堀江貴文さんは、時代の寵児というにふさわしい経営者です。希望が見えてこない時代に、株式の時価総額という切り口で風穴をあけ、それに共感した多くの若い人たちがファンとなり、自らも株式を買うことで、堀江さんとの一体感、連帯感に酔いながらも、熱狂的に支持し、またついていったのではないでしょうか。そんな夢の世界が終わろうとしています。
あのものものしい東京地検特捜部の家宅捜査は、マスコミへのデモンストレーションだという批判もありますが、なんらかの確証がなければ動けるものではないでしょう。手みやげなしに引き下がるという規模の動きではありません。

堀江さんのような新しい経営者が活躍できる社会は素晴らしいのですが、気になっていたのは、堀江さんのいう企業価値は時価発行総額でしかなかったことです。もちろん、それも重要な企業価値ではあるでしょうが、すべて利回りで考えるということは短期的な経営としてはありえても、ほんとうにそうなのかという疑問がをもった人は多いと思います。
金型を職人芸の手作業で世界をリードする技術を持つ中小零細企業は、株式上場もしていないし、堀江流でいけば価値のない会社かもしれません。しかし、そういった企業も日本の産業、経済を支えているということだけは忘れてはいけません。汗水流して働き、現場の知恵を磨いていくということで、日本の産業が支えられているという現実を忘れてはならないのです。

思い起こせば、プロ野球の経営者への批判として、シドニー・フィンケルシュタインの『名経営者はなぜ失敗するのか?』をご紹介し、「失敗するトップの7つの習慣」を取り上げました。その後、堀江社長はどんどん変わっていったように感じます。まわりの意見が見えなくなってきていると感じたのです。だから、「ちょっと違うよ。堀江さん、それはいいがかりだ」で、批判に対して感情的になってしまい、内容を吟味せず、日経の大機小機をゴシップ記事だと切り捨てた堀江社長に、再び『名経営者はなぜ失敗するのか?』を紹介して、トラックバックさせていただきました。

さらに、ライブドアの経営者をやめ、政治に身を捧げるというならいざしらず、経営者の立場を捨てずに衆議院選挙に出たというのは国民を馬鹿にしているし、経営を甘く見ると危ないということを感じ、「みっともないよ。ホリエモン」ということで「残念ながら時代に新しい風を吹かせる若い息吹のひとつがこれで消えてしまいそうです」と批判を行いました。
しかも、ライブドアマーケティングを使ったセシールの買収( 「六本木ヒルズの一角が崩れていくのか? 」など、時価総額を膨らませることしか考えていないような、戦略の見えない、危うい買収も目立ってきました。
そういった流れを感じると、やはり「失敗への道を」まっしぐらにすすんできたのかなと感じるのです。証券取締法違反などの容疑については、捜査の進展を待つまでなんともいえませんが、信用の失墜は避けがたく、期待値でなりたっていた時価総額経営の根本が崩れます。堀江さんはこのピンチをどう切り抜けていくのでしょうか。

今日はヒューザーの小嶋社長の証人喚問があります。また明日は、幼女連続誘拐殺人事件の宮崎被告の判決もあります。なにか時代の膿みたいなものが噴出してきたようにも感じますが、きっと時代の変化の中で、まだ対処しきれていない宿題がたくさんあるということでしょうか。

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