ソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収するという衝撃的なニュースに、はやくも多くのブログが反応し沸いています。まず第一に、買収が成立すれば、日本企業では過去最大の買収となるということで、その資金調達方法も含め注目されるということと、携帯電話市場も、そろそろ新たな成長の原動力が求められてきていただけに、ソフトバンクのボーダフォン買収が携帯市場をどう変化させるのかに関心はいやがおうでも高まってきます。
ソフトバンクの4日発信のニュースリリースでは、いまだに交渉中であり具体的に決まったものはないとしていますが、今日の日経は、ソフトバンクでボーダフォンの資産を担保として資金調達する(LBO)とし、さらに米国YAHOOと連携した世界戦略だというところまで踏み込んだ記事が書かれていました。どうでしょうね。普通に考えたらそうなるということでしょうか。

携帯電話は、電話としては家族と会社との連絡にしか使わず、メールも家族とのやりとりばかり、一番重要なのが新幹線のエキスプレス予約と弊社で開発した営業支援ツールのアクションコックピットにアクセスしてスケジュール確認すること、あとは乗り換え案内とカメラぐらいしか使わないというユーザーなのでどうなろうがいいのですが、マーケティングの世界の住人としては、この買収劇をきっかけに再度、携帯市場について感じることを書いておきたいと思います。

携帯電話の市場の流れですが、大きな変化は3つだと思っています。第一は、そろそろ新たな成長の切り札が必要になってきたということで、おサイフケータイ、携帯SUICAなど携帯を決済の道具にしようというビジネスモデルが生まれてきました。通信から決済手段への拡張です。日本の携帯市場を発展させてきたのは、ハードは安くして、それを通信費に上乗せするということで、どんどん機種変更を促進してきたということですが、それも高校生でも1万円の通信費を支払うのも珍しくないという消費文化に支えられてきました。
ちなみに、 au が発表した2005年のARPU(ユーザーあたりの月間収入)が7000円で、音声通話料については継続して減少しているけれど、データ通信料はいまだに伸びているといいます。携帯電話の成長は、携帯電話キャリア同士の競争というよりは、他の支出先を食って成長を続けてきた、つまりカテゴリー間の競争で勝ちつづけてきたということですが、いかにも通信費が高く、それが青天井のままとは考え難いので、そろそろ別の利益の源泉が必要になってきているということでしょう。

第二の変化としては、電話番号を変えずにキャリアを変えることができるというナンバーポータビリティがスタートし、やっとキャリア間の競争がより熾烈になるということです。それで価格競争が始まってくれればいいのですが、各社とも家族割引などの囲い込みの戦略をとってきたので、すぐには決定打とはならないような気がしていましたが、プレイヤーがボーダフォンからソフトバンクに移ると、ちょっと様相が変わってくるかも知れません。

それよりは、もっと大きなインパクトがあるのが、第三の流れ、NTTドコモ、au、ボーダフォンの3社体制から、新たなプレイヤーの参加による大競争時代が始まるということではないでしょうか。
昨年の11月にソフトバンクBB、イーモバイル、アイピーモバイルの3社が、総務省の認可を受け、携帯電話事業に参入することが決まりました。さらに、相次ぐように今年1月には、この新規参入組3社ととボーダフォンが、携帯電話回線を他社に貸し出すことを発表しました。それを借り受けて携帯市場に参入するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)、仮想移動体サービス事業者も加わった大競争時代がはじまろうとしていました。電話番号を変更せずにキャリアを変更できるナンバーポータビリティよるキャリア間の競争に加えて、新たなプレイヤーの参入による競争がはじまることとなり「携帯市場がさらに加熱しそうだ」と書きました。とくに、おそらく自社で携帯を販売するチャネルを持たないイーモバイルにとっては、この回線貸しによって、どれだけ強いブランドと販売力を持つ提携先と組むかが成否の鍵となりそうだという感じました。
今はハードメーカーでしかないSONYやパナソニック、またシャープがMVNOとして登場してもおかしくないし、もっと違う販売チャネルをもった予想外の企業の参加だって考えられます。注目しているのはこの第三の流れです。
その面子の一社がソフトバンクでした。独自の通信インフラを構築する計画以外に、一挙に携帯ビジネスを立ち上げようということでしょうが、このMVNOという事業形態で、ボーダフォンから回線を借り受ける交渉を進めていたようです。そんな報道に、ソフトバンクの孫社長も、2月10日の決算発表会で「常にあらゆる選択肢を検討しており、可能性は否定しない」としていたようですが、選択肢の中には買収も既にあったのかもしれません。
ソフトバンクが、動画配信やオークションなどのヤフーのサービス利用やネットショッピングで差別化し付加価値をつける程度なら、この回線借り受けで十分と思えるのですが、買収に回ったということは、回線の借り受けでは価格設定で差別化していく自由度が低いと見たか、料金システムを含めネットとの融合を図ろうという目論見があるのでしょう。 yahooへのアクセスはタダなんてこともあり得るわけで、そうなると、PCとの境界は限りなくなくなり、携帯コンテンツ配信などで成長した企業には厳しいことになりそうです。NTTドコモも auもインターネットにそう強い訳ではないから、ネットを絡めて差別化してくることが考えられます。後はyahooBBと携帯の料金のバンドリングで差別化してくることもありえます。

ボーダフォンよりはきっと、ソフトバンクのほうがマーケティングは強そうですが、問題はソフトバンクのボーダフォン買収で、MVNOとして他のプレイヤーの参加がどうなってくるかということです。携帯もこれだけ普及してくると、おサイフケータイなどのサービスの拡張に限らず、ユーザーのニーズも多様化してくるのが当然で、新規参入のプレイヤーが、それぞれの強みを生かした特徴を打ち出して、もっと違う多様な機器やサービスが生まれてくることが期待できますから、関心はそちらに向かいます。
もうボーダフォンと、いまだに姿を見せていない新たなプレイヤーとの回線の貸し借りの契約が確定したのかどうかは知るところではないですが、どうなんでしょうね。マーケティングの弱いボーダフォンと新たなプレイヤーとしてのMVNOの組み合わせは非常に面白く、もっともユーザーメリットが生まれてくる可能性が高いと思っていたのですが、ソフトバンクがどうでるかで変わってきます。ソフトバンクが思い切った価格競争をしかけたら、MVNOへの参入のはハードルが一挙に高くなってしまいそうです。
MVNOは、海外でも英国のvirgin mobileが唯一の成功例といわれており、まだ未知数というのが正直なところです。virgin mobileは、そのブランド力と通話料金の安さ、またいち早くMP3プレイヤー搭載の機種投入などのマーケティングで伸びたということですが、いずれにしても、プレイヤーが増えると競争は激化し価格競争を呼び込むことは避けがたく、また機器とサービスの多様化が起こってくるので、利用者にとってはありがたいことだとしても、ソフトバンクが価格競争を加速すると参加するプレイヤーにととっては大変なハードルになってくるのではないでしょうか。

3社のガチンコ勝負時代に突入し他の企業がはじき飛ばされるのか、それともソフトバンクが同盟戦略を取り、多くの企業も参入しながら、しのぎを削る競争がはじまるのか、いずれにしてもキャスティングボードを握るのはソフトバンクであることは間違いありません。買収劇と今後の携帯市場の行方には目が離せなくなりました。

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参考:
キャズムを超えろ  SoftbankがVodafone(j)買収か!? ケータイコンテンツ屋の悲劇はここから始まる...
近江商人 JINBLOG  ソフトバンクのVodafone買収 3つのインパクト
R30::マーケティング社会時評 SBが引き金を引く、携帯電話業界の「大殺界」
ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめ