ウィニーの作家である元東京大大学院助手金子勇さんが、昨日京都地裁で「著作権法違反ほう助罪」で、罰金150万円(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡されました。それにしても求刑懲役1年と判決の罰金150万円のギャップが大きいですね。
金子さん側は控訴するということですが、誤解してはいけないのは、これはあくまで著作権法にかかわる裁判であるということです。
ウイルスに感染したウィニーからの情報流出を事件が頻発しているので、有罪になって当然だという認識をしている人がいらっしゃるようで驚きます。
それって、スピード違反に問われているドライバーに、あんたは迷惑駐車が多いからスピード違反だといっているようなもので、この裁判と情報流出問題とは直接的には関係がありません。セキュリティの問題は別の場で議論されるべきです。

ウイルス対策なしでは、インターネットは利用しないほうがいい
まずは、セキュリティの問題ですが、問題は3つでしょう。ひとつはウィニーがウィルスに冒されやすい欠陥を持っているということ、2点目は開発者ご本人が「技術的欠陥」と認めるように、一度放流したファイルは管理ができず消せないということ、つまり流出したファイルがネットをひとり歩きし被害が拡大するということです。もちろんウィニーそのもののソフトの欠陥を修正しセキュリティを高めることは必要ですが、開発者ご本人は係争中はできないという主張です。
そしてもっとも重要なのが、
情報流出が起こる元凶はウイルスであり、ウィニーそのものではないということです。ウィルス対策などのセキュリティに無頓着なまま、インターネットの荒野というか戦場に、まる裸の無防備な状態で回線をつないでいるというユーザーに問題があるということです。こういったセキュリティに対する認識を広め、意識を高めていかないと、情報流出問題はたとえウィニーがなくなってもなくなりません。
ファイル交換ソフトに限ったとしても、ファイル交換ソフトはウィニー以外にもあります。実際、ウィルスに汚染されたウィニーと違う別のファイル交換ソフトでも情報流出事件は起こっていますが、ウィニーがウイルスに汚染されやすいまま放置されているということと、日本ではウィニーほどは流通しているファイル交換ソフトがないので、ウィニーでの被害が集中しているということでしょう。

それにたとえファイル交換ソフトでなくとも、広く使われているソフト、たとえばOutlookExpressのようなメールソフトを狙ったウィルスはつぎつぎにあらわれてきています。ウィルスに感染されるとウィニーを使っていなくとも、PC内部のファイルがどんどんメールに添付され流出していきます。きっと感染したことすらご本人が気づいなかにままに情報流出が起こっているということもありえます。ファイルがばらばらに流出したりメールアドレスも書き換えられてしまうので、ウィニーと比べると流出元が特定しづらいというだけのことです。
本来は、そういったセキュリティに対する意識を広めていくのは、マスコミの大きな役割でしょうが、「ウィニーで情報流出」といったタイトルのように誤解を生むような記事が多いですね。記者もわかっていないのかもしれません。


「著作権法違反ほう助」って世界初の判決じゃないかな
さて著作権の問題ですが微妙ですね。もちろんファイル交換ソフトを使って著作権のあるものを勝手に流した人は当然「著作権法違反」ですが、ソフトがそれを「ほう助」したとして有罪判決となったのは多分今回が世界で初めてです。すくなくともアメリカでは確か民事事件として扱われ、ファイル交換ソフトそのものへの損害賠償は退けられたはずです。きっとそのあたりは詳しい人が書いてくれるものと期待しています。
だから、たとえウィニーがなくなっても海外で合法とされたファイル交換ソフトがとって代わるだけだということです。
もしウィニー開発者が、「これでどんな映画も音楽もソフトも自由に交換できるよ」という宣伝をしてウィニーの普及を進めていればクロでしょうが、開発者の金子さんがそのあたりはどうされてきたのかわかりません。
しかし、「ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていた状況の下、ソフトを公開して不特定多数が入手できるように提供した行為はほう助犯を構成する」(読売新聞記事)という司法判断でしたが、この部分だけだと、こうは置き換えられないでしょうか。
「CDRが著作権侵害をしても安全なメディアとして取りざたされ、広く利用されていた状況の下、CDRを販売して不特定多数が入手できるように提供した行為はほう助犯を構成する」・・・・これって成り立つかな?

ウィニーやPC同士でファイル交換するソフトに問題があるとすれば、大容量のデータのやりとりで、インターネット回線をいわば占拠していることになるので、そっちのほうが深刻な問題かもしれません。

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