「みんなの知識」をビジネスにする


ブログやSNS、Wikipediaなどは、集合知の世界です。みんなが自由に書いたり、コンテンツを作る世界がインターネットによって飛躍的に広がり、その場やメディアを提供するビジネスも生まれ成長してきたことはいうまでもありません。
インターネットでみんながコンテンツを生みだし、拡散し、集約され、検索され、また拡散していくダイナミズムは、小さな井戸端の世界でもあったのかもしれませんが、誰もがそれを覗き、また参加していくことができるというダイナミズムはかつてはなかったことです。
【「みんなの知識」をビジネスにする - クラウドソーシングの可能性】を献本していただきましたが、そんな「みんなの知識」をものやサービスをつくる企業活動とつなげるビジネスの可能性をさまざまな専門家のひとたちとの対話を通して探ろうという試みで、オウケイウエイブ代表取締役社長の兼元兼任さんと、ジャーナリストの佐々木俊尚さんの共著で書かれた本でした。
企業活動と「みんなの知識」をつながるということは、もちろんアマゾンの誰もが書評を書けるリコメンデーションがアマゾンの魅力となったり、オウケイウエイブのQ&Aがあり、またブログを活用した口コミマーケティングがありますが、企業活動の中心軸ともいえるものやサービスの開発にダイレクトにつないでいくというのは決して簡単なことではありません。
それを担ってきたのが、リサーチですが、この本で書かれているように拡散した知識をどのように集約するかというテーマには、知識と知恵は違う、知識を知恵にしていくための壁をどう乗り越えるのかという問題が潜んでいます。
長年リサーチをやっているとただリサーチの技術やしくみだけでなく、リサーチャーやリサーチに参加する開発者の感性や知識を知恵に昇華していく能力が一番大事なんだということを痛感させられます。リサ-チにとっては、どれだけたくさんの「みんなの知識」を集めることができるかだけでなく、「みんなの知識」のなかから埋もれている宝石のような一言をどう掬い上げることができるかという能力も重要なのです。

さて、知識と知恵という言葉を使い分けましたが、知識と知恵の違いを簡単に言ってしまえば、知識は「これはこうだ」ということですが、知恵は「これはこうだからこうすればいい」ということです。「こうすればいい」という解決のアイデアが知恵に中にはあります。そんな知恵を考えつくためには、インターネットの世界にも存在しないその企業の持っている技術やマーケティングの力や性格などの内部に関する知識と結びつかなければこうすれば、「こうすればいい」という知恵にはなりません。
「みんなの知識」で自動的に「知恵」が生まれてくるわけではなく、開発に携わる誰かが「みんなの知識」を取捨選択し、集約し、知恵へと昇華させないと、それこそものになってこないわけです。
しかし、そういいつつも企業活動に消費者が参加していくというプロシューマの流れは、ガソリンスタンドがセルフになるということも含めあるわけで、どのようにすれば供給側と消費者がつながり互いに利益的かというテーマとして「みんなの知恵」もあることは事実だと思います。
この本のなかで、佐々木さんがGoogleのImageLabelerに触れていらっしゃいました。
以前ご紹介しましたが、出てくる画像にキーワードをどんどん書き込んでいくと、インターネットの向こう側で見えない相手がやはり同じことをやっていて、キーワードが一致すると得点になるとおいうものです。
見事に画像のタグ付けを「みんなも知識」でやってのけており、まさに「みんなの知恵」を借りるというクラウドソーシングそのものでした。
遊んでもらって言葉を集める Google Image Labeler

「みんなの知識」をビジネスにしていくチャンスはまだまだ生まれてくるのでしょうが、まずは企業活動の周辺から考えるか、企業内の「みんなの知識」を交換する場をどうつくるかというほうが至近距離にあるのかなと思いますね。

バナー←お気づきの方はこちらの応援クリックお願いいたします