新聞紙面が金融問題と政局で埋め尽くされ、記事としては小さくなってしまいましたが、今日から正式に「松下電器産業株式会社」が、「パナソニック株式会社」に社名変更されます。
ブランド戦略がマーケティングのもっとも重要な課題とまでいわれる時代です。そのブランド戦略ということでは、ブランドの認知を広め、イメージをつくるというコミュニケーションの領域では、広告効果がどんどん落ちる傾向にあり、パブリシティの重要性が高まってきています。これは、iPhoneや、H&Mなどが新聞紙面、テレビのニュースを占拠し、人びとの目を釘付けにしたことで目の当たりにしました。
世界市場でブランド価値を高めていくうえで、ブランドと社名が異なることは極めて不利であり、パナソニックへの思い切った社名変更も当然の流れでしょうが、なにかもっと大きな時代の変化を象徴しているように感じます。社名の変更によって経営の流れも変わってくるのでしょうが、日本の製造業の変化すべき方向のお手本となって欲しいと言うのが正直なところです。
この社名変更によって、ブランドも「パナソニック」に統合され、「ナショナル」ブランドが姿を消します。
創業者松下幸之助は、産業の使命を「貧乏の克服」だとし、生産に次ぐ生産で、「物資を安価無尽蔵たらしめ、楽土を建設すること」だと工業化社会の本質を見事に語りました。
安い水道の水を通行人が飲んでもとがめられません。それは水道水が安いからであり、便利な、生活を豊かにする家電製品を誰もが水道水のように手に入れるようにすることを目指すというのが「水道哲学」で、「ナショナル」のブランドはその象徴ともいえる存在でした。
その「ナショナル」のかつてのCMも、「水道哲学」が目指し、生産力をあげていくことで価格を下げ、どんどん普及させていく時代、そこに人びとが明るい将来を見いだしていた時代を象徴していました。
明るいナショナル
明るいナショナル
ラジオ・テレビ、なんでもナショナル
しかし、工業化社会が進展することで、供給力が需要を大きく上回り、モノが溢れる時代となりました。「水道哲学」で語られた社会的使命は、すくなくとも先進国ではもはや終わっています。
そして産業もモノではなく、情報や通信が主役となり、人びとの関心も、モノの所有ではなく、どんな新しい体験ができるかに移ってきただけでなく、消費の舞台も家庭からモバイル空間へと広がってきました。
競争の舞台も世界に広がり、日本はデジタル家電で、品質と価格、さらに技術イノベーションによって世界市場を席巻してきたわけですが、そんな勝利の方程式ももう通用しない時代となってきています。日本の企業のように自前で開発するのではなく、優れたモジュールを他社から調達し、それぞれの市場に柔軟にあわせて圧倒的なスピードと品種で製品を投入してくるサムスンやLG電子の台頭に苦戦を強いられてきているというのが現実でしょう。
海外では、アメリカからヨーロッパや中国にマーケティングの重点を移し、中国から工場を日本に戻すなどの動きを行ってきたパナソニックですが、「松下電器」として、家電業界をリードしてきた同社が、社名変更でどのように経営の舵を切っていくのか、世界のパナソニックとしてのポジションをどのように築いていくのかに注目したいところです。
社名変更を機に冷蔵庫などのいわゆる白モノ家電も、北米などにも投入し、国際市場での事業を強化しようという動きも当然と言えば当然かも知れませんね。
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