長いスパンで時代の変化を眺めるとまた面白い発見があります。ひろの気まぐれ日記 さんの「育ちが違う」はこうはじまります。

今日、話をしていて、ふと気がついたのですが、僕のような30歳くらいの日本人の生活の風景って、子供の頃からほとんど、変わってないんですよね。


そういえば、一昨日、クリスマスプレゼントを買うために輸入玩具の店にいったのですが、昔子供たちのために買って今も残っているおもちゃがいくつもありました。その他の商品も20年とか30年前とほとんど変わっていません。ミッキー社の木のレールの列車で子供たちは遊んでいましたし、オモチャではないですが「トリップトラップ」という椅子を幼児の時から使っていました。
若い頃に、清水の舞台から飛び降りる覚悟で買ったような椅子とかインテリア雑貨は、一時あまり見かけなくなりましたが、最近では再び人気があるようでよく見かけるようになりました。音楽もそうですね。もう何十年も、とんでもないコードがでてきたとか、理解を超える新しいリズムが登場したとは感じません。 CDではなく、レコードで持っているアルバムで、今でも若い人たちに人気のあるアーティストのものもたくさんありますね。

生活の風景、あるいは文化といっても良いと思うのですが、画期的な変化というのは、ひろさんがおっしゃるようにPCと携帯が現れたことぐらいでしょうか、付け加えると、あとはコンビニができたことぐらいかもしれません。
この視点って、マーケティングを考える上で、とても大切だと思っています。作り手や売り手からすると、「画期的」であっても、それで生活がどう変わるの?というお客さまの素朴な疑問に答えられないということが案外多いのですね。ただ日本は、新しい技術、新しいモノが好きという人が多いので、供給側もずいぶん助かっているとは思いますが。
生活のなかのニュアンスは変化し、空気は変わっても、風景はさほど変わらなくなってしまったのです。確かに、ビデオテープがHDDレコーダーに置き換えられたとはいっても、TV放送を録画して再生するということにはなんら変化がありません。テレビ番組を見るという風景は同じです。イノベーションと言うよりは、技術の世代が変わり、相対的に便利になったというもがほとんです。案外本当のイノベーションはほとんど起こっていなのかもしれません。

また、ひろさんはこう書いていらっしゃいます。

翻って、50歳以上の人になると、話が結構かわります。ラジオがテレビになり、自転車からオートバイ、自動車へ、道路は舗装されていく。。他にもいろいろあったでしょう。
#同じことが、中国やインドで起こっているんでしょうね。

まさにその通りです。 ALWAYS 3丁目の夕日 の世界で子供時代を過ごした50代、60代は、大人になるまでは、生活の風景がどんどん変化するという体験をしてきました。中国やインドもそうでしょう。
中国ビジネスで成功している友人の言葉を思い出しました。「日本が体験してきたことを中国が追いかけているから、次が読める」というのです。確かに上海の街を歩いていると、きっと次はこういうビジネスが流行するだろうというものがいくつも浮かんできます。

しかし視点を生活からビジネスに移すと環境は大きく変化しましたし、今なお変化しつづけているように感じます。事業部などの部門のかたとお付き合いしていることもあるからでしょうか、転勤というと、「海外」に赴任されるかたがほんとうに増えました。海外赴任があたりまえのようになってきたというのも、それだけ経済がグローバル化してきたということでしょう。主要な部品は国内で生産し、中国で組み立て、全世界で売るということがあたりまえになりました。いや生産現場は、もっと拡散し、また逆に日本に戻ってきたものもあります。

情報技術が進展するにつれ、ビジネスのスタイル、ビジネスのなかの文化も変わりました。できることも大きく変化しています。ほんの10数年前なら、大型コンピュータでしかできなかったことも、今やPCで軽く処理できてしまいます。
故ドラッカーの講演で「金融経済と実体経済が分離した」という指摘を聞いた当時は理屈では、そうなんだと理解しましたが、日本でもそれがあたりまえのように実感できる時代になりました。株式上場の壁が低くなり、楽天やライブドアに象徴されるように、将来への期待値で高い株価がつき、それをテコに、M&Aによってどん欲に、実体経済では自分たちより大きな企業を飲み込むという世界が生まれてきました。

変化の速度もすさまじいですね。デジタル家電もあっというまに普及してきました。10年経つかたたない間に、もういくつかの分野は成熟に向かいはじめています。だから、ついこの前までは、デジタル家電が日本の景気を引き上げるといわれてきましたが、デジタル家電の赤字で経営危機に陥っている会社が少なくありません。変化の速度がとんでもなく速くなりました。

きっと育ちが違うかどうかということもあるでしょうが、10年、20年という長い歴史の尺度で見る、数年の短い時間の尺度で見る、生活やビジネスという違った種類のものさしを使い分けながら時代を見ることができるのかどうかのほうが大きいのかも知れません。

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