2007年01月06日

「武士道とは死ぬことと見つけたり」の誤解と変節

山本常朝の「葉隠れ」の有名な一節ですが、これは武士、つまりは藩に仕える役人というか官僚のありかたを説いているものです。藩主の言うことにはただただ従って命を投げ出せという、滅私奉公の精神だという誤解があるようですが違うようです。
死ぬことも乗り越えて、正しいと思うことを追求しなさいという教えだそうです。藩主に恭順するととが第一としても、藩主が暴走するということもあるわけで、それを正さなければ藩の危機を招きます。そんなときは死を覚悟しても藩主を諌めなさい、主に恭順する立場を超えてなにが正しい道かを追求しなさいということだそうです。
実際、暴走する藩主を諌めるためにいくら訴えても暴走が止まらないときには、藩主を座敷牢に幽閉し反省を求めるということもあったようです。藩主が反省したといって牢を解いたとたんに手討ちになる、あるいは切腹を命じわれるということもありえるわけですが、それでも正しいと思うことを追求するのが官僚としての武士のありかただということです。
明治になって、官僚のありかたがこの武士道から大きく変節します。武士は正しいと思うことを追求する精神の自由を持たないといけないという部分だけが継承され、責任は問わないから自由に発想し提案しろという風になります。まるでベンチャー魂そのものですね。死ぬことをも覚悟してその責任は自ら負うという精神も、藩主による統治の機能もなくなります。
それが官僚の大胆な活動を生み出し、明治以降の日本の近代化を促進することにも繋がったのではないでしょうか。しかし、問題は、責任もとらなくてもよいという制度であり、しかも官僚を統治する機能がないままにやっていると、やがて官僚の暴走が始まります。その最大の失敗が第二次大戦でした。
戦後も不思議なことに、この官僚制度には手がつけられていません。だから今の官僚制度は基本的には明治時代の遺物が残っているということでしょう。それが再び戦後の復興には機能したのですが、官僚主導でやっていけるのは途上国型の単純な社会だけで、社会や経済が発展し成熟してくると、ものごとが複雑化してきます。受験勉強でいかに優秀な人材を集めても、その複雑性には対処できなくなってしまい仕事が粗くなってしまいます。たとえいかに官僚が優秀だとしても、とうてい人々の知恵には勝てません。どんどん「官」の生産性が悪化していきます。
しかも官僚を統治するのは本来は政治ですが機能しておらず、統治するどころか癒着し、もたれあった共同体みたいなものができ、結果として日本の停滞を招いてしまったというのが大筋のところでしょう。まあこういったことは政治学でやっている人に任せますが、大きな流れは間違いないと思います。
どう官僚を統治し、とういうか、もはや生産性が期待できない官僚の権限を必要最低限に抑え、大幅に削減していくことが大きな日本の課題でしょうが、抵抗は大きく、ある意味では革命が必要なのでしょうが、安倍内閣になって再び官僚の力が増してきたことを危惧する声がちらちらと見受けられます。典型的には立花隆さんの「
未熟な安倍内閣が許した危険な官僚暴走の時代」ですが心配です。
いずれにしても、「官から民へ」という小泉さんの主張は基本的には時代の流れとしての必然だと思うし、安倍内閣もそのことは継承しているはずで、官僚統治の強化と官僚制度へ大胆なメスを入れて欲しいですね。

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kinkiboy at 11:40│Comments(2)TrackBack(0)clip!政治 

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この記事へのコメント

1. Posted by アドボカシー・マーケティング   2007年01月07日 01:30
大西さま

「アドボカシー・マーケティング」(グレン・アーバン著、山岡隆志訳、英治出版)の出版に合わせて、理論を幅広く認知してもらうためブログを立ち上げました。「アドボカシー・マーケティング」の「アドボカシー(advocacy)」とは、「支援」「擁護」「代弁」等の意味を持つ。顧客との長期的な信頼関係を築くため、顧客を支援する。自社の利益追求や、短期的なメリットの提供は二の次にして、顧客にとっての最善を徹底的に追求する。顧客の利益や満足度を最大化するためなら、一時的に自社の利益に反することでも行う。自社製品より優れた他社製品があるなら、率直に他社製品の購入を勧める。

意見交換をさせていただければ幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。

2. Posted by 課長007   2007年01月07日 12:40
短絡的に拡大解釈すれば、
もしA級戦犯たちが「天皇を諌めた」結果の戦争だったのであれば「武士」の称号に値する、となりますか

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