舞洲

テーマパークにそびえるお伽の国の館なのか、メルヘン調のラブホテルなのかと思わせる得体のしれない建物ですが、ご存知ですか。ユニバーサル・スタジオが近いので、間違って、この建物の前に車を停めて開門を待つ人もいるそうです。それぐらい目だっています。
今日探検隊企画で予約を入れていてくれたので見学ツアーに参加してきたのですが、これは大阪市環境事業局の舞洲(まいしま)工場、つまりごみ処理工場です。デザインは、オーストリアのウィーンに生まれた画家、「建物と自然の共生」という高い理念をもったフンデルトヴァッサー。確かに、建築デザインとしてみると素晴らしい作品です。自然に同じものはない、まっすぐなものはないという考えから、窓のカタチも、ドイツで焼いたタイルの柱もみんな違う表情を持っていて、また目を楽しませてくれます。また床と壁、壁と天井の境も、手すりなども曲線を多用してありやさしいメルヘンを感じます。さらに建物の周囲、また建物にもふんだんに緑が植えられており、ごみ処理工場をまったく感じさせない建物です。
壁窓



実は、この舞洲(まいしま)は埋立地で、2008年のオリンピック大阪招致のメインの舞台になるはずだったところであり、その招致合戦を有利にするための、舞洲の入り口に建てるごみ処理工場を「自然との共生」をテーマにしたシンボリックなデザインを採用するという思い切った英断があったのだと思います。
建築デザインとしては優れているとしても、609億円の建築費、6000万円とも9000万円ともいわれるデザイン料を支払って建てたこのごみ処理工場が、財政が逼迫して、破綻寸前にまっしぐらに向かっていった大阪市の行政の馬鹿さ加減のシンボルとして、批判の声も多いのも事実です。

廊下みどり

しかし、それをいうなら、そもそも財政が傾くことがわかりきっていた大阪市がオリンピック招致に浮かれたことのほうが問われるべきかと思います。目立つからよけいに批判の対象となるのですが、まだこの工場は価値があります。OTCや大阪ドームなど、いいかげんな計画と経営で破綻した第三セクター、さらに、ほとんど利用もなく、さらにいざというときに大型船舶が通れるように可動式にしながら、実際やってみると可動しなかったという欠陥が発覚した舞洲と夢洲を結ぶ夢舞大橋のほうが馬鹿げているように感じます。

センターごみ

なぜフンデルトヴァッサー?

ごみ処理工場だから、そっけないデザインでいいとは思いません。むしろごみ処理工場だから、自然との共生をテーマとした建物として、訪れた人々の環境に対する意識を高めようとという発想もいいと思います。大阪市の小学生は4年生になるとこの舞洲工場を見学することになっているそうですが、訪れたときにきっと、環境問題や省資源やリサイクルにも関心や興味を持ってくれそうです。
文化は合理性だけでは説明できません。岡本太郎の狂気が生んだともいえる千里の万博公園の太陽の塔はいまなお象徴として力強く聳えてたっています。
それより問いたいのは、なぜフンデルトヴァッサーを採用したかです。作品としては、この舞洲工場はいいとしても、(ちなみにすぐ近くにある汚水処理場は完全に失敗作としか思えません)、名前が通っており実績があるからということで採用したことのほうが安易すぎるというか、役人発想そのものであったように思います。確かに建築デザインとしては優れていたとしても、海外にある建物となにが違うのかよくわからず、フンデルトヴァッサーの作品としての独自性はあたっとしても、大阪市にある建築物としての独自性があるとはいえません。
口では大阪にソフト産業を育てないといけないといいながら、実際には大阪のデザイナーではなく、東京や海外デザイナーを採用する。そのほうが通りやすく、言い訳ができるということでしょう。そういったことが大阪を駄目にしてきたように感じます。だから、どんどん大阪から人材が流出していくのです。
それこそ、思い切ったデザインなら、大阪から生まれた世界的芸術家、吉本喜劇出身のジミー大西にやってもらったらよかったんじゃないでしょうか。

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