NECが、「プラスチックなど原材料価格の高騰で、増加したコストの価格転嫁を考えざるを得ない」と出荷価格値上げを検討しているということですが、競争が激しく、価格下落が止まらないこの業界で果たして値上げができるかどうかは疑問というか、パソコンの平均単価は昨年7月の13万1000円から、今年7月の11万5000円まで1割以上も下がったという状況のなかでは、かなり難しいのではないでしょうか。販売台数でみても、すでに東芝に抜かれ、かつての面影もないNECに価格のリーダーシップを取る実力はないと考える方が自然でしょう。
NECのPC「値上げ」広がる波紋 材料高と低価格化、メーカー「板挟み」


なかには、PCの値上がりが、サーバーも含めたIT機器の値上がりに広がると、インターネット企業の設備のコスト増にもつながり、インターネット企業も危機を迎えるかも知れないと心配される人もいらしゃるようですが、ちょっと想像力を働かせすぎじゃないでしょうか。実際にはそうはなりません。
インターネット企業が危機的状況になるかもしれない


いくら原材料価格が上がったところで、まだまだ半導体、またハードディスクなどの性能あたりのコストは「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」というムーアの法則にどんどん下がってきており、そちらのほうの影響のほうが遙かに大きいというのが現実でしょう。つまり、10%値上げがあったとしても、たとえばハードディスクの容量あたりの価格が半分になればなんら問題とならないことは容易に想像いただけるものと思います。

それよりは、かなり以前のこととなりますが、『競争優位の戦略』で知られるハーバード大学経営大学院教授マイケル・ポーター氏が、来日した際の講演で次のように日本のメーカーに対して「狭義の競争から抜け切れていない」と忠告していたことを思い出します。
狭義の競争とは,業務効率を上げる競争を指す。ベストプラクティスを自分のものとし,取り込み,そして洗練させるという業務効率の向上は,必要条件ではあるが,それだけでは十分ではない。デルコンピュータのROI(投資収益率)に逆立ちしてもかなわない。競争戦略で劣るからだ。
マイケル・ポーター氏,「日本メーカーの競争戦略に問題あり」

実際、パナソニックがモバイルPCに集中特化を行った以外は、大手メーカーでは、PC業界は製品での差別化しか行ってこなかったし、結局は「同等ならより安く」「同じ価格なら少しでもいいものを」というガチンコ勝負の競争戦略から抜け出せなかったのではないかと思えます。ガチンコ勝負の競争で、結局は価格競争の罠に陥り、きわめて低い利益しかだせないところに原材料価格の高騰という悩ましい事態が訪れたということでしょう。
PC事業で営業利益を2%程度しか稼ぎ出せないNECと比べ、低価格でPCを売っているHPのほうが逆に営業利益を10%程度も出していることを考えても根本的な発想の転換が必要だと言うことでしょう。
ヒューレット・パッカード社 2008年度第2四半期報告

しかも、原材料価格高騰の問題だけではなく、構造的な問題も抱えています。PCメーカーよりも今後はさらに、インテルなどのPCの心臓部としてのCPUメーカーやASUSなどのPCの脊髄や骨格としてのマザーボード・メーカーの主導権が高まると思えるだけに、日本のPCメーカーは川上と川下のサンドイッチ状態はさらに厳しくなってくるだろうということです。こんな不毛で地獄のような競争から脱落するメーカーがでてきてもおかしくないということじゃないでしょうか。

追記:やはりこういう結果となりました。しかたないでしょうね。
NEC、ノートPC秋冬6モデル 原料高転嫁も実売価格抑える

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