選挙が終わったので、もう書いてもいいと思うのですが、予想通り石原都知事の勝利となりました。都民でないので傍観していると浅野候補の選挙戦のまずさというか、魅力がだせないままに終わってしまったという印象が拭えません。選挙をマーケティング的な視点から見ると、いくつもの基本的な間違いをやっているというように見えました。
第一に、政策の是非は別として、石原都知事がオリンピックで、ひとびとの夢や連帯感を取り戻すのだというビジョンを示したのに対して、浅野さんは単に石原都知事の批判が目立ち、目玉となるビジョンを示せなかったのではないでしょうか。マーケティングの大御所T・レビット大先生が言っていますね、レブロンは化粧品を売っているのではない、希望を売っているのだと。
第二に、ビジョンや政策の比較ならいいのですが、日本のマーケットでは非難という手法では、一部の人のストレス解消となっても大きな支持をえられません。非難するよりは、都民に働きかけるメッセージが必要でした。この点では宮崎の東国原知事のほうがはるかに人々の気持ちを分かっているように思います。
第三に、そのメッセージですが、差別化できる新しいコンセプトが必要でした。福祉に力をいれるということだけが伝わり、それでは古い社会民主主義と同じじゃないかと映ってしまったのではないかということです。ヨーロッパの社会民主主義は、イギリスの労働党をはじめ大きく変貌したから政権与党になっているわけですが、日本ではその脱皮がまだできていないために、たんなる批判勢力、あるいは”ヒダリ”という印象を広げてしまったように思います。それでは実行力という点での信頼性の獲得は難しいですね。情報公開も売り物としたようですが、それでは新奇性があまりにもありません。
浅野さんを支持した民主党ですが、その民主党そのもののマーケティング政策が見えてきません。おそらくそういったブレーンが弱いのでしょう。どうも小沢さんになってから、民主党は、地方固めに入っているようですが、ターゲットがふらついているように思えます。
総花的に、万人をターゲットとするのはトップブランドがすることであって、それは与党の戦略であるはずです。だから政策が曖昧になるので、ターゲットを絞れば政策にも明快さがでてきて、第二ブランドとしての強みがでてくるはずなのですが、どうも古い自民党の手法から抜け出せていないように感じます。
だから、与党と同じ七色の顔をした政党となり、本当の争点を描けないままに、不自然な対立をつくるしか手がなくなってきているのではないでしょうか。
政治も、右とか左とかいう思想の時代は終わっており、どのようなビジョンを自ら描きだせるかという発想力や構想力、また政策の品質が問われる時代に入ってきているので、もうすこし対立候補者も野党もマーケティング的な視点を強化して、なにをなすべきかを根本から立て直して欲しいというか、選挙するならそれぐらいの責任はあるだろうとつくづく感じた選挙戦でした。

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