みのもんた氏が『朝ズバ』で、不二家に「廃業してもらいたい」と発言したことを正式に謝罪したそうです。しかし、今から思えば、このTBSの微妙な内部告発報道とみのもんた氏の発言への世間の怒りが、それまで加熱していたマスコミ報道を一気に沈静化させたばかりか、はからずも不二家に同情的な感情を広げたように思います。だから再建のチャンスも生まれたのではないかと感じます。皮肉なことに神風が吹いたのかもしれません。
しかし、有名ブランド『白い恋人』の石屋製菓の場合は、不二家のケースよりも状況が厳しく、最悪の事態まで追い込まれるかもしれません。ブランドで生きてきた会社が一瞬にしてそのブランドの信頼を失ってしまいました。

なぜなら、『白い恋人』はお土産として買われ、また人に差し上げる贈答品です。自家消費ブランドである『不二家』よりもブランドの重みははるかにあります。自分が食べるのなら問題ではなくとも、品質問題を起こしたブランドをお土産として渡すわけにはいきません。
第二に、同業の不二家であれだけ問題になった同じ間違いをやってしまったことは、会社への致命的な不信感をつくってしまいました。なぜ不二家問題を学ばなかったのか、ちょっと信じられません。しかも問題を起こしたのは、一品だけではなかったのですから体質そのものに原因があると世間は受け止めます。

第三には、不二家のケースでは加熱しすぎたマスコミの姿勢への反感がもともとあったと思うのですが、今回はそういった雰囲気はありません。
『白い恋人』は石屋製菓の売り上げの75%を占めるそうです。新しいブランドを立ち上げても、育てるには時間がかかります。それに逆境のなかでは販売店の協力も思うようには得られません。
今回の石屋製菓の教訓は、当たり前のことですが、ブランドはかけがえない企業資産であるということです。しかもブランドの価値を築くには、企業努力と歴史が必要にもかかわらず、それを失うのは一瞬だということです。品質問題だけなら謝罪して改善すればいいのですが、ブランドそのものが傷ついてしまいました。もしブランドに対する意識がもっと高ければ、賞味期限を延長して再出荷という行動はありえなかったはずです。


ブランド戦略あるいはブランド・マネジメントをともすれば広告や販売促進だと考える人もいらしゃるようですがそうではありません。ブランド戦略、またそのマネジメントとは、企業資産であるブランドの価値をどう上げていくか、またどう守っていくのかという重要な経営戦略であり経営課題です。間違うと不二家や石屋製菓のように企業の存続すら揺るがず事態を生み出します。

石屋製菓でも、ほんとうに『白い恋人』のブランド価値がなになのかを常に経営のなかで取り上げ、社内の意識をつくっていれば、今回のような問題は起こるはずがありません。
企業活動のなかでは、マニュアルでは対応できないさまざまな不測の事態が起こってきます。そんなときに正しく判断するためには企業理念に立ち返ることや、お客さまとの『約束』であるブランドに照らし合わせてどう行動すべきかを判断することが重要です。
食の分野で、さまざまなブランドが揺らぐ事件が起こっていますが、食の分野に限らずブランドについてもう一度考えてみるいい機会かもしれません。

バナー←いつもクリックありがとうございます