失われた10年とか、失われた15年とかいわれます。しかし、日本の企業が戦略不全に陥ってしまってからもう40年ほどになるという神戸大学の三品教授の衝撃的研究は『戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか』でまとめられていますが、昨年出版されたちくま新書の『経営戦略を問いなおす』は読みやすく、頭の中に収めて自ら考えるためにはこちらのほうがオススメです。
失われた40年。確かにそんな気がします。例外はあるものの、ほとんどの日本の企業は、売り上げ高は伸ばしてきたものの利益は落としてきており、利益なき繁忙の道を歩んできたというのは実感のあるところです。団塊の世代を含めて、現役の世代のほとんどの人はそんな時代しか経験していないことになります。
自動車やデジタル家電などの華々しい世界で日本は世界市場を席巻してきたということが日本の自信ともなり、また奢りをも生み出してきたようにも感じますが、実際のところは利益を削りながら激しい競争を繰り返し、規模だけは大きくなったというのが本当のところかもしれません。
本質的には、日本の産業がもっと付加価値の高いビジネスを実現していかなければ豊かさの実感できる社会はやってこないのではないでしょうか。

経営の戦略を考え、決めていくのは経営企画室でもなければ、コンサルタントでもなく、経営者ご本人であり、そんな立場にいる人は少なく、一般の人には無縁の
本のようですが、この本の『経営戦略』というのを自分らの『ビジネスライフ戦略』と読み換えてみると示唆に富むことが多いように感じました。
公務員や大企業に勤める人は自らの『ビジネスライフ戦略』を考えなくともやっていけるでしょうが、それ以外の人のほうが圧倒的に多く、利益なき繁忙の影響をもろに受ける立場にあるので、自らのの『ビジネスライフ戦略』を自衛的にも考えざるをえないところです。
この本の中で、戦略にとって重要なのは『立地』、『構え』、『均整』だということが書かれていますが、実際に、『立地』は重要で、この研究でも同じ業界ならほぼ利益率は同じであり、経営戦略が働いているとはいえないということが語られていますが、個人にとっては、『立地』は、どんな仕事を選ぶか、どんな会社に就職するかということでしょうし、いい会社やいい仕事に就いたから、そのなかの淘汰の波のなかで成功するかどうかは、『構え』とか『均整』できまってくるというということだと思います。
『構え』は仕事にに対する取り組み方や、社内外のネットワークをどう持っているかといった一味の違いを培っていくことであり、『均整』は、身の丈を考える、自分の強いところだけを考えても駄目ということなのでしょう。
いずれにしても、社会的な基盤整備が完成しないままに成熟してしまった日本のなかでは、自らの道は自ら守るしかなく、精神的にも経済的にも自立してやっていくための知恵が求められてきていると思えるだけに、自らの『ビジネスライフ戦略』を考えることがますます大切になってくるものと思えてなりません。

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