ALWAYS 3丁目の夕日」が評判で、カトラー:Katolerのマーケティング言論さんはじめ、多くのブログで取り上げられています。きっと育った時代背景によって、この映画の見え方は違ってくるかもしれません。
カトラーさんは、映画のシーンをシンクロする上野セントラルで観ることをオススメでしたが、それとは恐らく正反対、この映画のテーマとも、雰囲気ともほど遠い六本木ヒルズで観てきました。理由はオンライン予約ができたからですが、東京タワーを見晴らすことでは映画の夕日3丁目とは同じとはいえ、映画館を出ると、まるでタイムマシーンでスリップしてきたような錯覚に陥らせてくれます。
母親に捨てられ、吉岡秀隆が演じる茶川竜之介に面倒を見て貰う淳之介も、鈴木オートの子供である一平も、昭和33年で4年生ですから団塊の世代です。団塊の世代にとっては、まさに自分たちの子供の頃が描かれており、懐かしい風景や空気でいっぱいの映画だと思います。
原作者の西岸良平氏は昭和22年生まれですからやはり同じ年。また山崎貴監督の「さまざまな時代の人にとって共通体験になりそうなエピソードも大切に」しつつ、「当時を知っている人たちががっかりするようなことはしたくなかった」という意図もクリアして成功している作品ではないでしょうか。
しかも、描かれた東京の下町と私が育った関西の商店街も、微妙な違いはあるとしても、ほとんど似たような光景であったのには驚きました。近所には、堀北真希が演じた東北から集団就職で上京してきた星野六子のような住み込みのお兄さんやお姉さんがおり、よく遊んでくれました。それも同じです。それに、この映画で力道山のテレビを見るために近所の人たちが集まってくるシーンがありましたが、まるでそんな風でした。
近所との関わり方が今とはまったく違っていました。子供は学年にこだわらず群れていて、また近所の大人も相手にしてくれました。大工のオジサンの仕事場に行って鉋をひく姿を見ていると、板の切れ端をくれたり、氷屋のオジサンは銭湯で一緒になると立派な彫り物を披露してくれました。地域社会というものが実感としてありました。子供をめぐる凄惨な事件が続いていますが、当時は子供は地域の人びとによって守られ、またしつけられ、育てられていたように思います。
私が育った関西の商店街とこの映画の夕日3丁目との違いがあるとすれば、夕日3丁目は、どんどん完成していく東京タワーを望み、時代がいい方向に変化していくエネルギーのようなもので溢れていますが、残念ながら、私が育った街は、遊郭で栄えたところであり、この昭和33年の二年前に売春防止法が成立してからというものはどんどん寂れていって本当の田舎町になって行ったということぐらいでしょうか。それでも、そういった違いはあったにせよ、洗濯機、冷蔵庫、テレビの3種の神器が普及してきて、暮らしが大きく変わっていった様子は同じです。両親が満州から引き揚げてきて、小さい頃はどん底の生活だったのですが、この頃になると暮らし向きも少しはましにはなっていたように思います。
懐かしい光景に浸りながら、噂どおりに涙腺を緩ませられたのは不覚でしたが、繰り返し見ても値打ちのある映画だと思いました。

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