船場吉兆が再開しました。いったん傷ついたのれん、つまりブランドの信頼を回復するのは並大抵ではありませんが、船場吉兆に限らず、昨年ほど、のれんブランドが揺らいだことはかつてなかったことだと思います。
こういった事態は、もちろん、2004年から施行された「公益通報者保護法」の影響もあるとしても、もっと本質的な問題があったのではないでしょうか。
結局は、この船場吉兆にしても、不二家も、北海道のミートホープも、また「白い恋人」の石屋製菓も、赤福も、自らがどのような会社であり、どのような考え方や振る舞いを消費者から暗黙のうちに期待されており、また守り通さなければならいかということよりも、売り上げの拡大や効率化をはかったことが、経営にさまざまな矛盾を生み、信頼を失墜する問題が発覚したということに共通点がありました。
またさまざまな不祥事が起こったことで、ブランドがいかに購買に影響しているのか、またブランドは、単なるマークやネーミング、また広告などよりも、実際の経営そのものといかに密接に関係していることを感じた人も多かったものと思います。

中小企業ブランドがパワーを持つ時代
しかし冷静になって世の中を見渡してみると、小さな会社、場合によっては個人の新しい個性のあるブランドがどんどんパワーを持ち始めています。嗜好品の世界を思い起こしてみてください。小さいけれど美味しいと評判のパティシエの店に人が並ぶ姿は珍しくなくなりました。かつての老舗ブランドではなく、どちらかというと新興のクラブハリエのバウムクーヘンも売り場には人が並んでいます。
コンビニもデザートなどで個性的な小さなブランドとのコラボレーションを積極的に展開し、清涼飲料でもサントリーやコカコーラといったビッグブランドが、お茶は福寿園や上林春松本店とコラボレーション、ついに携帯でもN705iではドコモがamadanaとのコラボレーションを行なっています。
小さなブランドがパワーを持ってきているのは、一言でいうなら需要が量から質へ向かってきたからですが、ターゲットや焦点を絞って、より本物を提供するビジネスに社会のニーズが移ったことを示しています。

ブランディングは経営戦略そのもの
ブランディングは、経営そのもの、また開発やマーケティングという実際の企業活動とビジネスモデル、さらにコミュニケーションの3つのレイヤーで考えないとうまくいかないことを以前に書きました。それらを貫く軸は、会社がどうありたいか、どうあれば社会にかけがえのない存在となるのかという経営の思想と企業のアイデンティティです。つまりブランディングを考えると言うことは、マークやデザインを考えることだけではないということです。

インターネットが武器になる
もちろんいかに立派な考えを持ち、事業を磨いていっても、それが受け手、つまり潜在的なお客さまの心に響かないと事業は伸びません。そこで経営や事業の「見える化」をはかるということになりますが、かつては、コミュニケーションやプロモーションはマス広告が決め手となりました。しかし今日は、時代状況が大きく異なり、インターネットが武器になってきます。より深い情報を発信しようと企業ブログもどんどん増えてきました。
ほんとうに何が自分にフィットするのかは受け手が検索して探してくれる時代です。小さな会社こそインターネット・マーケティングというか、インターネットを通したお客さまとの関係づくりが生かせます。

このところ相次いで小さな会社からブランディングの相談があり、取り組んできていますが、つくづくマス・ブランドの時代ではないという実感を持ち始めています。どちらかというと比較的大きな企業で、コーポレート・アイデンティティ(CI)戦略やブランド戦略のコンサルティングを長年やってきた経験からいって、かつてはなかった体験をさせていただいています。
ぜひ自らの会社や事業、あるいは自分自身のブランディングはどうすればいいのかをお考えになることをオススメします。

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