れば、そこの所が重要なのだと思う。よく技術が好きな人は、技術の目で捉え、それ以外の事を軽視しがちだ。だが、世の中に認められるのは技術ではなく、その技術によって自分達の生活がどう変わるか提案できたものが勝利している。それはWiiを見ればよく分かる。
Wiiに対してPlayStation3が売れないのは、ただ単に高いだけではなく、新しい視点がないからだ。(要するに古いのだ)この新しい視点こそ重要なのだ。そこをマーケティングで実体以上に大きく見せているというのは違う。その裏にある新しい提案があるからこそ、目立つのだ。